goo blog サービス終了のお知らせ 

オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

ブリテンの歌劇「ベニスに死す」

2015年05月29日 14時31分46秒 | オペラ
5月24日の日曜の深夜、NHK・BSでブリテン作曲の歌劇「ベニスに死す」が放送され、録画を見終えたところ。
スペイン、マドリード・レアル劇場の2014年の公演での映像。指揮はアレホ・ペレス、演出はウィリー・デッカー。
私はこのオペラの全曲を、映像で見るのはもちろんのこと、きちんと聴くのも初めてでした。
原作はドイツの作家トーマス・マンの小説。
しかし何と言っても有名なのはイタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティによる映画化されたものでしょう。
私は、この映画は映画館でも見ているし、DVDでも持っているので、この映画に強いイメージを持っている。
原作では主人公アッシェンバッハは作家ですが、映画では作曲家マーラーを彷彿させる音楽家に変更されている。そして、この映画のもう一つの主人公と言えるのがバックに流れる音楽でマーラー作曲の交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」が効果的に使われていていた。
しかしオペラである。1973年のブリテン最後のオペラ。
映画のイメージが強い中でブリテンによるオペラである。とにかくオペラ、舞台である。
面白かった。長さは感じなかった。演出も分かりやすく舞台転換も上手だった。当たり前ですがヴィスコンティとは全く違う世界。心理劇と言っていいでしょう。
主人公は原作通り作家。また主人公をとりまく七人である旅情をかきたてる未知の旅人、船に乗りあわせた若作りの老人、ゴンドラの船頭、ホテルの支配人、ディオニソス、ホテルの床屋、流しの音楽家の七役を一人の歌手によって演じさせているのが面白かった。同じ歌手に演じられることによってオペラが進んでいくにつれて、主人公にとりつく死神のように何かジリジリと追い込まれていくように感じさせられて行くものがありました。
オペラの最後、主人公アッシェンバッハが死んで幕を閉じる時の音楽は美しかった。
それにしてもアッシェンバッハを歌うテノール歌手は約二時間半ほとんど舞台で出ずっぱり。たいへんな難役である。もの難役を努めた ジョン・ダザックと言うテノール歌手は本当に見事であった。
ただアッシェンバッハが美を見出す美少年タジオは映画で演じたビョルン・アンドレセンのイメージを払拭できなかった。
これはもうしかたがありません。
まだ、この録画を1回しか見ていません。もっと、このオペラの理解を深めるためにも、やはり何度か繰り返して見直していく必要があるでしょう。


映画「ベニスに死す」より


にほんブログ村

にほんブログ村

「マリア・カラス/ザ・スタジオ・リサイタルズ」より「ヴェルディ・アリア集Ⅰ」

2015年04月17日 17時12分03秒 | オペラ
今日も「マリア・カラス/ザ・スタジオ・リサイタルズ」のアルバムに収録されているCDを聴いていく。
今日、聴いたのは4枚目の「ヴェルディ・アリア集Ⅰ」。2回、繰り返して聴く。

1.歌劇「マクベス」より「勝利に日に~さあ、いそいですぐに」
2.歌劇「マクベス」より「日の光がうすらいで」
3.歌劇「マクベス」より「消えてしまえ、呪わしいこのしみよ」
4.歌劇「ナブッコ』より「ああ、わたしが見つけた運命の書よ~いつかわたしも晴の身となり」
5.歌劇「エルナーニ」より「夜のとばりがおりたのに~エルナーニよ、いっしょに逃げて」
6.歌劇「ドン・カルロ」より「世のむなしさを知る神」

ニコラ・レッシーニョ指揮フィルハーモニア管弦楽団(1958年録音)

この録音はマリア・カラスが残した録音の中でも最高のものだと私は思っています。
そして今日、改めて聴きなおして、その思いを新たにしました。
LPレコードではA面に「マクベス」からの3曲、そしてB面に残りの3曲が収録されていました。
私は若い頃、このレコードを何度も聴いたものです。
このレコードで歌劇「マクベス」と「ナブッコ」を知りました。そしてヴェルディの音楽の多様さも。
この録音から、どれだけのものを私に教えてくれたか計り知れないものがあります。
マリア・カラスの強い個性と魅力は、今聴いても、色あせることはなく、古さを全く感じさせない強さがあります。
「ルチア」「ノルマ」「トゥーランドット」「ラ・トラビアータ(椿姫)」を同時にレパートリーに持ったマリア・カラスの凄まじさ。
ただ単に持って生まれた美しい声を響かせるという次元を超越したマリア・カラスの世界。
そのマリア・カラスの凄まじさ、超越した世界が、この1枚のCDに集約されていると言っても言い過ぎではありません。
特に前半の「マクベス」からのマクベス夫人の歌う3曲は本当に凄い。
「勝利に日に~さあ、いそいですぐに」の歌の直前にカラスによって語られる夫マクベスからの手紙の語りの凄さ。これだけで一気のドラマに引き込まれます。
たった3曲からマクベス夫人の持つ邪悪さ、野心、狂気が伝わってきて、このオペラを全曲で聴く以上に私は充実感を得ることが出来ます。
私は、この録音が初めてCDで発売されたものも所持しているのですが、第6曲の「ドン・カルロ」のあと、録音年代の違うヴェルディの録音が収録されていて、それまでの緊張感がプツンと切れる思いがあっただけに、今回、LPレコードの時と同様の収録内容で、昔と同じ思いで聴けました。
このマリア・カラスによるヴェルディの録音。
これからも私の大切なオペラの指針となるでしょう。





