脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

正常から認知症への移り変わり「おしゃれだった人が・・・」

2008年06月10日 | 正常から認知症への移り変わり

洋服を上手に着ることができなくなって、誰かに着せてもらうようになったら
「とうとう、洋服も着られなくなってしまいました」といい、それは「そこまでボケてしまった」と同じ意味に使われます。
近所のいがいが根。荒れた海です。 

今日まで元気でおしゃれをしては外出を楽しんでいた人や、そこまででなくても、朝になったら寝巻きを着替えて季節や目的にあった洋服を着ることができていた人が、突然、自分で洋服を着ることができなくなることはありません。
もしあれば、それは重篤な精神症状か(それならば、若いときから繰り返しています)脳の器質障害がおきたことを意味します。
着衣を司る場所は右脳にありますから、そこに梗塞や出血など病変が起きたら、突然洋服が着られなくなります。
そのときはすぐ脳外科を受診することです。

ボケが進んでいった最終段階は皆さん承知していますから、この着衣について、老化が加速されたらつまりボケ始めたらどんなことが起きてくるのかお話しましょう。小ボケの段階。

「おしゃれだった人が」か「きちんとしていた人が」が前提条件です。

①おしゃれをしなくなった。
②お化粧をしなくなった。
③あんなにセンスがよかったのに、考えられない色使いをしている。
④ブローチをウエストにつけている。
⑤襟ぐりや袖口から下着が見えている。(のに気にも留めない)

⑥いつ見ても髭をそり残していたり、そり傷が目立つ。
⑦ネクタイやシャツに食べこぼしが目立つ。
⑧ネクタイの締め方がだらしない。
⑨ズボンのチャックがきちんとあがっていない。

小ボケは社会活動での不都合が起きる段階ですから、家庭の中ではその状態が起きていても問題にされないことがほとんどです。

中ボケの段階。

中ボケの始まりは、小ボケの程度がちょっとひどいくらいのものですから、
「なんとなくだらしないんです」とか
「ちょっと、ズボンをあげたり、シャツを突っ込んだりしてあげないとグズグズなんです」とか、よくいわれます。
これって、幼児が一人で洋服を着たときと同じですよね。
もちろん、ボケの進行とともにだんだん小ボケとは違うことがおきてきます。

①セーターの上からシャツを着るというふうに着る順番を間違える。

②シャツの前後が逆になったり、裏表になったりする。
肩パットのある服を裏返しに来ても平気です。
この頃、シャツや上着のボタンの掛け間違いやかけ忘れが目立ちます。

③目的にあった服装ができない。
パジャマを着たまま、出かけたりします。
中ボケ下限になると、葬式に礼服を着ず普段着で出かけるようなことも起こります。

④服の着替えを嫌がる。
風呂上りに、汚れた下着の上に重ねて新しい下着をはいたりもします。

⑤重ね着が目立つ。
襟があろうがなかろうが、順不同に重ねます。
パンツ、下穿き2枚、ズボン、スカートとはいて苦しがったりもします。
季節に関係なく重ね始めます。
中ボケの下限で、夏にセーターを着て「もしかしてボケ?」と言われはじめます。

⑥暑くても脱がない。寒くても着ない。
幼稚園児が気温に応じて着脱ができないのと、ちょうど同じです。
この段階で、夏にしっかり布団をかけて寝て脱水状態になったりします。

大ボケの段階。

①汚れた下着をそのままに着る。
高齢者の失禁はよくあることですが、正常であれば適切な処置ができるのです。汚れたまま着ているとしたら、大ボケに入った指標です。

②洋服を着るのにやたら時間がかかる。
着衣失行の一歩手前のように、セーターを頭にかぶるだけでも試行錯誤。最終的には着られても時間がかかりすぎるので、結局は家人が着せるようになっていきます。

おしゃれだった人が、小ボケに入ったらすぐにわかりますが、もともと身なりに無頓着のまま来た人は、当然わかりにくいことになります。
それと、洋服はすべて妻任せという場合もわかりにくいですね。

いくら症状を書き連ねても、ボケの早期を見つけようとすればするほど、脳機能検査が不可欠ということがよくわかります。