パルコン旅行記

☆マイホーム建築への道のりとパルコンでの生活
(番外編を含む第1章~第5章)
☆寄り道日記

遠い記憶

2015-06-26 01:04:02 | Hello, a son ~ Hello, my sons
 入院して3日目。

大部屋だった事もあり、子供を連れて来てもらう事を避けていましたが、
息子を抱っこした時の感触や温もりが恋しくなり、
「リロを病院に連れて来て欲しい」…と、旦那サンにお願いをしました。

毎日出入りしている同じくらいのお子さんの声を聞いていた事もあり、
どうしても会いたくなってしまったのです。


 息子は、ベビーカーに乗せられ、病室にやって来ました。
でも、私の顔を見ても親しみを覚えないらしく、無視…。
ベビーカーが止まった途端、「降ろせ」…と騒ぎ、
デイルームへ移動するも、走り回り…で、大変でした。

結局、プリンを食べさせただけで、バイバイしましたが、
知らない所で、見た事の無いパジャマを着ている私を見た息子は、
「知らない人」と言わんばかりの目をしていました。


 その7日後に退院。

覚悟はしていましたが、息子は私と顔を合わせようとせず、
抱っこをしよう…と近寄ると、大声で泣き、
旦那サンや義両親にしがみつきました。

半分、怯えている様なこの状態は、二日間くらい続きました。
覚悟をしていたとは言え、親としては結構辛いものです。
「仲直り(?)出来るまで、どのくらい掛かるんだろう?」…と思っていましたが、
実は、「母を忘れてしまっていた」…という事に、後で気付きました。

母が去ってから、
祖父母や保育士さんなど、突然、沢山の知らない大人に囲まれ、
過去の人を記憶に留めておく余裕も無かったのでしょう。
息子なりに、必死な毎日だったと思います。

泣き方も、
やんちゃな泣き声や泣き方から、何か怯え、さ迷っている様な、
聞いた事の無い、叫びの様なものに変わっていました。


 退院二日目、
夕食が終わり、就寝前のひと時。
私は、ちょこんと床に座っていた息子を前に、
「モシモシだいすき!(←おかあさんといっしょの歌)」を歌いました。

すると息子は、初めて私の顔をしっかりと見つめ、
ぬいぐるみの様に、手を身体の前に置き、前のめりの姿勢で、
嬉しそうな眼をして、私の歌をじっと聞き入っていました。

その後、「でんしゃだいすき!(←いないいないばぁの歌)」を歌いましたが、
歌が終わった途端、息子は私の膝に顔をうずめ、じっと動かなくなってしまいました。

息子に触れることが出来たのは、退院後、初めてだったと思います。


 息子は、歌によって、
穏やかに過ごしていた過去を思い出し、
そこに「母」がいた事を思い出した様でした。

それからは、
多少ぎくしゃくしつつも、徐々に二人の関係は戻って行きました。



 息子にここまで嫌われるとは、思ってもみませんでしたが、
まさか、いつも息子に歌っていた「歌」に救われるなんて…。

歌っている時は、
嬉しそうに聞いている息子を動揺させてはいけない…と、必死でしたが、
息子の安心しきった目と、膝にしがみ付いてきたあの情景をを思い出すと、
切なくて、涙がボロボロ溢れて来ます。

 私は、あの時の事を、きっと一生忘れないでしょう…。
そして、出来る限り、息子と離れずに済む様、
親としてしっかりせねば…と、心に誓いました。




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