脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

精神科受診を勧めたら…

2019年08月26日 | 正常から認知症への移り変わり

今日は保健師さん向けの勉強ブログです。(写真は我が家で咲いたハスの花)
相談の電話が入りました。

「94歳の女性。脳機能検査の結果は小ボケ。生活実態の自己申告も小ボケ。生活歴はちょうど3年前にけがをしてそのまま入院ということでちょっと持ちすぎかと思いますが」
脳機能検査は、二段階方式で想定される結果から外れるところはありませんでした。
つまり脳の後半領域の働き方を調べるMMSの結果は、計算マイナス1、想起マイナス3(ただしヒントで即正答になるレベル)で27/30。MMSは24点以上が正常とされますから、十分に合格しているわけですね。
94歳の方が書いたA4版の検査結果です。素晴らしいですね!

一方で、二段階方式の二段階たるゆえんの前頭葉テスト結果ですが、これがまた見事に不合格!上図の立方体透視図は不合格ですよ。
もちろん、かなひろいテスト結果は、二分かけて正答数1、見落とし数5、内容把握は不可と不合格でした。
MMSが合格圏の方々こそ、前頭葉テストが必要であると承知している相談者さえ、MMSと前頭葉テストのギャップに「びっくりしてしまいました」と述懐していました。
このブログの初期のころの記事を貼っておきます。「前頭葉機能検査なくして、認知症の早期発見は不可能」とこのブログで10年以上も言い続けてきたのですね。右欄カテゴリーの「二段階方式って」にあります。

保健師さん便りー私の手技に問題が・・・ (2006年)

脳機能テスト、その後 (2008年)

前頭葉機能を計らなければ、認知症の早期発見はできません。今回のように、MMSだけだと合格してしまうからです。
二段階方式では脳機能がこのレベルになった状態(前頭葉機能不合格、脳の後半領域の認知機能は合格)を小ボケといいます。
家庭生活は可能、社会生活には問題が出てくる状態ですし、何より大切なのは回復可能である点です。早ければ早いほど回復は容易になります。

繰り返しますが、前頭葉機能を計らなければ、認知症の早期発見はできません。今回のように、MMSだけだと合格してしまうからです。

二段階方式では脳機能がこのレベルになった状態(前頭葉機能不合格、脳の後半領域の認知機能は合格)を小ボケといいます。家庭生活は可能、社会生活には問題が出てくる状態ですし、何より大切なのは回復可能である点です。早ければ早いほど回復は容易になります。

さて、脳機能は小ボケレベルでした。続けて生活実態をチェックします。小ボケの人たちは、脳の機能低下を自覚しているものですが、今回も見事に小ボケの自覚がありました。

次のステップとして、脳機能の老化が加速されるきっかけとその後のナイナイ尽くしの生活の継続の確認が必要になってきます。3年前の腕のけががきっかけとなって入院生活を余儀なくされた(だから脳の老化が加速された)という納得の生活歴もありました。

二段階方式では、脳機能検査の結果と、生活実態と、老化を加速させる生活歴が一致すれば、アルツハイマー型認知症と判定します。そして中ボケまでなら生活指導の対象となります。大ボケは介護が必要なレベルで、世の中ではここまで来て認知症といっています。
ところが今回のケースの主訴は「ものとられ妄想」それにプラスして「毒を盛られている。殺されてしまう」というものでした。「ものとられ妄想」は中ボケの下限に入ってからの症状ですし「殺される」という訴えは、認知症ではまずないといえます。脳機能検査の結果と生活実態が一致しない部分があるのです。
つまりこのケースは、脳機能の老化が加速されたという視点から見るとアルツハイマー型認知症のごく初期であり、それにプラスして強い精神症状が出てしまっていると考えられます。前頭葉の抑制機能が低下して、もともとあった性格傾向が強く出てしまっているのです。検査結果を詳細に検討すると、神経質な方特有の反応もありました。
スムーズに脳機能検査の結果と、生活実態と、老化を加速させる生活歴が一致しないときには、専門医受診というのが私たちのやり方です。相談者の方も精神科受診を勧め、付き添ったそうです。

「アルツハイマー型認知症」ということから言えば小ボケ、前頭葉機能のみ不合格、MMSは立派に合格。まだまだつぼみの段階です。
精神科医の診断は
1.CTで委縮がみられる→94歳ですよ!
2.そのためと明言なさったかどうかは不明ですが「受診が遅すぎた」→認知症はつぼみ段階でごく初期なのですが。上にあげた94歳ご本人のテスト結果を見てください!
3.一応「お薬を出しましょう」→妄想を抑える向精神薬なのか、認知症の薬(ただし効きませんが)なのか不明。

この国の将来は大丈夫でしょうか!
最後にもう一つ、この記事の後半にドクターへの期待を書いてありますのでお目通しください。

(続)高齢者の危険運転

 

 

 


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