ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

米中の貿易戦争をアメリカ人は支持している

2018-04-08 13:57:32 | 経済

3月下旬からトランプ大統領が仕掛けて米中貿易戦争の様相を示している。最初は鉄鋼とアルミに関税をかけるという話で、これは中国だけでなく世界中が対象となっていた。欧州は対抗措置を発表して反発し、適用除外となったが、日本はそのまま関税対象となっている。この関税は既に実施されている。さらにアメリカは中国が知的財産を侵害しているとして「1300項目の関税5000億ドル相当を検討する」と発表した。実施はまだ先である。これに対して中国は鉄鋼とアルミに対する対抗関税を発表し既に嫉視している。更に1300項目に対する対抗措置として106項目の関税(金額としては同額)を発表している。トランプ大統領はこれを受けて中国に対して「さらに1000億ドルの関税上積みを検討する」と発表しており、中国も対抗措置を発表している。第3ラウンドまで入ってきたのでこのままエスカレートして貿易戦争に突入するリスクがある、と株価は大幅に下がっている。

日本では識者が貿易戦争は「アメリカのためにもならない」と言っている意見が多く報じられているし、アメリカ国内でも、特に経済界はこの措置に反対であると報じられている。私自身もこれはアメリカのためにはならないし、中国と貿易戦争をしたら負けるのはアメリカだと思っている。その理由はアメリカよりも中国のほうがはるかに政府の権限が強く、様々な手を打てるとことである。

本当にアメリカ全体が反対なのかどうかは疑問だと思っている。こういう問題は利益を得る人と損失を被る人が居るので、当然賛成者と反対者の意見が分かれる。日本ではそのうち反対者の意見ばかりが報道されている印象である。これはカエサルの言葉にある「人は見たいものしか見ようとしない」という現象の表れで、日本のメディアのレベルの低さを示しているのではないだろうか。実際、トランプ大統領の支持率は3月下旬から下がるというより上がり気味だという。トランプ氏はアメリカのためを思うよりも支持率を上げるためにやっているのだから、支持率が上がるならもっと激しくやるだろう。実際に中国の反撃を受けて景気が悪化して初めて、反対の声が強くなるのだろうと思っている。それまでの間(おそらく半年ほど)にどこまでエスカレートするかが問題である。

日本政府にしても日本の経済界にしても「貿易戦争はアメリカのためにならない」というのは良いが、実際にトランプ大統領が日本の意見を聞くと思ってはいないだろう。その場合にアメリカが日本にとっては好ましくない行動に出る可能性は高く、その際どういう行動をとるのが良いかはよく考えておく必要があるだろう。日本もヨーロッパのように関税の対抗措置を行なえば、「日本はアメリカには逆らわない」と思っていたアメリカの政府関係者も驚くかもしれない。結果としてアメリカが矛を収めるのが早まるかもしれない。それが日本にとって良いやり方かどうかは自信は無いが、少なくとも「人は見たいものしか見ようとしない」という態度からは脱却してありのままの現実を見つめて対応策を練るべきだと思っている。


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5 コメント

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メディアの選択は「良いコンテンツ」できまる (ウィトラ)
2018-04-10 16:25:15
雑誌を買うときに判断の基準となるのは「良くない記事が含まれていない」ではなく、「面白い記事が含まれている」だと思います。「良くない記事があるからそれを買わない」というのはよほど潔癖な人で、そんな人は稀だと思います。
メディアは「一部の人にでも良いから深く刺さる記事を増やそう」というのが基本姿勢だと思います。特に新聞や雑誌などの複数のコンテンツをパッケージで提供しているメディアはこの傾向が強く、週刊誌はこの典型だと思います。それを「よくない記事に対する自己反省」を期待してもまず実行されることはないと思います。反省を促すにはネットなどで叩くしかないでしょう。
テレビは番組ごとの視聴率で評価されるので「平均的に当たる」ことを目指して、ブームになると皆それを取り込もうとする傾向があり、これはこれでつまらない感じがします。いずれテレビもインターネットにとって変わられると、再び「大ヒット」と「一部の人に深く刺さる」コンテンツが重要になってくるでしょう。ネットの場合には製作者のブランドが重要になってくると思うので世田谷の一隅さんが期待するような傾向が出るかもしれませんね。
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メディアの評価 (世田谷の一隅)
2018-04-10 14:43:39
私が懸念したのは、読みを間違った企業は市場から追放されるべきと言うわけではありません。

事業の「読み、見通し、それに基づく投資」等が外れたら、市場から、それなりの評価があり、低落した評価、事業成績に基づき、事業戦略・戦術が見直されるのが一般の事業会社です。売上、利益、再投資と言う形で持続されます。

マスコミの場合は、どんなに「読み、見通し、意見」が、その後の動きから判断して、「間違っていても」、その顧客から評価し続けられるのであれば、軌道修正は難しいのが、私の嘆きです。

朝日新聞はサンゴ事件や、慰安婦報道、教科書認定など、世論を或る方向へ意図的に導こうとして、事実を隠したり、嘘を報道した「実例」があります。一時的に反省を表明しても、報道の姿勢は変わってない様に見えます。発行部数も大きく落ち込んでいません。

