正月休みが終わり、屠蘇(とそ)気分でグデェ~ンとしていた枯居(かれい)にも、出勤が明日(あす)に迫(せま)っていた。明日からの出勤だという前日にもかかわらず、妙にテンションが上がった枯居は、何の目的もなくフラリと街頭へ出た。そこでバッタリ! と出合ったのは、故郷の幼馴染(おさななじ)み、平目(ひらめ)だった。
「おおっ! 平目じゃないかっ!」
「枯居かっ! 久しぶりだなっ! こんなとこで出会うとは…」
二人の外見は対象的で、枯居は普段着とサンダル履(ば)きで飛び出したものだから貧相な格好だったが、平目は高級スーツ、高級靴に身を窶(やつ)していた。枯居は内心で、『こいつも、かなり出世したなっ!』と思った。逆に平目は、『こいつも、俺と同じ、鳴かず飛ばずか…』と思った。ところが事実は逆転していたのである。明日に出勤が迫っていたとはいえ、枯居は会社の重役だったから自動車のお出迎えで、平目は明日から土木作業の現場が待っていたのだ。
人は外見で判断できない・・という話だが、外見は美女、イケメンの方がいいのは逆転しない事実ではある。
完