にほんブログ村

にほんブログ村



「マリア・カラス/ザ・スタジオ・リサイタルズ」

2015年04月14日 17時10分16秒 | オペラ
このところタイミングが悪いのか財務大臣閣下のご機嫌の麗しくない時にネットで手配していたCDが到着している。
昨日も13枚のCDがボックスに収められたアルバムが到着して閣下の逆鱗にふれてしまった。
「マリア・カラス/ザ・スタジオ・リサイタルズ」
マリア・カラスがEMIでの全スタジオ録音のリサイタル盤11枚と2枚の特典盤付きで税込で1890円の超お買い得価格(これが重要)。
マリア・カラス!
私にオペラの世界へ大きく目を開かされくれた偉大なオペラ歌手である。
たいへんな大昔になってしまいましたが、私が高校2年生の時、来日公演をNHKのテレビで見て、たいへんな衝撃を受けました。
それ以来、いまだにマリア・カラスの呪縛から逃れられないのである。(逃れるつもりはありませんが)
さて今回のアルバム。
多くの録音は既に何らかの形でCDで所持していますが、変な?混ぜ込みや編集なしのオリジナルの形で1枚1枚にCDに収録されているので、思い切って入手しました。
レコード会社のロゴも、まだEMIなのが何故か嬉しい。
本日は1枚目のプッチーニ・アリア集、2枚目のコロラトゥーラ・オペラ・アリア集、6枚目のパリのマリア・カラスⅠを聴く。
多くは初めて聴く録音ではないのですが、改めて聴いてみて、やはりカラスの素晴らしい声に圧倒される。
私は若い頃からカラスの歌うプッチーニは、あまり好きではありませんでした。
「ノルマ」や「ラ・トラビアータ(椿姫)」などベルカントやドラマチックなものを好んでいて、どうもカラスの歌うミミやマノンは苦手でした。
しかし今回聴いていて、例えば「ラ・ボエーム」から「さようなら」を聴いると小雪がちらつく寒い朝の情景が目に浮かぶではないか!
また「ジャンニ・スキッキ」からの「お父様にお願い」もラウレッタの気持ちが伝わってくるではないか!
マリア・カラスが再び私にオペラの魅力を伝えてくれる。
それも「声」そして「歌」の力で!
このアルバム。私の一生ものになるでしょう。そして、これからも私のオペラの指針になるでしょう。
1枚1枚、丁寧に聴いていって、そのあとは、改めてマリア・カラスの歌っているオペラの全曲CDを聴き直したい。
また新しい発見があるかもしれません。
なかなか時間的に難しいかもしれませんが・・・。






にほんブログ村

にほんブログ村

宮原知子さんの「魔笛」

2015年03月31日 14時09分31秒 | オペラ


今日は朝からモーツァルトの歌劇「魔笛」のCDを聴く。
何故「魔笛」?
フィギュアスケートの世界選手権は終わりましたが、リアルタイムの放送を見ることが出来なかった私は今、やっと録画で見ている状態ですが、いろいろな素晴らしいプログラムの中で、一番、心に残ったのが宮原知子さんの「魔笛」の音楽によるショートプログラムでした。
単純な私は迷うことなく朝起きると、すぐに「魔笛」のCDに手が伸びてしまいました。
モーツァルトの短い生涯の中で最後を飾るオペラ。
そしてモーツァルトの生み出した旋律が泉のように湧いてくるようなオペラと言うべきか。
モーツァルトの作品を愛した指揮者カール・ベームは「魔笛」をレコーディング中「これは何と人を幸福にする音楽であろう。まさに清らかな水の中に入って行くようだ」と語ったそうである。

さて宮原知子さんのプログラムで登場したナンバーは次の通り。
①第1幕フィナーレより「何という不思議な笛の音(ね)だ」
②第2幕よりアリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」
③第1幕フィナーレより「これは素晴らしい音!美しい音!」
④「序曲」より

④はオーケストラによる演奏ですが①~③はヴァイオリンとピアノによる編曲が使用されています。
歌劇「魔笛」のシンボルと言えるのはタミーノが手にする「魔法の笛」とパパゲーノが手にする「魔法の鈴」でしょう。
宮原さんのプログラムは、この「魔笛」を象徴していると言える2つのシンボルが登場する場面の音楽(①と③)を組み込み、そしてオーケストラの演奏による「序曲」で終わるという見事なプログラムと言えるでしょう。

①ではタミーノが笛を吹くと、さまざまな獣が寄ってくる。

何と不思議な笛の音だ。
野獣さえも聴いて喜ぶ。
しかしパミーナは来ない。
パミーナ、聴いておくれ。
お前はどこだ。

③では黒人のモノスタトスと奴隷たちに追われたパミーナとパパゲーノ。そこでパパゲーノが手にした鈴を鳴らすとモノスタトスと奴隷たちは踊りだし、歌いながら去っていく。

これは素晴らしい音!
美しい!
トララララ・・・・
こんな美しい音はきいたことがない。
トララララ・・・・

歌劇「魔笛」にはその他、超技巧のコロラトゥーラ・ソプラノによる夜の女王による2つのアリア、パパゲーノが歌う「「おいらは鳥刺し」や「パ・パ・パ」の二重唱など聴きどころ満載。
私が一番好きなのは、やはりパパゲーノが第2幕で歌う「恋人か女房か」かな。
聴いていて日頃の嫌ななことを忘れさせるものがあります。

今日、聴いたのはカール・ベームがベルリンフィルを指揮した全曲盤(1964年録音、ドイツグラモフォン盤)
サヴァリッシュ盤、スウィトナー盤も所持していますが、私が初めて「魔笛」の全曲盤を手にしたのはベーム盤なので、どうしても今も愛着が強いです。
いろいろバラつきのある配役ですがフリッツ・ヴンダーリッヒの歌うタミーノの素晴らしさ。そのヴンダーリッヒに、巧すぎていろいろ言われていますがフィッシャー=ディースカウがからむのですから、たいへんな贅沢だと思って聴いています。
そして録音当時のベーム指揮によるベルリンフィルの少し暗みのある響き。
この響きは現在、同じオーケストラかと思うくらい失われてしまいました。これも時代の流れか!

