水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

逆転ユーモア短編集-66- 軽微(けいび)なルール

2018年01月01日 00時00分00秒 | #小説

 世の中の動きを知るのに役立つのが軽微(けいび)なルールである。もちろん、どこまでが許される範囲なのか? という線引きは難(むずか)しいのだが、概(がい)して法律の定めを自分の意思で破るか、あるいは守らないか・・という程度と見るべきだろう。世の中でルールが無視されれば、社会は混乱し、悪化の一途(いっと)を辿(たど)ることになる。それがたとえ軽微なルール違反だったとしても、━ 塵(ちり)も積もれば山となる ━ の格言どおり、軽微が逆転して大ごとになるという、とんでもない社会が到来(とうらい)することは必死だ。つい、うっかり…ならまだしも、意思のあるポイ捨てや信号無視は決して許されるべきものではない。
「石田さん、駄目ですよっ! ルールは守らないとっ! 危ないじゃないですかっ!」
 思わず赤信号を渡ってしまった石田を叱責(しっせき)したのは福島だった。
「そう、目くじらを立てるほどのこともないでしょ。車も通ってないんですし…」
 石田は、さほど悪びれる様子もなく、福島へ返した。
「その軽微なルールを守るか守らないか・・が大事なんですよっ!」
 福島の発想は石田と逆転していた。西暦1600年、東西両軍はついに関ヶ原にて激突したのである。

                               


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