今日も朝から歌劇「蝶々夫人」のCDを聴いている。ジャパンオープンでの浅田真央さんの演技を見て以来、元々大好きなオペラだけに病的な状態に陥ってしまったようだ。
ちょっとだけ、このオペラを紹介。
作曲家のプッチーニは1900年に自身のオペラである歌劇「トスカ」のイギリス初演で、ロンドンへ招かれる。
そしてロンドンデーヴィッド・ベラスコの戯曲「蝶々夫人」を観劇。英語で上演されていたため、詳しい内容はわからなかったらしいが、プッチーニはたいへん感動し、次の新作の題材に「蝶々夫人」を選んだ。
イタリアに戻ったプッチーニはオペラの制作を開始。
当時のヨーロッパはジャポニズムが大流行の時。プッチーニは日本の雰囲気を出すために日本音楽の楽譜を調べたり、レコードを聞いたり、日本に関する資料を集める。また当時の駐伊日本大使夫人の大山久子を通じて日本の音楽や文化の情報を集めた。1902年にはプッチーニはパリ万国博覧会で渡欧していた川上貞奴にも会っていたらしい。
このオペラには「宮さん宮さん」「お江戸日本橋」や「君が代」などの旋律が登場し、日本的情緒を高めている。
舞台は明治時代の長崎。
長崎に寄港していたお気楽?アメリカ海軍中尉ピンカートンは芸者の蝶々さんと結婚する。
そして時は流れ、ピンカートンがアメリカに帰国して3年。
待って、待って、やっとピンカートンを乗せた船が入港。
しかしピンカートンとの間に生まれた子供と女中のスズキと3人待ち続けていた蝶々さんですが、そこにはアメリカで結婚した夫人ケイトを伴ったピンカートンの姿。
スズキから蝶々さんがどんなに彼の帰りを待ち続けていたか聞かされたピンカートンは自責の念からか逃げるように立ち去る。
そして蝶々さんはピンカートン夫人に会って全てを悟り、子供に別れをを告げて、自殺を図る。遠くから「蝶々さん」と叫ぶピンカートンの声を聞きながら・・・。
1904年2月17日のミラノ・スカラ座での初演は大失敗。
プッチーニは、翌日、すぐにスコアを引き上げ、改訂を重ね、現在の形になる。
ミラノ初演版では、第1幕の結婚式の場面で蝶々さんの親類が大活躍。第2幕では蝶々さんとピンカートン夫人との激しいやりとりがあり、現在、ピンカートンによって歌われている「さらば愛の巣」はない。
また第1幕の蝶々さんの登場や大詰めの愛の2重唱の旋律は大きく違っている。
歌劇「蝶々夫人」の全曲を聴き込んでからミラノ初演版を聴いてみるのも、面白いでしょう。
私が歌劇「蝶々夫人」の全曲レコードを手にしたのは大学生の時。当時、オペラに魅せられた貧乏学生の私は少ないお金が貯まっては少しずつオペラの全曲レコードを買い求めていたのですが「蝶々夫人」の購入は遅かった。理由は「ラ・ボエーム」や「トスカ」はLPレコード2枚組でしたが「蝶々夫人」は3枚組だったからである。
やっと手にした初めての「蝶々夫人」の全曲盤はマリア・カラスの歌う蝶々さん、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団による1955年録音のEMI盤。当時6980円。30余年前の貧乏学生にとっては、けっして安い買い物ではありませんでした。
第1幕の冒頭、どんな異国情緒あふれる旋律が流れてくるのかと思っていましたが、流れてきたのは、その後の蝶々さんの運命を暗示するような激しい音楽に驚いたことを今も憶えています。
第1幕での蝶々さんの登場の場面の華やかさ、そして第1幕大詰めの蝶々さんとピンカートンの2重唱の美しさの高揚感。初めて聴いた時から現在まで、私にとって全く変わりません。
マリア・カラスの声は第1幕はやはり可憐さの必要な15歳の少女を歌うには強烈かな?と思ったりしますが、第二幕となるとカラスの独壇場である。声が演技をしているとしか言い様がありません。
しかし、一たびマリア・カラスの洗礼を浴びると逃れられないものがあります。
第二幕第二場の冒頭ピンカートンを待って一夜を明かした蝶々さんがわが子を寝かす時に歌われる子守歌。
「いらっしゃるは、いらっしゃるは、きっと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おやすみ、かわいい坊や、私の胸でおやすみ。
お前は神様と、私は苦しみと一緒。
金星の光はお前のものに。
坊や、おやすみ」
Verra(いらっしゃるは)のたった一言のことばに込めたカラスの思い。何という悲しさでしょうか。この時のカラスの歌はまさに蝶々さんの悲しさそのもの。ここの場面を他の歌手で聴くと単に美しく歌いましたとしか聴こえません。
さて私の歌劇「蝶々夫人」全曲のお気に入りのCDには、こんなのもあります。
ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの蝶々さん、ユッシ・ビョルリンクのピンカートン。ガブリエーレ・サンティーニ指揮ローマ国立歌劇場管弦楽団による1959年録音のEMI盤。
ロス・アンヘレスに歌われる可憐な蝶々さん。そしてビョルリンクの素晴らしいテノールの声。
カラス盤は別格として、一番のお気に入りです。
浅田真央さんの演技で、しばらく歌劇「蝶々夫人」から逃れられない日々が続きそうです。