なを、たいへんな昔、私は大学生時代、スウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンによる映画化されたものを見たことあります。
スウェーデン語による歌唱でしたが、たいへん楽しく見た記憶があります。
DVDは発売されているのかな?映画ファンとしても、もう一度、見たいものです。


2015年3月世界選手権より




にほんブログ村

にほんブログ村


歌劇「トゥーランドット」三昧

2015年02月27日 16時36分44秒 | オペラ
今日の公休日。昨晩まで、この前の休みに続いて次はシベリウスの何の作品を聴こうかと思っていましたが、いざCDを選ぼうとする段階で、無性にオペラを聴きたくなり歌劇「トゥーランドット」のCDを選んでしまった。
歌劇「トゥーランドット」は私の大好きなオペラ。
それも、私がこのオペラの一番の聴きどころで聴き応えがある場面と思っている第2幕の第2場のトゥーランドットが歌う「この宮殿の中に」や謎解きの場面、第2場のフィナーレばかり3組のCD3連発で聴くという荒っぽい?聴き方をしてしまった。

①ビルギッド・二ルソン(トゥーランドット)、ユッシ・ビョルリング(カラフ)、レナータ・テバルディ(リュウ)、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ローマ国立歌劇場管弦楽団、合唱団(1959年録音、RCA盤)
②イゲン・ボルク(トゥーランドット)、マリオ・デル・モナコ(カラフ)、レナータ・テバルディ(リュウ)、アルベルト・エレーデ指揮ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団、合唱団(1955年録音、デッカ盤)
③マリア・カラス(トゥーランドット)エウジェニオ・フェルナンディ(カラフ)エリザベート・シュワルツコップ(リュウ)、トゥリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団(1957年録音、EMI盤)

最初に聴いたのはラインスドルフ盤。以前から好きな録音だったのですが、この3つの録音を並べて聴くと、ちょっと印象が薄かった。やはりエレーデやセラフィンの指揮で聴くとラインスドルフの指揮はテンポはいいのですが何か情緒不足で物足りなく聴こえてしまった。イタリアオペラのメロディの歌わせ方から見ると異質に感じてしまった。二ルソンの歌うトゥーランドットは素晴らしいのですが・・・。
今回、聴き比べて地味な存在と思っていたエレーデの指揮が本当に素晴らしいと思いました。情緒不足に聴こえたラインスドルフ盤の次に聴いたので、エレーデのメロディの歌わせ方に何かホッとしたような気持ちになってしまった。エレーデの指揮は、このオペラから何か匂い立つようなものすら感じました。次はエレーデ盤で全曲を久し振りに聴いてみようと思います。以前と違った気持ちになるかもしれません。
そしてエレーデ盤では何と言ってもデル・モナコの歌うカラフが凄い。王子というより英雄と言える趣きですが、緊張感あふれる歌声は謎解きの場面では最高である。
そしてマリア・カラスの歌うトゥーランドット!やはり最高のトゥーランドット!
王女の持つ威厳、そして謎解きに敗れた時の悲しさ。それらを声の力だけで長い年月を隔てても私たちに伝えてくれる見事さ。
謎解きに敗れて皇帝に訴えます。

天の御子よ!
尊き父よ!私はいやです!
あなたの娘を異国の人の腕に
お渡しくださいますな!
いいえ、そうおっしゃらないで下さいまし
あなたの娘は神聖なのです。
あなたは私を彼に与えてはなりません。
奴隷風情の彼に、いいえ、いけません!
恥ずかしくて死にたいくらいです!(カラフに)
そんな風に私を見ないで下さい!
あなたは、私の誇りを軽蔑していらっしゃる!
私はあなたのものにならないでしょう!
いいえ、望みません!

マリア・カラスは、どれだけの気持ちや感情を込めて、この歌詞を歌っているのでしょうか!
何度も聴きなおしてしまいました。
最後にマリア・カラスの録音から第3幕第1場からトゥーランドットとリュウのやりとりの場面とリュウの歌う「氷のような姫君の心も」を聴く。
録音当時、イタリアオペラ界のプリマドンナのマリア・カラスとドイツオペラ界のプリマドンナのエリザベート・シュワルツコップによる贅沢極まりない最高の録音。よくぞ残してくれた!という気持ちを強くする。

トゥーランドット
誰がそのような強い力をお前の心に与えたのか?
リュウ
姫君様、それは愛でございます。
トゥーランドット
愛?
リュウ
口には出さず、胸に秘めたこのような恋は
様々の責苦さも快く感じられる程
強いのでございます。
なぜなら私は、殿様にそれらを贈物したのでございますから・・・
なぜなら沈黙を守って、あなたの愛を殿様に差し上げたのでございますから・・・
私は全てのものを失いました
私の叶わぬ望みさえも!
私を縛って下さいまし!私を攻めて下さいまし!
私に責苦をお与え下さいまし!
ああ!私の恋のこの上もない贈物!

この場面、このオペラで一番息を飲み、そして悲しく涙が出る場面かもしれない。
マリア・カラスとエリザベート・シュワルツコップ。私にとって正に最高である。

さて今回は歌劇「トゥーランドット」を、このような聴き方をしてしまった。
次はどのような聴き方をしてみようか?
私の手元には今回のラインスドルフ盤を初めビルギット・二ルソンの歌うトゥーランドットの録音が海賊盤もどきのライブ録音も含めて5種類あります。
これらを今回と同様な聴き比べしてみるのも面白いかもしれません。






にほんブログ村

にほんブログ村




歌劇「ナブッコ」のDVD

2015年02月06日 13時05分48秒 | オペラ
長年、購読している音楽雑誌「レコード芸術」の2月号は恒例の「リーダーズ・チョイス」であるが、私はこの数年、応募していない。
理由は、この数年、最新録音の新譜CDをほとんど手に入れていないからである。1枚3000円前後の新譜CDは貧乏な?私には手が出ないのである。
昨年購入した純粋な新譜CDはコバチンスカヤのヴァイオリン独奏のストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲のCDのみというひどい状況。
そのかわり安価盤、特価盤ばかりネットで探し出してきて購入している状態。1枚3000円クラスのCDだったら1枚1000円前後のCDが3枚買えるという、たいへんケチ臭い発想なのである。しかし価格が安いからと言ってバカにすることなかれ。往年の名演奏家たちの録音が多く、それなりに楽しんでいる。ただ現在、第一線で活躍している演奏家が、どうしても手薄になりますが・・・。
ですから、すっかり、いかに安く素晴らしい演奏を聴くかが今の私のモットーになってしまった。
だから私の昨年のベストワンはカール・ベーム指揮ウィーンフィルによるブラームス交響曲全集。CD3枚組で2000円少しだった。
1975年の録音のCDを今頃やっと手に入れて喜んでいる私である。これでは「リーダーズ・チョイス」には参加できませんな。お恥ずかしい限り・・・。