これだけの誤報事件を自ら招いたメディアは、本来であれば大きな顧客離れを伴うと思いますが、それが見られません。

もう一つの例は、自衛隊の取扱いです。

憲法の文面を文字通り読めば、発足時点から自衛隊は憲法が禁じる「軍備」に当たります。多くのマスコミは発足段階で、それを指摘してきたはずです。それを政権政党の「解釈」で「合憲として押し切り、現在に至っています。現在では大多数の国民が自衛隊の存在と役割を納得し支持しています。つまり、昭和20年代に多くのマスコミが「違憲」と見做した考えでは、実際には国民の安全と安定をもたらさなかったと考えることができます。この点に対する反省も見られません。

事業会社であれば、特に大きな上場企業であれば売上・利益と言う形で、「市場の評価に晒され」ます。

ところがマスコミ・メディアは、売上、利益と言う形ではなく視聴率シェア、発行部数等の数字で評価されることが中心です。どの政策を取るべきだったとか、どちらへ進むべきだったとの国論を二分するような場合の結果を後の段階で自己評価する事が無ければ、政党や他の事業会社の振舞を評論するのは、説得力がないと思います。

今までに、雑誌、出版会社は淘汰されつつあります。これはウィトラさんが言うように、媒体自体が、時流に合わなくなってきている為です。これはフィルム業界が衰退して電子メディアに置き換わりつつある流れと同じです。経営陣が好むと好まざるにかかわらず、「市場の流れにあっているかどうか」で事業の結果に現れます。

私が指摘しているのは、マスコミの場合は、その主張がどの程度正しかったのか、検証できるものは少なくとも自らの手で検証して欲しいと思っていることです。それができないのであれば聴取者、読者が離れることにより、市場での勢力衰退とならざるを得ないと思います。
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メディアの淘汰はよほどの事態 (ウィトラ)
2018-04-10 09:19:29
世田谷の一隅さんのメディアの淘汰に関する考え方には私は違和感を感じています。
以前朝日新聞の誤報の時にも同じような意見を書かれていたと思いますが、大手メディアが事業として成立するためには全員の賛同を得る必要は無く、一定数(国民の1割もあれば十分)の賛同があれば事業が継続できます。
メディアが淘汰されるとは事業継続が困難になるということを意味していると思いますが、それはよほどひどい状況で国民から総スカンを食らったときに限られるでしょう。そうならないように面白い記事も配信するように努めているので淘汰はなかなか怒らないと思います。
もしも勢力図が変わるとすればそれは新興メディアが台頭してきたときでしょう。メディアの新陳代謝を目指すには、「新しい良いメディア」を紹介するのが現実的だと思います。
UCSさんの言われるカエサルの言葉はそれほど深くとらえなくても「明らかなのに、それが見えない」ということは良くあります。このままではうまくいかないのは明らかなのに行動を変えようとしない、ということです。
例えば、カメラのデジタル化は明らかで、フィルムは売れなくなることは分かっていても、デジタル時代に対応する方法が見つからないと「我々はフィルムで頑張るしかない」「フィルムはまだまだ売れる」と主張する経営者が多いようなケースです。
富士フィルムだけは新しい方向に展開する道を見つけたのだが、新しい方向性を見つけられないと、上記のような言い方をする経営者は実に多い。カエサルの言葉はこのような現象を言っていると解釈しています。
「好ましくないことが起こりそうだが、自分には対応策が見つからない」という状況の時に、最初は「好ましくないことは起こらないでほしい」と思うのだが、そのうち「好ましくないことは起こっていない」というようになるという人間の心理を突いていると思っています。
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メディアの振舞と評価 (世田谷の一隅)
2018-04-09 12:33:19
このブログで意見を表明しているウィトラさんやUCS301は、(私を含めて)、メディアの自覚のレベルと責任感の薄さを嘆いているのが共通点の様です。

確かに、昨今、大衆受けするような施策やスローガンを打ち出して華々しく立ち回る政治屋が増えているように思います。マスコミも、その方が「話題になりやすいので記事にする」ことが多い様に見受けます。

いわゆるポピュリズムの台頭で、アメリカ、ドイツ、フランス等でも、この傾向が見られます。或る意味で民主主義の弱点です。つまり、目先のエゴイズムに左右されてそれが数となって世論を形成すると、中長期的には危ない方向が指向されかねないのが歴史的な事実です。そうなると民主主義よりも、言論統制の厳しい専制政治の方が、国論としては制御しやすいこととなり、結果的には民主主義が衰退する事が歴史的な実例です。

良識あるマスコミは、本来、そのような経験や動向を踏まえて報道する事を(私は)期待するのですが、残念ながら、世論を煽ることを目指すグループの方が今のマスコミの主流を占めていますね。

これらのマスコミの連中を、誰が、どの様に評価して、その結果に基づき、どの様に「淘汰するのか、されるのか」が私は気になります。
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「見たいものしか見ようとしない」とは… (UCS-301)
2018-04-08 18:31:51
カエサルの言う「人は見たいものしか見ようとしない」という意味は、”意識的に見たいものだけを見る”と言うよりも”無意識に見たくないものを見ない”の方が近いのではないかと思っています。見たくないもの(つまりは目に止まらなかったもの)を見る(見えるようにする)には殊更見たくないものを注目する必要があります。洗脳から脱却するには、洗脳されている可能性を疑う(意識する)必要があるのと同様です。

日本のメディアはよもや反対側の意見があろうとは気付いてもいないのではないでしょうか(もしくはメディア側が絶対正義だと勘違いしているか…)。意識外のものを意識の内に取り込むのはなかなか難しいことだと思います。

最近の政治がらみの報道を見るにつけても、もはや日本の(日本に限りませんが)メディアは見るに耐えません。報道に関してすら脚本ありきとなっています。
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