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ちょっとだけ、このオペラを紹介。
作曲家のプッチーニは1900年に自身のオペラである歌劇「トスカ」のイギリス初演で、ロンドンへ招かれる。
そしてロンドンデーヴィッド・ベラスコの戯曲「蝶々夫人」を観劇。英語で上演されていたため、詳しい内容はわからなかったらしいが、プッチーニはたいへん感動し、次の新作の題材に「蝶々夫人」を選んだ。
イタリアに戻ったプッチーニはオペラの制作を開始。
当時のヨーロッパはジャポニズムが大流行の時。プッチーニは日本の雰囲気を出すために日本音楽の楽譜を調べたり、レコードを聞いたり、日本に関する資料を集める。また当時の駐伊日本大使夫人の大山久子を通じて日本の音楽や文化の情報を集めた。1902年にはプッチーニはパリ万国博覧会で渡欧していた川上貞奴にも会っていたらしい。
このオペラには「宮さん宮さん」「お江戸日本橋」や「君が代」などの旋律が登場し、日本的情緒を高めている。
舞台は明治時代の長崎。
長崎に寄港していたお気楽?アメリカ海軍中尉ピンカートンは芸者の蝶々さんと結婚する。
そして時は流れ、ピンカートンがアメリカに帰国して3年。
待って、待って、やっとピンカートンを乗せた船が入港。
しかしピンカートンとの間に生まれた子供と女中のスズキと3人待ち続けていた蝶々さんですが、そこにはアメリカで結婚した夫人ケイトを伴ったピンカートンの姿。
スズキから蝶々さんがどんなに彼の帰りを待ち続けていたか聞かされたピンカートンは自責の念からか逃げるように立ち去る。
そして蝶々さんはピンカートン夫人に会って全てを悟り、子供に別れをを告げて、自殺を図る。遠くから「蝶々さん」と叫ぶピンカートンの声を聞きながら・・・。
1904年2月17日のミラノ・スカラ座での初演は大失敗。
プッチーニは、翌日、すぐにスコアを引き上げ、改訂を重ね、現在の形になる。
ミラノ初演版では、第1幕の結婚式の場面で蝶々さんの親類が大活躍。第2幕では蝶々さんとピンカートン夫人との激しいやりとりがあり、現在、ピンカートンによって歌われている「さらば愛の巣」はない。
また第1幕の蝶々さんの登場や大詰めの愛の2重唱の旋律は大きく違っている。
歌劇「蝶々夫人」の全曲を聴き込んでからミラノ初演版を聴いてみるのも、面白いでしょう。
私が歌劇「蝶々夫人」の全曲レコードを手にしたのは大学生の時。当時、オペラに魅せられた貧乏学生の私は少ないお金が貯まっては少しずつオペラの全曲レコードを買い求めていたのですが「蝶々夫人」の購入は遅かった。理由は「ラ・ボエーム」や「トスカ」はLPレコード2枚組でしたが「蝶々夫人」は3枚組だったからである。
やっと手にした初めての「蝶々夫人」の全曲盤はマリア・カラスの歌う蝶々さん、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団による1955年録音のEMI盤。当時6980円。30余年前の貧乏学生にとっては、けっして安い買い物ではありませんでした。
第1幕の冒頭、どんな異国情緒あふれる旋律が流れてくるのかと思っていましたが、流れてきたのは、その後の蝶々さんの運命を暗示するような激しい音楽に驚いたことを今も憶えています。
第1幕での蝶々さんの登場の場面の華やかさ、そして第1幕大詰めの蝶々さんとピンカートンの2重唱の美しさの高揚感。初めて聴いた時から現在まで、私にとって全く変わりません。
マリア・カラスの声は第1幕はやはり可憐さの必要な15歳の少女を歌うには強烈かな?と思ったりしますが、第二幕となるとカラスの独壇場である。声が演技をしているとしか言い様がありません。
しかし、一たびマリア・カラスの洗礼を浴びると逃れられないものがあります。
第二幕第二場の冒頭ピンカートンを待って一夜を明かした蝶々さんがわが子を寝かす時に歌われる子守歌。
「いらっしゃるは、いらっしゃるは、きっと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おやすみ、かわいい坊や、私の胸でおやすみ。
お前は神様と、私は苦しみと一緒。
金星の光はお前のものに。
坊や、おやすみ」
Verra(いらっしゃるは)のたった一言のことばに込めたカラスの思い。何という悲しさでしょうか。この時のカラスの歌はまさに蝶々さんの悲しさそのもの。ここの場面を他の歌手で聴くと単に美しく歌いましたとしか聴こえません。
さて私の歌劇「蝶々夫人」全曲のお気に入りのCDには、こんなのもあります。
ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの蝶々さん、ユッシ・ビョルリンクのピンカートン。ガブリエーレ・サンティーニ指揮ローマ国立歌劇場管弦楽団による1959年録音のEMI盤。
ロス・アンヘレスに歌われる可憐な蝶々さん。そしてビョルリンクの素晴らしいテノールの声。
カラス盤は別格として、一番のお気に入りです。
浅田真央さんの演技で、しばらく歌劇「蝶々夫人」から逃れられない日々が続きそうです。
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