脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

脳機能テスト、その後

2008年03月12日 | 二段階方式って?

このブログを読んでくださっている皆さんは、何人くらいの方に脳機能テストを実施しましたか?
「こんなテストをして怒られないかしら」「とにかく最後までやらなくちゃあ」と、保健婦さんのほうがドキドキしてるというのが、テスト初心者の常です。
(写真は、最近の我が家での鉢物です。カトレアは初めて咲かせることができました)

最近の相談例の話をします。
MMSが実質27点クラス(何しろ想起が2点あるのですから)でした。

前頭葉テストは
  立方体模写は不可
  動物名想起は5個
もちろん、この二つのテスト結果から、前頭葉機能に問題があることは想像できますが、肝心の「かなひろいテスト」は未実施でした。

二段階方式は「かなひろいテスト」の成績とMMSの成績とで、脳機能の状態を正常・小ボケ・中ボケ・大ボケと決めるのです。

ボケの早期発見ができないのは、世間に通用している検査法に不備があるという一面があるのですよ。
ほとんどの検査法(知能テスト・認知テスト)は脳の後半領域の能力を測ります。
後半領域の機能が合格していても、前頭葉機能が不合格の人たちこそ、ボケはじめ。
本人の自覚があって改善しやすい小ボケの方たちなのです。
だからこそ、MMSが合格圏である24点以上あれば、前頭葉機能テストが必須になるというわけです。
「かなひろいテスト」は難しいので、MMSが不合格圏になると、どうせできなくなりますから、念のために実施しておくというスタンスで十分です。

「時間も無かったので・・・」と保健師さんは言われましたが
「ちょっと難しい人だったんでしょ?こんな子供だましみたいなことをやったら怒り始めるかもって思ったんじゃない?」
「ほんとのことをいうと、あなたもやりたくなかったのよね」
と、ここまで読んで「ウワー、怖い。そんなに追求されるんだったら質問なんかできな~い」と思わないでいいですよ。だって「やさしく」言いましたもの。

そうそう、質問された保健師さんは
「近々、もう一度訪問してかなひろいテストをやってきます♪」
「また、質問してもいいですか♪」最後にこう言って電話を切られました。
 
テストは、生活改善指導のためにするのです。
結果から何点だったとランク付けするためではありません。
脳機能レベルが正確にわからない場合と、自分のテスト結果に自信がもてない場合には、生活実態にも生活歴に踏み込めません。
靴のうえから痒いところを掻くようなことで、表面的な会話に終始してしまいます。
テスターがひるんだ時に、小ボケの中でも防衛的なタイプの場合には「困ることは何もない」と言い張ったり、以下のように強調したりします。
それが正しいとしたら「何故前頭葉機能が不合格なの?もともと前頭葉機能が少し足りない人生を送ってきたということなの?」と強く強く疑問に思わなくてはいけません!そして実像を追求すべきです。
  「料理は得意」→献立は単調で、鍋を焦がすはず
  「新聞は隅から隅まで読む」→ニュースの説明はきっと曖昧
  「日記を書いている」→月並みなことしか書けなくなってるはず
  「趣味も続けている」→本当なら、何故前頭葉機能が落ちたの
  「畑もしている」→いわれてやるときは前頭葉の出番はない
  「友達もいる」→楽しむ頻度は?内容は?
  「旅行にも行く」→直近はいつどこへ?次回はいつどこへ?

 
意地悪をしてるのではありません。
この脳機能ならこの生活実態ときれいに関係付けられるということを確信してください。
(マニュアルB第2章69p参照)
この、自分の、脳機能で生活しているのです、私たちはみんな。

このようにして生活実態を明らかにした後、再度テスト結果に立ち戻り「何故、こうなってしまったのか。いつから生活ぶりが変わってしまったのか」を検査を受けている人とともに、考えていきます。(マニュアルB第3章113p参照)

小ボケは、自分の現在の状態を的確に把握していますし、そしていつから生活ぶりが変わったのかということも理解していますので、そこを整理するお手伝いをすると言うのが、この作業の一番近い説明かもわかりません。
現状の自覚があるからこそ、どこに生きかたの転機があったかを探ることが、その後の生活改善のベースとなるのですね。
テスト結果があれば、その人の現在の脳機能がわかります。
脳機能がわかれば、生活実態がわかります。
脳機能がわかれば、脳の老化が加速された場合にはいつから加速されたかがわかります。これはすべてマニュアル化されています!

とはいうものの「習うより慣れろ」という言葉を聞いたことはありませんか?
これを脳から考えると、言葉で「習う」のは左脳、実践で「慣れる」のは右脳を使うということです。
二段階方式の手法を使うスタート地点にいる保健師さん
とにかく実践してみましょう。テストを実施する以上、ゴールは採点ではなく生活改善指導することなのですよ。そこまでやってみましょう。
疑問点はいつでも聞いてきてください。
「これからもう一度、前のように元気に生きていってくださいね」というメッセージを伝えるために私たちはテストをします。


生活指導したときの保健師さんの言葉
「さすがと言うしかない高槻マジックを皆の前で見せていただき、とてもうれしく思いました」2008年2月
「先生が2年前ですよねと2・3度繰り返し言われたら・・・どうしてか・・・どうしてなんでしょう。ちょうどコックリさんみたいにスルスル喋りだしたんですよね」2008年2月

小ボケの方の言葉
「家を覗かれたみたい」
「占い師みたい」
「どうしてわかるんですか」

これは私個人の話ではありません。
南紀白浜の保健師さんも「超能力者」って言われたんですよね。
確かな手ごたえを感じている保健師さんの顔が、何人も浮かびます。
二段階方式を使った生活改善指導の手法には、このくらい力があります。

(最後の写真はコーヒーの実です)