真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「従軍慰安婦」 と軍医 麻生徹男

2012年03月26日 | 国際・政治
 戦地で問題とされた性病は、当時「花柳病(カリュウビョウ)」と呼ばれていたようである。かつて花柳界で蔓延したからだという。下記は「上海から上海へ 戦線女人考 花柳病の積極的予防法」兵站病院の産婦人科医 麻生徹男(石風社)から抜粋したものである。「はじめに」と題して『「好人不當兵」私達日本人は中国にとって善き隣人ではなかった。我が国振りの国民皆兵を思い、又1937年の南京に想いを馳せるなら、一億の大和民族之れ皆戦犯である。…』という麻生徹男本人が、タイプ印刷で出版した「戦線女人考など」の序文が入っている。こうした視点があったから公開された資料であろうが、花柳病のみならず、「慰安婦」に対する当時の実態や考え方を知ることの出来る貴重な資料だと思う。

資料1 
 2の「娼婦」の項目では、彼が調べた「半島婦人80名、内地婦人20余名」のうち朝鮮人(半島人)「娼婦(従軍慰安婦)」は、皆若く花柳病は極めて少ないが、日本人の「娼婦(従軍慰安婦)」は、花柳病の「急性症状」こそないが、大部分が20歳を過ぎた経験者であり、「既往花柳病ノ烙印ヲオサレシ、アバズレ女ノ類ハ敢ヘテ一考ヲ与ヘタシ。此レ皇軍将兵ヘノ贈リ物トシテ、実ニ如何ハシキ物」である、と非難している。そして、「戦地ヘ送リ込マレル娼婦ハ年若キ者ヲ必要トス」というのである。そこに多くの朝鮮人少女が、その被害者となった理由が存在するといえる。

 なぜなら、それは、昭和13年2月23日内務省警保局長が「各庁府県長官宛(除東京府知事)」に出した「支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件」(内務省発警第5号)で「醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ハ、現在内地ニ於テ、娼妓其ノ他、事実上醜業ヲ営ミ、満21歳以上、且ツ花柳病其ノ他、伝染性疾患ナキ者ニシテ、北支、中支方面ニ向フ者ニ限リ、当分ノ間、之ヲ黙認スルコトトシ……外務次官通牒ニ依ル身分
証明書ヲ発給スルコト
」としていたからである(「従軍慰安婦」政府・軍関係資料 NO1)。世論を配慮し、日本内地から海外に慰安婦を送る場合にのみ、国際条約に沿うかたちで、こような制限を加えていたのである。だから、それを「日本人女性の貞操を守るために、朝鮮人少女を身代わりにした」と指摘する論がある。

 3の「検黴」(ケンバイ、梅毒=黴毒、その他の花柳病感染の有無を検査すること)の項目では、検黴とともに、「検黴ノ後ニ来ル治療ノ徹底」の重要性を主張している。また、「軍用特殊慰安所トシテ建造」され、「各室ニ洗滌所(アエンジョウジョ)ヲ有シ、切符発売所、出入口其ノ他ノ諸設備」のある、統制下の「妓楼」は罹患率は極めて少ないと報告している。さらに、「検査、監督ノ位置ニアル者ノ個人的登楼或ヒハ接娼ノ如キハ一考ヲ要ス可キ問題ナリ。マシテ其ノ職権ヲ濫用シ其ノ間何事カ画策スル所アルハ遺憾千万ナリ」と、問題ある実情を指摘している。

 4の「アルコール飲料」の項目の結論は、『小官ハ此ノ見地ヨリ軍隊内ニテ最小限度ノ酒ノ消費セラレン事ヲ切望スルモノナリ。増シテ今日マデ軍隊内諸事故ノ大部分ガ所謂「酒ノ上カラ」ナル事実ハ此ノ確信ヲ益々強固ニスルモノナリ』であろうが、それに続けて「軍用特殊慰安所ハ享楽ノ場所ニ非ズシテ衛生的ナル共同便所ナル故…」という表現が出てくることを見逃すことが出来ない。

 6の「花柳病ノ認識」では、「軍隊内ニ於ケル性教育ノ徹底ハ重且ツ大ナル問題ナリ」が結論ではないかと思う。「軍用慰安所ノ娼婦ハ常ニ監督指導スルヲ必要トス」や「更ニ彼女等ノ用益者タル男子側ニ於テモ其レヨリモ一層ノ認識ヲ必要トス」というのである。

 8の「患者ノ取扱」でも、「検黴」の項目と同じように問題ある現実を明らかにしつつ、理不尽な「花柳病士卒ノ特典」について「実ニイマイマシキ限リナリ」と怒りをあらわにしている。

