休めないのは大変だが、逆転して考えれば仕事があるだけ有り難い…と喜ばないといけないのかも知れない。働きたくても働けない人もいるからだが、休めない人々の存在は、休むことも人として大事だということを忘れている。結果は過労死とかになる。休んで楽しむ人がいるから、そのために働く人の出番がある訳で、休めない人で世の中が満(み)ち溢(あふ)れれば、働く人の出番もなくなり、働くことの意味がなくなるのだ。いや、それだけでは留(とど)まらず、負のスパイラル[渦(うず)巻き]で働く仕事もなくなってしまうことになる。回り諄(くど)いから、分かりやすい話を一つ紹介することにしよう。
ここは、とある工場の生産ライン現場である。
「桶丸(おけまる)さ~ん! すみませんねぇ。明日もお願いできないでしょうか?」
「いいですよ。大した楽しみもありませんから…」
桶丸は快(こころよ)く主任の多織(たおる)の頼みを聞き入れた。工場の他の工員達は、影で桶丸を[休まない男]と揶揄(やゆ)していた。真実を言えば、桶丸が休まない訳ではなく、やすめなかったからである。というのも、桶丸は頼(たの)まれれば嫌(いや)! と言えない性格だったから、どうしても人員不足の代替要員にされがちだった訳だ。桶丸のそんな性格が桶丸を休めない人にしたのである。
休む気のない人は利用されて逆転し、休めない人になるから、かわいそうな人になるのだ。休めない人に神仏のご加護あらんことを…。
完