さてさて2日前に1枚のDVDが届く。
ヴェルディの歌劇「ナブッコ」である。1986年のミラノ・スカラ座での公演の映像。ナブッコ役はレナート・ブルゾン、アビガイッレ役はゲーナ・ディミトローヴァという顔ぶれ。指揮はリッカルド・ムーティ。
オペラの全曲DVDが送料込で1200円という私にとって超掘り出し物である。
ところで、この公演の2年後の1988年。1981年に次ぐ2回目のミラノ・スカラ座の日本公演で、この「ナブッコ」もプログラムに含まれていて、私は、金銭的にかなり無理をしましたが東京まで追いかけて行ってNHKホールで見ました。だから、この映像は、キャストも、ほとんど同じで、どうしても個人的思い入れが強くなってしまいます。
1981年の初来日は事件でした。その時は、私は大阪でクライバーの指揮でプッチーニの「ラ・ボエーム」を見ましたが、その時からスカラ座のヴェルディの公演をぜひ見てみたいと強く思っていました。
そして「ナブッコ」の公演。圧倒的といえる輝かしいスカラ座のオーケストラの響き、そしてスカラ座の合唱団の歌声。たいへんな年数が経ちましたが今も私の耳にこびりついています。また美しく、そして大掛かりな舞台装置も物凄かった!
そして分厚いオーケストラの響きを乗り越えて聴こえてくるバリトンのレナート・ブルゾンの朗々としたバリトンの声!聴いていて本当にゾクゾクしたものです。終演後、楽屋口でブルゾンからサインをもらったのも思い出となりました。
序曲が終わって第1幕、幕が開いてすぐの冒頭の合唱の凄さ、そして第3幕の、あの有名な「行け、我が思いよ、黄金の翼に乗って」では、これを聴くために、わざわざ東京まで来たのだと思ったものです。このナンバーが終わったあと、しばらくホール内は沈黙が続き、そして熱烈な拍手となったことを、よく憶えています。
私は必ずしもお国ものにこだわる方ではありませんがミラノ・スカラ座のヴェルディはやはり特別なのである。違うのである。長年、受け継がれてきた自分たちの体の中に流れているオペラという血でヴェルディのオペラの何たるかということを教えてくれたと言うべきか。改めて、DVDを見て強く感じたしだいである。
最後に指揮のムーティ。
アバドからスカラ座の音楽監督を引き継いだ直後の公演だけに、物凄い勢いである。当時、その勢いが「ナブッコ」にピッタリだったのでしょう。
特に序曲での爆発的指揮ぶりは超見物です。
そして現在、世界的に不景気な状況なので、スカラ座と言えども、これだけの舞台は望めないのではと映像を見ながら思ったしだい。





にほんブログ村

にほんブログ村


歌劇「ラ・ボエーム」のDVD

2014年10月03日 16時54分46秒 | オペラ
たった2039円と、オペラとしては、私にとって安価な価格でプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」のDVDを手に入れた。
歌劇「ラ・ボエーム」は高校生時代、レコードで初めて手にしたオペラ全曲盤。とことん聴き込んだオペラ。
またミラノ・スカラ座の初来日公演で見た公演も「ラ・ボエーム」で、私にとって切っても切れない、そして最も愛着のあるオペラである。
だから、それなりに、このオペラに関しては強いイメージを持っている。
しかし最近の、このオペラの演出を見ていると、ゲッソリするものがある。
刺青をしていたり、風俗嬢のようなヒロインのミミを見ると、最近の演出家はプッチーニの美しい音楽を聴いて何も感じないの?と叫びたくなる。
最近、あるテレビ番組で今年のザルツブルグ音楽祭でのR・シュトラウスの「ばらの騎士」から第3幕のフィナーレをチラッと見ることができましたが、何とオープンカーに乗って主役が去って行く演出。何だこりゃ?
ステージにオープンカーを走らしたら斬新な演出なの?何か怒りすら込み上げてくるものがあります。

さて今回の「ラ・ボエーム」のDVD。ネットでお買い得価格で販売されていたので飛びついてしまった。
2009年のコヴェント・ガーデン王立歌劇場での公演の映像。
ミミ役はヒブラ・ゲルズマーワ、ロドルフォ役テオドル・イリンカイ。そして指揮は今、売出し中のアンドリス・ネルソンス。
演出は、たいへんオーソドックス。だから安心して見ることが出来る。そしてプッチーニの抒情あふれる美しい音楽に浸ることができる。
「ラ・ボエーム」は、やっぱり、こうでなくっちゃ!
そしてオーソドックスな演出の中で、たいへんきめの細かい所が随所にあり楽しませてくれる。
例えば第2幕のムゼッタの登場の場面。小さな愛玩犬を抱いて登場したムゼッタ。おきゃんな中にも、何か上流社会に対して背伸びしているムゼッタの思い、雰囲気が伝わってくる。
そして、このオペラの最後。ミミが息が引き取った直後のショナールの表情と手の動き。
だからこそ、このあとのショナールの「マルチェロ、息をひきとっている」という台詞が迫ってくるように感じさせられるものがあります。
こんな演出のオペラの映像をもっと見たい!
それにしても第4幕の後半、ミミの登場から最後まで、何度、聴いても胸が熱くなる。泣けてくる。
頭が薄くなり、ジジイになった今も、私を泣かせるオペラである。
このDVDでのゲルズマーワが歌うミミ。少々グラマーなミミですが、泣かせてくれます。
第4幕の後半、ロドルフォに対して切々と自分の思いを歌うミミ。そして、その顔の表情の素晴らしさ。
これぞ演出の力。
オペラの演出は、音楽を生かすものであって欲しい。

