新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

2022-12-31 11:32:32 | 美術館・博物館・アート

「2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]」のつづきです。

ことし観た展覧会のお気に入りを選出する「振り返り」、「次点は次の6展としました。なお、順番は「前編」同様に「観た順」です。

体感!日本の伝統芸能 @東京国立博物館(トーハク)
日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱 @東京藝術大学大学美術館
野口哲哉展 -this is not a samurai- @ポーラミュージアムアネックス
東北へのまなざし 1930-1945  @東京ステーションギャラリー
国宝 東京国立博物館のすべて  @トーハク
響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき  @静嘉堂文庫美術館

「野口哲哉展 -this is not a samurai-」は、昨年(次点)に続いてのランクインです。
群馬県立館林美術館で観た昨年の展覧会(記事)に比べてはるかにこぢんまりした展覧会なのに、なぜ 2年連続? なのですが、たまたま私がポーラミュージアムアネックスにでかけたとき、なんとなんと、野口哲哉さんご本人が会場で作品を製作中だったのです
こんなセレンデピティーなんて、そうそうあるもんじゃありません
今年最大級サプライズでした

   

それはそうと、今年は(今年も)ブログ書きが低調で、この6展のうち、見聞録を記事化したのは「国宝」展「響きあう名宝」展だけでした

その「罪滅ぼし」(?) として、ちょっくら思い出しながらプチ見聞録を書いてみましょう。

まずは「体感!日本の伝統芸能」

ユネスコ無形文化遺産に登録された日本の伝統芸能歌舞伎、文楽、能楽、雅楽、組踊-を一堂に集め、明治末期の洋風建築として重要文化財に指定されている東京国立博物館・表慶館という空間で、それぞれの芸能が持つ固有の美それを支える「わざ」を紹介します。

という展覧会で、歌舞伎以外にはで拝見したことのない私にとって実に興味深いものでした。
文楽の人形遣いさんはこんなクッション付きの高下駄を履いているんだ とか、
能面を着けるとこんなに視野が狭まるんだ とか、とか…。

また、知ってはいたけれど、舞楽面の多様性ときたら…
能楽面は、能面より大きく伎楽面より小さいらしいけれど、その多様性は能面や伎楽面をはるかに上回っていて、特に、雑面(ぞうめん)は、「面を打つのが本番に間に合わないので、とりあえずこれで…」という感じ

そうそう、この展覧会で、「現存最古の日本映画」として九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎による「紅葉狩」が公開されていました。このフィルムは、1899年に撮影されたオリジナルから1927年に焼き増しされたもの(重要文化財)。それが、私が拝見してから2か月後の今年4月もっと前に焼き増しされたフィルムが発見され、NHKの報道によると、

映像全体に赤みがかけられていて、複製回数が少ないため映像が鮮やか

なのだとか
となると、1927年版「重要文化財指定」はどうなる???
ま、今後の動向は、新発見のフィルムの詳細が判明してからのことでしょうな。

   

「東北へのまなざし 1930-1945」は、

本展は、こうした東北に向けられた複層的な「眼」を通して、当時、後進的な周縁とみなされてきた東北地方が、じつは豊かな文化の揺籃であり、そこに生きる人々の営為が、現在と地続きであることを改めて検証するものです。

とフライヤーには堅苦しく書かれていますが、東北人たる私としてはなじみ深い展示が多く、ホッコリする展覧会でした。

一方で、かのブルーノ・タウト秋田を訪れた際、勝平得之(私の小学校の大先輩)が案内役を務めて親交を深めたこととか初耳でしたし、なによりの眼福津軽「こぎん刺し」で、その精緻な仕事ぶりには感服いたしました。

   

現在、皇居東御苑内にある三の丸尚蔵館では、新しい建物が建設中です。

もともと三の丸尚蔵館は、その収蔵する作品の質と量に比べて、展示スペースがあまりにも狭かったですから、来年秋(一部)オープンが楽しみです。

で、ホームグラウンドが休館中「お宝が、「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」として公開されました。

近年、三の丸尚蔵館皇室が所蔵する美術品を拝見する機会がたびたびあって、そのたびに、そのレベルの高さほれぼれしていますが、この展覧会でも、「春日権現験記絵」とか、狩野永徳常信「唐獅子図屏風」とか、酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」とか、葛飾北斎「西瓜図」とか、並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」といった大好きな作品に再会できて、それはそれは幸せでした。
とりわけ、狩野永徳「唐獅子図屏風」(右隻)は、何度拝見しても、あの大迫力にはやられてしまいます。「百聞は一見に如かず」といいますが、何度写真で視たとしても、現物目の当たりにすることにはかないません

三の丸尚蔵館の新施設は来年(2023年)秋に一部オープンするそうですが、それに合わせて、三の丸尚蔵館の管理運営独立行政法人国立文化財機構へ、収蔵品管理文化庁に、それぞれ現在の宮内庁から移管されるのだとか。
この仕組みの変更が、三の丸尚蔵館所蔵作品を拝見する機会がさらに増える方向に作用してくれることを願っています。

   

最後に、「もう一息で次点」の展覧会を、タイトルとフライヤーだけ挙げておきます。

大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館 & うらわ美術館
はじまりから、いま。1952-2022 アーティゾン美術館の軌跡
   @アーティゾン美術館
ポンペイ @トーハク
川瀬巴水 旅と郷愁の風景 @秋田県立美術館
みる誕生 鴻池朋子展 @静岡県立美術館 [探訪記]

来年は、観てきた展覧会の記憶が鮮明なうちに、見聞録として書けるよう、努力したいと思っていますが、さて…

ということで、今年のブログ書きはこれにてお開き
前年にひきつづきサボりまくりで失礼いたしました
来年はもうちょい踏ん張りたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。

それでは、良いお年をお迎えくださいませ。

つづきのようなもの:2023/12/28 「2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

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