脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

感覚性失語症の体験ーアナと雪の女王から

2014年06月09日 | 左脳の働き・失語症

「ことばは左脳」。これは皆さんも原則として知っていることでしょう。
それでは「ことば」はどういう働きをするか、ちょっと考えてみてください。
もちろん、「ことば」には「考える」という大切な働きもありますが、今日はちょっと置いておくことにします。普通に外に現れる働きです。
    口を使って「話す」 
    手を使って「書く」 
    耳を使って「聞く」 
    目を使って「読む」

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もう一度、「ことば」の働きを眺めてみてください。
これらの働きがスムーズにいかなくなるのが失語症です。

ここで大切なことを確認しておきましょう。口や手や耳や目の機能に問題が起きて「ことば」が使えなくなることを失語症というのではありません。そしてもうひとつ、実際の失語症はもっと渾然としているものですが、今回は簡単にわかりやすくして考えます。

口を怪我してうまく動かせないから話せない。のではなく以前と同じように口は動くのだけど、ことばを話そうとすると話せない。
(右脳の導きで、歌は歌えるという人は多くいます)

手のけがや筋肉や筋に故障が起きてうまく動かせないから書けない。のではないのです。
(話がややこしくなりますので、飛ばしてくださってもかまいません。
失語症の多くは左脳の障害によっておこります。左脳が障害されると、右手にマヒが残ることがあります。そうすると、運動が障害されて当然書きにくくなりますが、ここでいいたいのは、たまたま怪我をして書けなくなった状態を失語症というのではないということです。)

耳が聞こえなくなったから聞こえない。目が見えなくなったから読めない。ではないのです。

聴力に何の障害もないのに、つまり聞こえているのに「何と言われているかわからない」
視力に何の障害もない、つまり見えているのに「何が書かれているかわからない」

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口や手や目や耳を使うということは、当然のことながらそこを動かす役割を担っている「脳」も使うということです。
そして、その働きをもとにして「ことば」の理解に進むのです。

口や手や目や耳を統括している脳の領域だけが壊されると、口や手や目や耳の働きは障害を起こしますが、「ことば」には問題がないのです。
領域により「話しにくい、書きにくい、見にくい、書きにくい」から「話せない、書けない、見えない、聞こえない」まで障害はいろいろ起きてきますが、障害されていることと別の方法をとることで、ことばの大切な役割であるコニュミケーションには問題が起きてないことがわかります。「話せないなら書いてもらう」「聞こえなら書いてあげる(その逆)」などです。

それとは逆に「ことば」を管理している領域だけが障害されると、「口や手」は動かせるのに、「話せない、そして書けない」いう状況が生まれてきます。
「耳も目」もきちんと機能しているのに、「聞き取れない、そして読み取れない」状況に陥ってしまうのです。

「話す」と「書く」という働きは、脳から指令が出て動きが外へ向かって行くということですね。

主にこの方向が障害された失語症を「運動性失語症」と言います。
滑らかに話せませんから、本人も苦しそうですし、周りの人が見すごすこともありません。
こちらの言っていること(「聞く」)は障害されていませんから、「はい(うなずく)・いいえ(首を横に振る)」でこたえられる質問にすると意思疎通を図ることができます。
「おなかがすいていますか?」「うなずく」
→空腹了解!
「ご飯とパンどちらにしますか?ご飯?」「首を振る」
→パンOK!

いっぽう、「聞く」と「読む」という働きは、刺激が外から脳の中に入っていくということです。
こちらが障害された場合を「感覚性失語症」と言います。同じ左脳障害でも先の「運動性失語症」をきたす場所(ブローカ野)とは別の、もう少し後ろの場所(ウエルニッケ野)が障害されたときにおこります。

滑らかにすらすら話しますが、何が言いたいのかわからない・・・。
持って回った言い方が目立ったり、重度の方の場合だと、発音といいイントネーションといい日本語なのですが、復唱や書き取ることすらできません。(ジャルゴンといいます)
そしてもう一つの大きな障害が隠されています。それが「聞こえているのに、意味が分からない」

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感覚性失語症の方の聞こえ方を「外国語を聞くように、音としては大体聞こえているんだけど何と言ってるかわからない状態」とよく説明します。

お待たせしました。いよいよ本題です。
先日ようやく「アナと雪の女王」を見に行きました。 
帰宅して話題の「Let It Go」をユーチューブ検索 。面白いサイトを発見。

各国の美女たちがそれぞれの25種類のことばで「Let It Go」を歌い継いでいます。
英語から始まりフランス語・ドイツ語・オランダ語・中国語・スエーデン語と続きます。
そこまでは、「たしかに『Let It Go』あの歌が聞こえる。なんと歌ってるかはわからないけど」
メロディを理解するのは右脳ですから、歌詞がわからなくても、「Let It Go」という曲だということはよくわかります
そして7番目に松たか子さんが歌い始めたら、感動的に歌詞として聞こえ、感動的に意味が分かります。

英語からスエーデン語までと、日本語の次のスペイン語から終わりまで、全くなんといってるのか意味も何も分かりません。聞こえているのに、です!
これがもし日本語の会話でおきたとしたら…
まさに感覚性失語症の体験です!


クリックしてユーチューブを見てください。

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英語やフランス語やドイツ語が分かる人は最初から意味が分かるのは言うまでもありません。
そんな人でも、その人がわからない中国語やタイ語やマレーシア語やタガログ語の歌が聞こえてきたら、意味は分からず「Let It Go」という歌だということだけはわかるでしょう。

ユーチューブのこのサイトが挿入できたら、こんなにたくさん書かなくても「感覚性失語症の体験をしてください」でよかったのですが、どうしても挿入できずたくさん書いてしまいました(汗)
後から挿入できました。



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