それにしても財政難の私にとって、少しでも安価で素敵なオペラのDVDを、もっと探すことにしましょう。
情報があれば、よろしくお願い申し上げます。




にほんブログ村

にほんブログ村


「ニコライ・ギャウロフ~メフィストフェレを歌う」

2014年09月12日 15時42分06秒 | オペラ

私にとって、イタリアオペラ界の最高のバス歌手は誰かと聞かれたら、亡くなって、もう10年経ちますが、やはりニコライ・ギャウロフの名前を挙げます。
私がオペラに興味を持った頃、現役バリバリの絶頂期の時でした。また昭和51年、第8回NHKイタリアオペラの公演でヴェルディの歌劇「シモン・ボッカネグラ」の公演で初めて、その声を生で聴き圧倒されました。
ギャウロフのバス歌手独特の深い声、そして太く深い声は、ほれぼれするほど美しかった。
ところで、そのギャウロフの興味深いCDが手に入った。
ボイートの歌劇「メフィストフェレ」からメフィスト役のバスが登場する4つの場面を収めたCD.
こんな素敵な録音があったとは知りませんでした。
1960年代の若々しく、張りのあるギャウロフの声は正に圧巻。
壮麗な大合唱を伴う「プロローグ」の「幸いあれ!天主様!」と「エピローグ」の「ファウストの死」を聴いていて、本当にゾクゾクするような気持ちになりました。
ボイートの歌劇「メフィストフェレ」のあと、グノーの歌劇「ファウスト」に続くのも、ありがたい。
それにしても説明書の表紙の写真は凄い。
これがLPレコードだったら、衝撃的だったでしょうなあ。

「ニコライ・ギャウロフ~メフィストフェレを歌う」(デッカ盤)
【曲目】
(1)ボイート:歌劇「メフィストフェレ」~幸いあれ!天主様!
(2)ボイート:歌劇「メフィストフェレ」~復活祭の日曜日に
(3)ボイート:歌劇「メフィストフェレ」~さあ 歩きましょう
(4)ボイート:歌劇「メフィストフェレ」~ファウストの死
(以下ボーナストラック)
(5)グノー:歌劇「ファウスト」~金の子牛は常に生きていて
(6)グノー:歌劇「ファウスト」~眠ったふりをせずに
(7)ルビンシテイン:歌劇「デーモン」~Ja tot, katoramu vnimala
(8)モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」~カタログの歌
(9)ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」~ひとり寂しく眠ろう
(10)ビゼー:歌劇「真珠採り」~黄金と花に飾られた神聖な寺院の奥に

【演奏】
ニコライ・ギャウロフ(Bs:1~10)
フェルッチョ・タリアヴィーニ(T), シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ(指揮) ローマ歌劇場管弦楽団、合唱団(1~4)
エドワード・ダウンズ(指揮) ロンドン交響楽団、合唱団(5~9)
ルチアーノ・パヴァロッティ(T:10) ロビン・ステープルトン(指揮) ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団(10)

【録音】
1966年(1~4), 1962~1964年(5~9), 1977年(10)






にほんブログ村

にほんブログ村

2つの楽劇「エレクトラ」

2014年08月19日 16時14分29秒 | オペラ
今年はドイツの作曲家、リヒャルト・シュトラウス生誕150年の記念の年である。
多くのクラッシック音楽ファンにとってシュトラウスは「英雄の生涯」や「ツァラトゥストラはかく語りき」といったオーケストラ音楽の作曲家のイメージが強いかもしれません。しかし私にとってのシュトラウスはオペラ、そして歌曲の人である。
シュトラウスのオペラの中で私の好きな作品に楽劇「エレクトラ」があります。
そして、このところ続けざまに「エレクトラ」の全曲CDを2組、手にしました。

①楽劇「エレクトラ」
エヴェリン・ヘルリツィウス(エレクトラ)ヴァルトラウト・マイアー(クリテムネストラ)アンネ・シュヴァネヴィルムス(クリソテミス)ルネ・パーペ(オレスト)フランク・ファン・アーケン(エギスト)
クリスティアーン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン、ドレスデン国立歌劇場合唱団(2014年1月28日ベルリン、フィルハーモニーでのライブ録音、ドイツグラモフォン盤)
②楽劇「エレクトラ」
ビルギット・ニルソン( エレクトラ)レオニー・リザネク(クリソテミス)レジーナ・レズニック( クリテムネストラ)ヴォルフガング・ヴィントガッセン(エギスト)エーベルハルト・ヴェヒター(オレスト)
カール・ベーム指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団(1965年12月16日ウィーン国立歌劇場でのライブ録音、ORFEO盤)

2組ともライブ録音ですがティーレマン盤は演奏会形式、ベーム盤はヴィーラント・ワーグナーの演出による実際のオペラの舞台での録音と条件が違います。またベーム盤は残念ながらモノラル録音。
さて、このオペラ大編成によるオーケストラ、そして、そこから生まれる巨大な響きに負けない声量と力量のある歌手が必要。
それから言うと2組とも見事な顔ぶれで、たいへん聴き応えがあった録音でしたが、ティーレマン盤は巧いのだが鬼気迫ると言うか、何か迫ってくるものが気薄に感じてしまった。落ち着いて聴くことが出来ました。
このオペラがドレスデンで初演されたのが1909年。初演から100年経ち、今では、すっかりオペラ劇場の定番となり、またオーケストラの技術も高くなり、難曲らしく聴こえなくなってきたためでしょうか?
逆にモノラル録音ですがベーム盤からは、何か冷静になれない熱いものが伝わってきます。指揮者のベーム自身、シュトラウスと親交があった方だけに、作品に対する思い入れが感じられ、最新録音のティーレマン盤との差は、ここからきているのでしょう。しかし、これも時代の流れ、世代も変わっていき、いたしかたないのかもしれません。
そう、今回、2組の「エレクトラ」の録音を聴いて、時代の流れというものを強く感じてしまいまいた。
ところでベーム盤はエレクトラはビルギット・ニルソン、クリソテミスにレオニー・リザネクと当時の世界最高の組み合わせで、このオペラを聴くことが出来るのは、この2人の組み合わせによるスタジオ録音がないだけに本当に嬉しい。
さてさてベームにはシュターツカペレ・ドレスデンとの1960年のスタジオ録音、そしてウィーンフィルとの1981年制作の映像があり、私は両方とも所持していますが、両方とも「エレクトラ」を語るには欠かせません。
シュトラウスのオペラでベームの録音があると、現在でも私は、どうしてもベームに行き着いてしまいます。





