脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

脳障害の解説①左脳が障害されても「目は口ほどにものを言い」

2010年11月11日 | 右脳の働き

アナログ情報を処理する右脳(機能)とか、デジタル情報を処理する左脳(機能)とか口にしますが、単に言葉で理解するのではなく、保健師さんたちには「それはどういうこと」なのかをわかっていただきたいと思うのです。
伊豆高原の11月(城ヶ崎海岸)2010_1101_133500p1000207

講演でもよくお話しするのですが、場所によって脳の機能に違いがあることを実感できるのは、脳に障害を負った場合です。
脳卒中の場合もありますし、けがの場合もあります。

障害を受けた場所によって、あきらかに「できなくなること」が違います。
一番わかりやすいのが、運動の脳に障害を負ったときでしょう。
左脳に障害が起きたら、右半身に運動麻痺が出現します。右脳なら左麻痺ですね。
次にわかりやすい障害は、左脳。言葉に問題が起きてきて、いわゆる失語症になります。失語症にはしゃべりにくいタイプと理解が悪くなるタイプとあります。

しゃべりにくいタイプの方が、障害がはっきりして見落とされないし、コミュニケーションもとりやすい(質問にイエス・ノーで答えてもらえば意志疎通が図れるから)うえに、基本的に回復がいい傾向があります。また右上肢や顔の右半分に麻痺を伴うことが多いです。

元巨人軍の長嶋監督の障害は、マスコミで見る限りではこのタイプのようです。話しずらそうではありますが、何をいいたいのかは伝わります。
もちろん歩けるようにもなりました。そこまで回復されたにもかかわらず、右手はいつもポケットに入っていますね。

一方で、理解が悪くなるタイプというのは、聞こえているのに何を言ってるのか分からないという障害で、本人にとってはあたかも外国語を耳にするような感じです。そして本人はなめらかにしゃべるのですが、いいたいことがはっきり伝えられません。キーワードが出てこないために、回りくどい話し方が目立ちます。
一見障害は軽いように思えますが、こちらの言ってることは伝わらないし、相手が何を言いたいかもわからないしで、コミュニケーションをとることはとても難しくなります。右下肢の麻痺がよくあります。詳細はマニュアルC95P参照
大室山2010_1101_140100p1000209 2010_1101_142600p1000214                       山頂の五智如来地蔵尊              

しゃべりにくいタイプの人たちは、本当に困った顔をします。恥じらうこともあり、落ち込むこともあります。「思ったことが言えない」そのつらさは、わかりやすく私たちにとってすぐに共感できるものです。

理解が悪くなるタイプの人たちは、当初はしゃべりにくいタイプの人たちに比べてそんなに困った感じは受けないものです。お話ができるからですが、理解が悪くなるタイプの人たちがしゃべればしゃべるほど、聞く側から言えば何を言いたいのか分からない状況に陥りがちで、そんな時聞き手はつい困った顔をしてしまいます。
その困った表情を読み取るのは、失語症の方の右脳!
右脳は障害を受けていませんから、ちゃんと話し相手が困っているということがわかります。その段階で、このタイプの失語症の人たちは
「自分の言ってることは、やっぱりわかってもらえていない」と自覚することになって、落ち込むのです。
山頂の八ヶ岳地蔵尊2010_1101_141600p1000211
この場合のコミュニケーションは、左脳を介してではなく右脳を介して行われたということがわかりますか?

昔の人たちが
「目は口ほどにものを言う」といったのは、言葉よりも目つきや表情の方が気持ちを伝えられるということで、右脳のコミュニケーション能力のことをよく理解していたということになりますね。

よく考えてみると本来は「目はものを言わない」わけですから、コミュニケーションのベースは、あくまでも言葉だと言っていることにもなります。
「その大切な言葉は口からでますね」と言っているのです。
そのうえで「目つきで豊かに表情を作り、言葉を使わずに感情を伝えることができます」といって、この方法でも十分にコミュニケーションが取れると教えています。
私たちは言葉が左脳の機能と知っていますし、表情を出すのは右脳の機能と知っていますが、そのままの表現よりも、このことわざの方がずっとわかりやすい説明だと思います。
一つ注意。
言葉がなくても感情のやり取りはできますが、論理的なことに関しては言葉が使いこなせなくては、とても無理です。その意味でエイジングライフ研究所が左脳の働きを「仕事・勉強」という表現を使うのは、より分かりやすい言い方の一つだと自負しています。
                            山頂より富士山遠望2010_1101_141700p1000213
私たちは思いがけないほど、言葉以外の力で意思疎通を図ります。
目つきもそうですし、顔の表情やしぐさからも気持ちを読み取ろうとします。
声の大小・強弱・高低なども大切な情報源ですよね。

失語症になっても言葉以外の情報処理の能力が、どのように発揮されるかを知れば、右脳の機能を理解することの近道にもなります。


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