脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

讃岐一人旅2024年5月-直島豊島

2024年05月26日 | 私の右脳ライフ
失効マイルを消化するという試みから思いがけない高松空港への旅が決まった時、父母が浜(ちちぶがはま)と豊島(てしま)のイメージがすぐに湧いてきました。
ベネッセアートサイト直島
いつも夫から「一カ所にじっといて楽しむ旅もある」と言われているので、豊島はまる1日滞在のつもりでした。
宿がとても少ないので、朝一番に高松港を出発する船で豊島に渡って、豊島ー高松航路の最終便で、高松に戻る。高松のホテルが連泊になって荷物の移動が最小限で済む。これはなかなかいいプランだと、文字通り取らぬ狸の皮算用。問題は豊島島内の交通手段。電動自転車がポピュラーのようですが、私はもう何十年も自転車に乗ったことがありません。レンタカーは多分狭い道がたくさんありそうで自信がない。そうすると1時間に一本弱の島内バスに頼るしかない。
ネットで情報はゲットしたのですが、もう少し詳しく確認したいと思って、豊島観光協会に電話をしました。
若い女性の方でした。
無機質なパソコンの情報ではない生の声(電話とはいえ)からは、なんとなくその人の体温や事務室の様子まで浮かんでくるようで、ネット情報とは別の安心感のようなものをすぐに感じました。
高齢期をイキイキと生きるためには、ネットにつながっておくことはもう必要条件だと思うし、またそのように励ましてもきたのです。でもたった5分ほどの生のやりとりから得たこの安心感から、人は一人で生きるものではないと、ちょっと感動すら覚えました。
その女性がいうには「豊島に1日ですかぁ〜はっきり言ってそこまではいらないかなあ。私だったら犬島に行きます。ちょっと待ってください。あ。ダメでした。おやすみです。直島に行かれたらどうですか?」この矢継ぎ早の情報をそのままスムーズに納得できるのが、「生の人からの情報」のおかげだったと思います。
というわけで、12年前に友人と行ったので当初は訪問予定にない直島へも行くことになりました。

直島
今回の滞在は午前中4時間だけですから、この12年間に新しくなった直島探訪。メインはANDO MUSEUM。
とはいえ、移動手段の制約があります。
高松からの朝一番の船の宮浦港到着は、7:50。接続しているバスは9:06発。
直島は現代美術の島ですから、港の近所にも新しい作品がいくつかありました。
赤カボチャ。中に入れるようになっていました。



直島パビリオン。

BUNRAKU PUPPET。

直島銭湯「I💗湯」12年前に「今度は入って見なくっちゃあね」って言ったのに…

バスに乗りさえすれば6分で家プロジェクトが展開されている本村地区に到着です。
ところがアート施設は10:00オープン。
屋外展示の護王神社へ。ここは杉本博司作。



前回は「ガラスの階段?地下の石室?」疑問のままだったのですが、それから、小田原の江之浦測候所にも足を運び、杉本博司が求める石そのものの持つ力、日の光を通して宇宙につながる感覚などが制作の基礎にあるのかと少しわかるような気になっています。12年経ったのだなとちょっとその年月に思いを馳せました。
さて、ANDO MUSEUM。
全景

前庭。右の丸い部分から採光していました。



築100年を超える民家の大きな木の柱やその自然な形を生かした梁をそのままに、コンクリート打ちっぱなしの壁、大胆な空間処理、安藤忠雄の世界が繰り広げられていました。





展示されていた直島でのベネッセミュージアムをはじめ安藤作品を構想する時のラフスケッチを見ると、まさに頭の中に出来上がっているものを表に出す作業が設計なのだと納得。設計する時、その自然の中にその自然を生かして、作品である建物を、あたかももともとあったかのように馴染ませる。そのような意図が汲み取られるような展示でした。
代表作「光の教会」も刻々と移り変わる日の光をじょうずに取り入れていることがわかりました。