なお下の写真はいつもお世話になっているシフ様が、この夏、ドレスデンへ行かれた時に撮影された「エレクトラ」が初演されたゼンパーオーパー(ドレスデン国立歌劇場)の写真です。素晴らしい写真なので、たいへん申し訳なかったのですが、シフ様のブログよりお借りしました。申し訳ございません。
私自身、ぜひドレスデンを訪ねてみたいものです。




にほんブログ村

にほんブログ村






「私のお父さん」

2014年08月01日 10時32分25秒 | オペラ
この前の休みにレンタルショップで借りてきた映画「終の信託」のDVD.
末期医療をテーマにした映画。
まだまだ余韻が残っている。
答えが見つからない重たいテーマ。
私事ですが、私は高校生の時、父を病気で亡くしている。
父の最後の頃、からだ中、管(くだ)だらけ。
そして、気管にタンが詰まるので喉を切開して、そこへ管(くだ)を入れて機械でタンを吸い取るのだが、その機械の音の恐しさ。そして吸い取っている時、既に意識の無い父の体が、のけぞるのである。見るに耐えれなかった。「もう、やめて!」と心の中で叫んでいた。これは今も忘れられない。
医者から、父の命は、あと数日と聞かされていたので、医者は、こうまでして、少しでも患者の命を伸ばそうとするのかと思いました。
だから、今回、見た映画「終の信託」のDVD.
もう他人事ではない。
患者、家族、そして医師にとって、末期医療の難しさ、そして残酷さを突き付けられた映画だった。

さて、この映画ではプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」からのアリア「私のお父さん」が効果的に使われていました。

O! mio babbino caro, mi piace è bello, bello;
vo' andare in Porta Rossaa a comperar l'anello!
Sì, sì, ci voglio andare! E se l'amassi indarno,
andrei sul Ponte Vecchio, ma per buttarmi in Arno!
Mi struggo e mi tormento! O Dio , vorrei morir!...
Babbo, pietà, Babbo, pietà, pietà!

ねえ 私の大切なお父さま
わたし あの方が好き とてもステキな人なのよ
だからポルタ・ロッサへ
指輪を買いに行きたいの!
ええ そう あそこへ行きたいの
そしてもしもこの愛が儚いものなら
ヴェッキオ橋に行って
代わりにアルノ河へ身を捨てますわ!
わたし 切なくて 苦しくて
ああ 神さま いっそ死にたいくらいです!
お父さま お願いです お願いですから!

不倫に傷つき、自殺まで図った女医の折井綾乃(草刈民代)を励ますために、彼女の患者の江木秦三(役所広司)が手渡した1枚のCD。流れてきた音楽はプッチーニ作曲の歌劇「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」

役所広司が草刈民代に、このオペラを語るシーン。
オペラ好きの私にとって、たまらないシーンでした。

西洋人って人が悪いですね。
「私のお父さんを初めて聴いた時、まさか(このオペラが)喜劇だと思わなかった。
ジャンニ・スキッキという悪党の娘(ラウレッタ)が父親をおだてたり、おどしたり。
僕は純粋に恋を歌っているに違いないと思っていた。
ところが全くの喜劇だった。
(中略)
その場所(イタリアのフィレンツェ)へ行って分かることがあります。
実際に橋へ行ってみて分かりました。
橋の回廊の下にたくさん並んでいる小さい店があり、金細工の店もありますが、指輪を買うためではないのよ、身投げするためよと言って父親を、おどしている。
娘が結婚するために、父親を、おどしている、そんな歌だった。
もっとも恋愛なんて他人からみて、所詮、喜劇かもしれませんね。

今日の朝、迷うことなく?歌劇「ジャンニ・スキッキ」の全曲CDを聴きました。
レオ・ヌッチのジャンニ・スキッキ、ミレッラ・フレーニのラウレッタ、ブルーノ・バルトレッティ指揮フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団による録音(1991年録音、デッカ盤)
たしか、以前、NHK・BSで放送されたミラノ・スカラ座の公演の放送を録画したDVDがあるはず。昨晩、懸命に探したが見当たらなかった。
日頃の整理整頓の悪さを反省するばかりである。










にほんブログ村

名テノール、カルロ・ベルゴンツィ死去。

2014年07月28日 23時10分42秒 | オペラ
20世紀後半のイタリア・オペラ黄金時代を支えた名テノール歌手、カルロ・ベルゴンツィが7月25日、亡くなった。90歳だった。
イタリアオペラのテノールと言うとパヴァロッティ、ドミンゴ、カレラスの三大テノールばかりが有名ですが、私は、この3人よりもベルゴンツィの方が好きだった。
美しいテノールの声だった。大好きな声だった。
イタリアの正統ベルカント唱法による端正な歌唱と言うべきか。
ベルゴンツィのオペラの全曲盤は、いろいろと持っていますが、一番、お気に入りのCDは1990年10月20日の大阪のシンフォニーホールでのリサイタルのライブ録音です。(ビクター盤、国内盤)
今も、カタログに残っているのでしょうか?
この時、ベルゴンツィは66歳。
しかし年齢を感じさせない素晴らしい歌の数々。その語り口の絶妙さ。そして声の持つ強さと魅力。
素晴らしいイタリア歌曲の歌。
トスティの「かわいい口もと」や有名な「帰れソレントへ」と「オー・ソレ・ミオ」などは、何度、聴き直しただろうか。
イタリアの青い空を思い浮かべながら・・・。
イタリアの歌の素晴らしさを満喫するばかり。
声の持つ表現力を究極まで突き詰めた歌唱のひとつと言えると思います。
明日はベルゴンツィを偲んで、このCDを聴こう。
ベルゴンツィのご冥福を、心よりお祈りいたします。




