脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

「ボケてない?何か、ちょっと違うんです。」

2010年04月14日 | 側頭葉性健忘症

二段階方式では、
・脳機能と
・生活実態(小ボケ・中ボケ・大ボケ)と
・最近の生活歴(ナイナイ尽くしの生活が継続しているか否か)
この三つの情報をどれも同じように大切に解釈します。
写真は夕方の庭
2010040617410001 そして普通の認知症(アルツハイマー型)ならば、この三つの情報の意味するところはみごとに一致するものなのです。
脳機能が小ボケレベルならば、生活実態も小ボケ状態、そして小ボケに至るナイナイ尽くしの生活実態も確認できるという風に!

先日の相談事例です。
MMSは16/30ただし、再施行で合格できる項目があり実力的には19/30と言うところでしょう。「時」は季節と時刻のみの2点。
前頭葉テスト結果は立方体可、動物名想起(11,0)、かなひろい(15,38,不可)
以上を総合すると中ボケレベルということになります。2010040618030000 2010040618040000

生活実態は、妻の評価だと(④⑦⑨ ⑪⑫⑮⑯⑱⑳ ???)と大ボケに近い評価でした。
保健師さんのコメントがありました。
「本人がこのような状況になってしまったことを不満に思うために、少々厳しく○をつけているように感じました」
そしていくつかの丸を消していましたね。
そうですよ。パソコンでは、丸がついた項目だけの理解しかできませんが、「なぜ、この項目に丸がついたのだろう」というようなところへ踏み込んでいくことも、その人の理解を深めるためには必要なことです。2010040617510000

さて生活歴。
30年前、実家の料亭からのれん分けで支店を出し、現在もその食堂を経営している。さらに本人が調理師で厨房に立って料理をしている!
こんな生活をしていて、ボケるわけはないのです。
私のコメント
「開店休業状態じゃないの?実態はほとんどお客さんはないのに、もしかしたらお客さんが来るかもしれないから、外出も趣味も楽しめないということだってあります」
「店があるというのはいかにも現役のように感じられますが、脳は使っているという実態が大切なのです」
「馴れた仕事は、中ボケレベルでも結構こなせます。でもその時の『判断』が必要な状況だと、もうお手上げ。いろいろなトラブルが起きているはずですが」
「仕入れから、調理から、この脳機能でこなせるはずがありません」2010040617540000 2010040617590000

私の否定的な突き上げに対して、保健師さんは
「多分できていると思うんです。他に従業員はいないようですし、店は流行ってなくても開店休業ではないと思います・・・」と、頑張って反論してきました。
「仕事は、朝8時から仕込み始め、夜は11時近くまで片づけをする。休みは日曜日の午後くらいで毎日働いている。お昼前の休み時間には近所の池に行って魚を見るのが好きで日課になっているような人なんです!」とだんだん保健師さんが元気になってきます。
「この人はボケてないのではないか?どう考えても何か、ちょっと違う」と感じた、面談中のご本人の様子が思い出されてきたのでしょう。2010040617500000
 
私たちが個別の生活指導をするときには、本人や家族の訴えには心をこめて耳を傾けますが、この話は真実か否かと、客観的に評価し続けながらという条件が付くのです。
その評価のベースになるものは、
・脳機能と
・生活実態(小ボケ・中ボケ・大ボケ)と
・最近の生活歴(ナイナイ尽くしの生活が継続しているか否か)
この三つの情報がイコールになるはずであるという大原則なのです。
さらにこの三情報の、もっとも基本的なものはその方の脳機能ということになります。

今回のように一致しない時には、まず最初にチェックすべきは
「正しい情報を、伝えてくれているのだろうか?」ということです。
生活実態の時には、ズレの原因を保健師さんは推理していましたね。
生活歴の時も同様にズレの原因を探らなくてはいけません。
その第一が「正しい情報かどうか」疑うことなのです。
しつこく、「開店休業状態」と言って気付いてほしかったのは、「言われたことを丸のみにしてしまう危険性」ということだったのです。

2010040617560000 結論ですが、今回は
・脳機能は中ボケ、
・生活実態は大ボケ?と妻は評価したが、実態は調理師の仕事はほとんど問題なくやれている
・生活歴は一番悪くても小ボケ?(つまり、はっきりと何年間ナイナイ尽くしの生活だったという実態がない。自信がなくなりイキイキとしない生活が多少あったかもという程度)ということになりました。
これは普通のボケではないということです。

側頭葉性健忘。(プラス老化が加速してきている)マニュアルCの110P参照してください。
脳機能としては、前頭葉機能が正常値なのに、記憶力が働かないために、記憶力がかかわるMMS下位項目が正答できない状態になります。日時や7シリーズや想起が全くできなくなります。そのために一見すると中ボケのようなMMSテスト結果になってしまうのです。
A4版用紙を見てください。Img
これが脳機能が中ボケレベルになった人のものだと思いますか?

本来ならば、前頭葉機能は完璧に合格のはずだったのですが、どうもこの状態が2年間は継続してきているために、小ボケが連動して起きてきていて、かなひろいテストが不合格になってしまったというように解釈できます。

本人が現在の状態についてこのように述べています。
「2年くらい前から気になっていた。客が頼んだ注文を今までは頭の中で覚えていられたけど、今はメニューを間違えないように一つ一書いている。日付がわからないので『携帯で見て書くようにしている』」
検査後「記憶がないことに驚きました」と感想を伝えたそうです。

こんな中ボケの方はいませんよ。


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