建物を安藤忠雄が設計したジェームス・タレルの新しい作品は、ANDO MUSEUMのすぐそば、「南寺」。

15分間、漆黒の暗闇の中に入りこむ体験を通じて、感覚の変化や、外へ出て景色を見るとき受け取る情報の違いなどを感じてほしいという意図があると説明されました。
もともと、十日町市第1回「大地の芸術祭」に発表された光と影がテーマのタレル作「光の館」に案内されたのは2005年だったでしょうか?
それから、12年前。直島の地中美術館のオープンスカイ。私たちはナイトプログラムに参加して、夕方から夜にかけて空いた屋根から空の色の移り変わりを見て最後は計算された人口光を楽しみました。「寒いけど、どうする?」という端から「参加!」と笑いあったのです。
金沢21世紀美術館にもタレル作品はありました。
そしてここ。光がなくなった…光がなくなったから、次に出会う光が輝くということでしょう。同時に、私はタレルに出会ってからの約20年間生きてきたことを思いました。日々を重ねたことで、今の私があり今の私が感じることがある。12年前に一緒に楽しんだ友はいなくなっても、その時感じたことは消えていない。単に家プロジェクトを楽しむつもりだったのですが、ちょっと想定外の経験をしていました。
再訪した家プロジェクト「角屋」
再訪した家プロジェクト「碁会所」
ANDO MUSEUMの開館時間待ちで発見。
おしゃれな屋号。

朽ち果てそうな家屋。家プロジェクトはこのような建物を蘇らせたものです。

おしゃれな直島ホール

ベネッセハウスのあるエリアに「杉本博司ギャラリー時の回廊」が新しくオープンしていましたが、今回は時間が足りません。でもそのエリアにはどうしても行かなくてはいけなかったんです。
12年前に、大学時代からの親友と初めて訪れた直島。あの時はベネッセハウスに泊まって、ゆったりと直島の幾つもの美術館巡りをしました。二人が最初に目をつけるところが違っていて、2倍楽しんだ気がします。
直島のシンボル草間彌生の黄色い「南瓜」。
8年ぶりの雪だと直島の人たちはちょっとうれしそうに雪を楽しんでいました。「南瓜」には積雪がなかったのですが、傍の小さな杭の積雪を二人で見つけて喜び合ったあの時をもう一度感じたかったから。
2024年の「南瓜」

本当は、外国人観光客がいっぱいでした。

2012年の「南瓜」隅に積雪が。

たった4時間の直島でしたが、たくさんの体験ができました。

豊島
直島宮浦港から豊島家浦港まで20分ほどで12時半ごろに到着。帰りは17:20発の高松行き最終便。豊島は5時間の滞在です。
島内バスは1日7便。
豊島美術館。いろいろ調べてみましたが今ひとつよくわからず行ってみるしかないという結論でした。
その美術館行きバスの発車時刻は13:18。
港近くに横尾館があるということで行きました。
とにかく、びっくり。





トイレのインスタレーション

外観
円筒形の建物の内部は宇宙のようでした。

壁一面に滝の写真が。

美術館に行く前に「心臓音のアーカイブ」その展示内容よりもロケーションに心惹かれました。









結局、島内バスの便数が少ないため、豊島美術館滞在時間はちょうど2時間でした。確かに美術館内、その敷地内(棚田のあるエリアにこの美術館が作られています)でゆっくりするならば半日でもいられそうでした。
棚田

全景

開口部は2カ所

靴を脱いで入館します。
二つおおきな開口部を持つ円盤形の建物。つまり柱は一本もない。広さは狭く感じたり広く感じたりしましたが説明によると40M×60M。開口部からの光、風、音(鳥の声がたくさん聞こえました)を感じつつ、足元の床のそこここからにじみ出る水の流れを追ったり、全体に広がる水たまりを見たり…ほんの少量の水でもいろいろなスパンで湧き出たり止まったり。それぞれがランダムです。少し長い間出続けるところもあり、合流しそうでしなかったり、思いがけず速いスピードで大きな水たまりまで駆け抜ける流れもあったり。
開口部はたくさんあるようでした。様々にコントロールされているのでしょうね。
靴を脱いで入館するのですが、床材が独特の吸水性のあるもので心地よく初めての体験でした。漆喰に近いようなものではないでしょうか?
カフェで見つけた小さな模型。これで形がわかるでしょうか?左下の細くなったところが入口です。

カフェもおなじテイストの建物で、居心地よくひと時を楽しみ、スタッフともお話しました。



若い女性のスタッフから「美術館はいかがでしたか?」というあまりにも単刀直入な質問にちょっと慌てながら「うーん。水がいろいろな生まれ方をして、いろいろな道を辿りながら最後は一つの大きなものに帰っていく。というのは人が生きることと同じ意味かなあと思ったのよ」と答えました
ニコッと笑って「時々、お客様となんかピタっとくるやり取りができるのがすごく嬉しいんです」というので写真をお願いした後、ちょうどお客さんが来たので慌てて飛んで行きました。

豊島美術館でとても心地よい時間を過ごしたのです。
でも、この若い女性とのやり取りは思いがけないほどの喜びを湧きあがらせてくれました。
私が旅にいちばん求めているものは、人とのつながりなのかもしれません。

by 高槻絹子










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