にほんブログ村



歌劇「アラべラ」

2014年06月24日 10時01分48秒 | オペラ
一昨日の夜、私の新しい赴任先(本当は2年振りの復帰だが・・・)の歓送迎会。翌日は仕事なので、アルコールは自分自身、押さえたつもりだが、昨日の朝は、かなり厳しかった。
さて一昨日の深夜、NHK・BSで今年の4月のザルツブルク・イースター音楽祭から歌劇「アラべラ」の放送があり、しっかりと録画していました。
昨晩、仕事から帰ってきて、さっさと寝たらよいのに、夜遅くまで、一気に全曲を録画で見てしまいました。
配役はルネ・フレミングのアラべラ、トーマス・ハンプソン のマンドリーカ、ハンナ・エリーザベト・ミュラーのズデンカ、またアラべラとズデンカの両親ヴァルトナー伯爵夫妻にはアルベルト・ドーメンとガブリエラ・ベニャチコヴァーという充実した顔ぶれ。
そしてクリスティアン・ティーレマン 指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、合唱団の演奏。

歌劇「アラべラ」はR・シュトラウス作曲のオペラの中で私の大好きな作品。
美しい旋律による音楽の魅力。このオペラが「エレクトラ」や「サロメ」と同じ作曲者だとは本当に信じられない。
初演は1933年、ドレスデン国立歌劇場にて。ナチスが大頭してきて、たいへんな時代に突き進もうとしている頃に、この美しいオペラが生まれたと思うと何か言いようもない気持ちになります。

舞台は19世紀末ウィーン。
ウィーンの没落貴族ヴァルトナー伯爵は美しい娘アラべラを金持ちと結婚させようとしている。真面目な士官マッテオはアラべラに恋しているがアラべラに恋しているが、アラべラには、その気は全くない。ヴァルトナー伯爵には、もう一人、娘のズデンカがいるが、娘を二人も嫁に出すほど財力がないので、ズデンカを男として育てているが、ズデンカは秘かにマッテオを愛している。
やがてアラべラは大地主のマンドリーカと知り合いマンドリーカの素朴な心情にほだされ、彼の求婚を受ける。
その中でアラべラを忘れられないマッテオを見かねたズデンカは自分が姉のアラべラの身代わりになって彼を慰める決意をし、マッテオにアラベラとの逢瀬を手引きする。
それを偶然耳にしたマンドリーカはアラべラが裏切ったと思い大混乱となる。
しかし、全ての誤解も解け、ズデンカとマッテオを結ばれ、再びアラべラとマンドリーカは愛を誓う。

演出が19世紀末ウィーンの雰囲気が気薄だったのが、歌手やドレスデンのオケの演奏が充実していただけに残念だった。
しかし、このオペラの音楽の美しさには、いつまでも浸っていたいと言う気持ちを強くする。
特に第3幕の大詰めのアラべラとマンドリーカの2重唱の美しさは何と言ったらいいのでしょうか。

私は、このオペラの全曲を聴きたい時は1994年のメトロポリタン歌劇場の公演のDVD(ドイツグラモフォン盤)を必ず取り出して見ています。
キリ・テ・カナワ扮するアラべラの美しさ、そして舞台装置の豪華さなど見飽きることなく見続けています。
もう一つ、私が大切にしている録音があります。
ハイライトですが、このオペラから4つのシーンが収められている録音。
往年のドイツの大ソプラノ歌手、エリーザベト・シュヴァルツコップのアラべラ。ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管弦楽団による1954年の録音(EMI盤)。
シュヴァルツコップがスタジオで全曲録音してくれていたら・・・。そんなことを思うまい。
このオペラの一番美しい場面だけでも残してくれただけでも幸せと思うべきでしょう。
アラべラに扮したシュヴァルツコップの舞台姿。
気品あふれ、美しかっただろうなあ。
その他、こちらも往年の名歌手リーザ・デラ・カーザのアラべラの録音もあり、解説書ではアラべラに扮した美しい写真を見ることができます。
録音や写真が伝わってくるのは、やはり私が憧れている古き良き時代のヨーロッパの香り。
今回の放送では、舞台から、それらが、あまり伝わってこなかった。これも時代の流れかな?





にほんブログ村

もう一度、歌劇「死の都」

2014年06月20日 14時48分11秒 | オペラ
先月の半ば、NHK・BSで放送された新国立劇場でのコルンゴルト作曲、歌劇「死の都」の公演を話題にしました。
あれから、すぐに、このオペラの全曲CDを手配し、そして、やっとこさ手元に届いたのでさっそく聴いてみました。

舞台はベルギーの古都ブルージュ。
愛する妻を亡くした主人公パウルが妻とそっくりの踊り子の女性と出会い、死んだ妻と亡き妻とそっくりの生身の女性の間で倒錯の時を過ごす物語を幻想的に描いた作品。

演奏はエーリヒ・ラインスドルフ指揮ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団、テルツ少年合唱団。
主人公パウルはルネ・コロ、そしてキャロル・ネブレット、ヘルマン・プライと言う素晴らしい歌手の顔ぶれ。
1975年、ミュンヘンでのセッション録音。
今回、映像なしの音楽だけで聴いてみると、音楽の美しさがストレートに伝わってくる。
美しく、時には甘い旋律、そして豊かに響くオーケストラの響き。
正に後期ロマン派の熟し切った作品と言うべきか。
そして何といっても主人公のパウルを歌うテノールのルネ・コロの美しい声!
ルネ・コロの美声には、本当にしびれるものがあります。
録音当時、ルネ・コロは38歳。本当に、いい時期に、このオペラを録音してくれたものと感謝するばかり。
機会があればウィーンフィルで聴いてみたいものである。
それも小澤征爾の指揮だったら・・・。これは、もう実現不可能だろう。
それにしても、今回、このオペラの全曲CDを聴いてコルンゴルトの作品にハマりそうである。

