オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

歌劇「ラ・ファヴォリータ」

2009年12月17日 09時42分39秒 | オペラ
ドニゼッティ 歌劇「ラ・ファヴォリータ」(全曲)

フィオレンツァ・コッソット(レオノーラ)アルフレード・クラウス(フェルナンド)セスト・ブルスカンティーニ(アルフォンソ2世)ルッジェロ・ライモンディ(バルダッサーレ)
オリビエロ・デ・ファブリツィース指揮NHK交響楽団、日本プロ合唱団連合

1971年9月東京文化会館でのライブ映像

かなり昔、NHKが主催したイタリア歌劇団の公演を憶えていて懐かしく思うのは私の年代以上の方々でしょう。
この前、今年、来日したミラノ・スカラ座の歌劇「アイーダー」の公演の放送を見て何か物足りなかった。正直、面白くなかった。それが何故かと考えてみると、それはイタリアオペラの持つ「熱さ」ではないかと思いました。
イタリアオペラの持つ旋律の美しさ、オペラ歌手たちの声の輝きにオペラの醍醐味を堪能する。オペラが進むにつれて「熱さ」を憶えていく。これを教えてくれたのはNHKのイタリア歌劇団の公演である。
NHKのイタリア歌劇団の公演は昭和31年から昭和51年まで8回開催されましたが私がリアルタイムに接したのは最後の2回である。それ以前のデル・モナコやテバルディの公演は、私にとっては、もう伝説の世界である。
さて7回目の公演は昭和48年。ちょうど私は高校生時代でオペラに興味が出てきた時で「アイーダ」「ファウスト」「椿姫」「トスカ」の4公演、全てテレビで見ました。オペラの面白さを初めて体験することが出来ました。特に初来日だったバスのニコライ・ギャウロフの深く、そして表現豊かな声に魅了され、現在もイタリアオペラのバスと言えばギャウロフ以上の存在は頭に浮かびません。
グノー作曲の歌劇「ファウスト」は大変長いオペラですが全く気になりませんでした。アルフレード・クラウスのファウスト、レナータ・スコットのマルガレータ、そしてギャウロフのメフィスト。物凄い顔合わせである。
また「トスカ」では第1幕の最後のスカルピアと合唱による「テ・デウム」で、その迫力に度肝を抜かれたものです。
そして最後の8回目の公演は昭和51年。その時、私は東京で大学生生活を送っていたので、バイトで貯めたお金を全てつぎこんでチケットを購入してNHKホールへ通いました。会場へ行くとオーケストラのコンサートには無い何とも言えない華やかな雰囲気で、それだけで気分が上気するものがありました。
一番忘れられないのがチレアの「アドリアーナ・ルクブルール」である。モンセラ・カバリエ、フィオレンツァ・コッソット、ホセ・カレラスという今でも信じられない顔ぶれである。特にカバリエのソプラノの美しい声!けっして大きな声ではありませんが大きなNHKホールの隅々までピンと響く美しい声!そして、そのカバリエに対抗するようなコッソットの迫力あるメゾソプラノ。本当に凄かった。
この時から、私はオペラから離れることが出来なくなったと言ってよいでしょう。
現在、世界中から一流の歌劇場の引越し公演が当たり前の時代になり、その贅沢さの感覚が無くなってきたのでしょうか?
スカラ座の「アイーダ」の放送を見て、熱くなれなかったのは、そこから来ているのかもしれません。
NHKのイタリア歌劇団の公演に慣れていた者にとって、ミラノ・スカラ座が初めて来日した時の衝撃。(私は初来日の時の「ラ・ボエーム」2回目の来日の「ナブッコ」を見ています)オーケストラ、コーラス、そして演出の桁外れの物凄さ。
NHKのイタリアオペラを知っているからこそ、スカラ座の凄さをいっそう体感できたのかもしれません。スカラ座の来日も回を重ねて見る方も慣れが出てしまったいるのかもしれません。(あくまでもテレビの放送を見ての感想ですが・・・)

さて ドニゼッティの歌劇「ラ・ファヴォリータ」である。
これはNHKのイタリア歌劇団の昭和46年の7回目の公演のDVDである。ですから私はリアルタイムで放送は見ていません。
現在のオペラ公演の映像のような鮮明さは全くありません。しかし解説書で今は亡き黒田恭一氏が述べていますが、まさに「オペラが燃えていた栄光の時代の記憶」である。
このオペラ、今もどちらかと言うと馴染みの薄いオペラでしょう。私も数年前、このDVDを手にするまでレオノーラの歌うアリア「愛しのフェルナンド」しか知らない状態でした。
コッソットとクラウスのまさに夢の共演。そしてブルスカンティーニやライモンディといった実力者が脇を固め素晴らしい公演の記録である。
第1幕のコッソットとクラウスの白熱の2重唱。第4幕のクラウスの歌うアリア「やさしい魂」でのハイC!単に高音を出しているだけではない。気品すら感じます。
このDVDを見るたびにイタリア・オペラの面白さとは何だろうと考えさせられます。
なお、この時の公演ではスリオティスとコッソットによるベルリーニの歌劇「ノルマ」やマタチッチ指揮によるプッチーニの歌劇「トゥーランドット」の公演もありましたが映像や録音は残っていないのだろうか?もし無いということならば、大変、残念なことである。