脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

大切なむかし話

2017年12月24日 | 正常から認知症への移り変わり

友人から連絡がありました。「どうも母が小ボケっぽい…」
先日のこの投稿(脳機能でいうと小ボケって)を読んで、だんだん確信的になったようです。
旅の途中でしたから、その記事では手書きのグラフで説明していましたので、元のグラフをアップします。

そして、このグラフのもともとのデータに立ち戻ってみようと思いたちました。調べてみたら、このフィールドワークは1992年を中心に実施したものでした。
60歳代64名 70歳代107名 80歳代54名 90歳代6名計231名(地域高齢者総数303名の76.5%)
実はそれに先立つ5年前、静岡県のある山村で、脳機能検査を用いた集団検診を行いました。そこでかなひろいテスト不合格群でMMS15点以上の人たち(小ボケ・中ボケ群)53名に対して重点的に、5年間認知症予防のために健康教室や保健師さんの家庭訪問などを実施し続けました。そのあたりのことは日本医事新報に何度かにわたってレポートしました。


この人たちへの認知症改善の要点は
「生活意欲を失い始めた高齢者に対する家族ぐるみ、地域ぐるみの交際交友の促進」
「生きがい発見のためのゲームスポーツなどの普及」
「足腰の鍛錬などの症例」でした。薬ではなく、脳機能に基づいた単なる生活改善指導だったのです。
そして5年後。小ボケと中ボケ群の変化はこうなっていました。(前痴呆=小ボケ、軽症痴呆=中ボケと同意です)


未確認例4例となっていますが、その内訳は、数回家庭訪問をしたのですがいつも山仕事に出かけていた方1名。この方は自立できていることは確実でした。入院中の上重体で帰宅がかなわない方1名、住所はあるのにこの地区に住んではいない方(多分町に住んでいる子供に引き取られた?)2名でした。この3人は悪化群だったかもわかりません。
つまり実質的には全数のフォローができているのです。
考えてみれば、この前人未到の5年間にわたるフィールドワークこそ、私の仕事の基礎を形作ったものだと思えます。この地区には数十回通いました…

小ボケの方のお顔が浮かびます。この方たちは、世の中で通用している脳機能検査をしても合格するのですよ。日本語は70年以上も使い続けていますから、それなりのことをちゃんと言われます。家庭生活もだいたいこなせるのですが、いったん家の外、例えば老人会、自治会等では、とても付いていけません。前頭葉の注意分配力を発揮して状況判断や発想力が必須の状況では対応できないのです。

中ボケから見事にカムバックされた方は、家族の熱心な働きかけがありました。
このレベルは時の見当識があいまいになって、脳機能の低下が後半領域にも及んできた結果、家庭生活でもきちんと仕事ができません。このレベルでも話すことはそれなりに「普通」。だから家族は話をきくとボケていないとしか思えず、やっていることを見ると入浴、着衣、トイレ、食事、掃除、片付けetcどこか変。やっぱりボケなのかとあたふた。嫌味でやっているのではないかと疑う家族すらいます。

ついでですから、大ボケは脳機能から言うと脳の後半領域の機能にも大きな機能低下が起きてしまっています。

かなひろいテストはほとんど0点になってしまっていることがわかるでしょう。
世の中はこのあたりから「ボケた」と言い始める訳ですから、いかに手遅れの認知症に対して右往左往しているのかわかりやすいと思います。このレベルになってからは改善はほとんど見込めません。強力に働きかけても維持が精いっぱいでしょうか。
早い段階で生活改善に取り掛かることができると、5年後の有効率は80%を超えるという事実!
この事実を自信に、各市町村での取り組みの指導につながっていったのでした。

以下フロク

よく見るといろいろ興味深いことが見えてきます。
MMSが30点満点でも、かなひろいテストがはっきりと不合格の人がいます。初めてこういうケースにあたると、いくら勉強していても、頭の中が疑問符いっぱいになってしまうようで、何度も質問が来ました。
MMS 得点が低下していくにつれて、かなひろいテストの成績が不合格の範囲内でもより低下していきます。大ボケレベルになると、ほとんど0点です。
MMSとかなひろいでレベル分けをした時に、見事に区分けができることは驚異的なレベルではないでしょうか。プロットは4つずれていますが、実数は6人でした。脳卒中後遺症の方、側頭葉性健忘の方、精神科受診中の方などがこの区分け法で外れる方たちでした。

認知症の早期受診―友人への返事

右脳と左脳は得意分野が違う-その3 (最後に正常から認知症への移り変わりの症状解説があります)






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