さて、テレビで放送された新国立劇場での公演のゲネプロの映像を見つけました。
少しでも、このオペラの魅力が伝われば幸せです。






にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へにほんブログ村




今年はR・シュトラウスの生誕150年

2014年06月12日 10時21分38秒 | オペラ
今年はドイツの大作曲家、R・シュトラウスの生誕150年の節目の年。
私が初めてR・シュトラウスの作品を聴いたのは高校1年生の時。FMで放送されたカラヤン指揮ベルリンフィルによる来日公演での交響詩「英雄の生涯」の演奏。
びっくりした。美しさと豪快さ。それまで聴いたことがない世界を知ってしまったというのが実感であった。
R・シュトラウスと言えば多くの方は交響詩「英雄の生涯」や「ツァラトウストラはかく語りき」と言ったオーケストラ作品の人というイメージが強いでしょうが、私にとっては、やはりオペラと歌曲の人である。
R・シュトラウスの作品を聴きたくなったら私は、どうしてもオペラのCDに手が伸びてしまいます。
「英雄の生涯」や「ツァラトウストラはかく語りき」のCDよりも楽劇「ばらの騎士」や「サロメ」のCDの方が多いのも私らしいかもしれません。
R・シュトラウスのオペラに目を向けたのは東京での大学生時代の時。
銀座のヤマハホールで見た1960年のザルツブルグ音楽祭での楽劇「ばらの騎士」の公演の映像。
エリザベート・シュヴァルツコップのマルシャリン、セーナ・ユリナッチのオクタヴィアン、アンネリーゼ・ローテンベルガーのゾフィー、そしてカラヤン指揮ウィーンフィルの演奏。
あまりの美しさに驚き、そして第三幕フィナーレの女声による三重唱は聴いていて恍惚感すら感じました。
翌日、手持ちのお金をかき集めてレコード店に走り、「ばらの騎士」の全曲レコードを買ってしまいました。確か1万円前後したはず。
それからR・シュトラウスのオペラをいろいろ聴いていったのですが、驚かされたのは「エレクトラ」と「ばらの騎士」の初演は、2年しか違わないということ。
本当に同じ作曲家の作品と思うほど全く違う世界、そして音楽。
ここがR・シュトラウスの作品を聴く面白さかもしれません。

さて最近、超お買い得のR・シュトラウスのオペラのセット物が届きました。
「エレクトラ」「ナクソス島のアリアドネ」「影のない女」「ダフネ」の全曲が10枚組のCDのセットで1800円だった。そして指揮は全てカール・ベーム!
特に「影のない女」は1955年、デッカによるセッション録音のもので、私が聴きたくてしかたがなかった録音。すぐに飛びついてしまいました。
まだ第3幕しか聴いていませんが、ベームのこのオペラに対する思い入れが伝わってくるようで素晴らしい演奏。
そして圧巻なのは「エレクトラ」
この録音は1960年、ドイツグラモフォンによるドレスデンでのセッション録音。
久し振りに聴きましたが圧倒されました。
インゲ・ボルクの歌うエレクトラ!そしてシュターツカペレ・ドレスデンの響き!けっして大音響を鳴らしまくる響きではありませんが、オペラが進むにつれて、ベームの指揮のもと、その渋みのある響きが迫力を増していく様は本当に凄い。
シュターツカペレ・ドレスデンによる「エレクトラ」は、ティーレマン指揮による新録音のCDが発売予定で、すでに予約を入れているので、ベーム盤との聴き比べが楽しみです。

最後に私のR・シュトラウスの好きなオペラのベストスリーを掲げておきます。
「エレクトラ」「アラべラ」そして「ばらの騎士」
しかし「ナクソス島のアリアドネ」と「影のない女」も気になります。






にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へにほんブログ村








歌劇「死の都」

2014年05月18日 15時35分13秒 | オペラ
先週の日曜日の深夜。NHK・BSで今年の3月、新国立劇場でのコルンゴルト作曲、歌劇「死の都」の公演が放送されました。

舞台はベルギーの古都ブルージュ。
愛する妻を亡くした主人公パウルが妻とそっくりの踊り子の女性と出会い、死んだ妻と亡き妻とそっくりの生身の女性の間で倒錯の時を過ごす物語を幻想的に描いた作品。

歌劇「死の都」は私にとって、この数年、気になっていた作品。きちんと全曲を聴いてみたいと強く思っていたオペラ。
しかし、たいへん気になっていた作品ですが、まだCDを意識的に入手していなかった。
やはり歌詞をキチンと理解しながら、このオペラに接したいと言う気持ちが強かった。
CDやDVDをネットで入手するのは簡単ですが全て輸入盤。日本語訳がないというのがネックだった。
たとえ国内盤のCDがあったとしても、小さな解説書での細かい文字を追いかけるのは辛い年齢となってしまった。
私がオペラに興味を持った頃はLPレコードの時代。
しっかりとした作品の解説と対訳の説明書が付いていたので、対訳で追いかけながら聴いていたので、私にとっては、しっかりとした聴き方が出来ました。
確かにCDの時代になり、価格的に安くなり、お手軽になりましたが、オペラのCDに関しては、ある意味では辛い時代になったのかな?
大昔、初めてワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の全曲盤を手にした時、解説書の分厚さに、たいへん驚きましたが、難しい部分もあり、分からないながらも、全て読んでからレコードに針を落としたものです。
もう、こんなことは出来ない時代になってしまった。私がオペラの全曲盤のレコードを今も手は放さないのは、レコード本体よりも日本語訳が付いた解説書にあるのかもしれません。

さて、今回放送された新国立劇場の公演。素晴らしかったと思います。
たいへん凝った舞台装置。効果的な照明。衣装の美しさ。
こんな素晴らしい公演が日本で行われていたとは驚きです。
そして最近、再評価されてきたコルンゴルトの音楽。
後期ロマン派の作風でR.シュトラウス、マーラーを思わせる音楽。
美しく、時には甘い旋律、そして豊かに響くオーケストラの響き。
歌手も実力者を揃えていて、私にとって、今回の放送は、このオペラの全容をしっかりと掴むことが出来たと思っています。
次は全曲CDを手に入れて、映像なしで、しっかりと音楽だけで聴いてみたいと思います。
歌劇「死の都」は1920年、作曲者23歳の時に発表された作品。
カール・ベームやオットー・クレンペラーは、このオペラを指揮したのだろうか?
ベームはハンブルク時代、このオペラを歌劇場の演目に加えたらしい。
そんな思いをしながら、このオペラを聴くのも、私が年齢を重ねていったためでしょうか?





にほんブログ村