資料2
 付録資料の「陣中日誌」にも、下記のような、花柳病に関わる問題の指摘や講演の記述がある。

資料3
  なお、同書には、『麻生徹男「従軍慰安婦資料」をめぐって』と、題する「天児 都」(著者軍医麻生徹男の二女)の付録がついている。そこに上記「半島婦人80名、内地婦人20余名」について、下記のような重要な記述がある。
 
注:いくつか読み仮名(括弧内の半角カタカナ)をつけた。
資料1------------------------------
                  軍陣医学論文集
 一 花柳病ノ積極的豫防法

1、緒言 


2、娼婦
 昨年1月小官上海郊外勤務中、1日命令ニヨリ、新ニ奥地ヘ進出スル娼婦ノ検黴ヲ行ヒタリ。
コノ時ノ被験者ハ、半島婦人80名、内地婦人20余名ニシテ、半島人ノ内花柳病ノ疑ヒアル者ハ極メテ少数ナリシモ、内地人ノ大部分ハ現ニ急性症状コソナキモ、甚(ハナハ)ダ如何(イカガ)ハシキ者ノミニシテ、年齢モ殆ド20歳ヲ過ギ中ニハ40歳ニ、ナリナントスル者アリテ既往ニ売淫稼業ヲ数年経来シ者ノミナリキ。半島人ノ若年齢且ツ初心ナル者多キト興味アル対象ヲ為セリ。ソハ後者ノ内ニハ今次事変ニ際シ応募セシ、未教育補充トモ言フ可キガ交リ居リシ為メナラン。
 一般ニ娼婦ノ質ハ若年齢程良好ナルモノナリ。

 福岡県ニ於ケル年齢40歳マデノ調査ニテ、20歳以下ノ者ノ数ハ

 芸妓 56.3% 娼妓 29.1%   酌婦 44.6%  女給 46.5% 


 ヲ示セリ。即チ娼婦ノ約半数ハ年齢20歳以下ノ者ト言フヲ得ベシ。故ニ若年ノ娼婦ニ保護ヲ加ヘル事ガ重要ニシテ、意義アル事ナリ。サレバ戦地ヘ送リ込マレル娼婦ハ年若キ者ヲ必要トス。而シテ小官某地ニテ検黴中屡々(シバシバ)見シ如キ両鼠蹊部(ソケイブ)ニ横痃(オウゲン)手術ノ瘢痕ヲ有シ明ラカニ既往花柳病ノ烙印ヲオサレシ、アバズレ女ノ類ハ敢ヘテ一考ヲ与ヘタシ。此レ皇軍将兵ヘノ贈リ物トシテ、実ニ如何ハシキ物ナレバナリ。如何ニ検黴ヲ行フトハ言ヘ。

 一応戦地ヘ送リ込ム娼婦ハ、内地最終ノ港湾ニ於イテ、充分ナル淘汰ヲ必要トス。マシテ内地ヲ喰ヒツメタガ如キ女ヲ戦地ヘ鞍変ヘサス如キハ、言語同断ノ沙汰ト言フ可シ。
 此レト類似セル問題トシテ現地支那ノ娼婦及ビ難民中ノ有病売淫者ヘノ黴毒性疾患ノ浸潤驚ク可キモノアルガ如シ。此レ等ニ対シテハ軍トシテ若シ必要ナラ軍用慰安所トシテ我ガ監督下ニ入ルゝカ、然カラザル者ニ対シテハ断乎トシテ処置ス可キナリ。独乙「ケルン市ノ守備兵間ニ一時花柳病ガ蔓延シ、特ニ厳重ナル検黴モ効果ナク罹患者22%ト言フ高率ヲ示セリ。此レ即チ私娼ノ跋扈ニヨルモノナリキ。
此ノ為メ該市ニテハ英米ノ先例ニナラヒ女警官ヲ置キ、コノ粛正ニアタラシメ著効ヲ奏シタリト言フ。ココニ注意ス可キハ支那娼婦ノ内或ル者ハ予防法殊ニ「コンドーム」ノ使用ヲ忌避シ、其ノ甚シキハ之レヲ破棄スト。此レ敵ノ謀略ニヨリ戦力ノ消耗セラルゝト同一結果タリ。


3、検黴(ケンバイ) 
 花柳病(カリュウビョウ)蔓延、容易ナル伝染及ビ其ノ撲滅ノ困難ナル重大原因トシテハ淋疾ノ根治シ難キニアリ。シカモ此レガ一度ビ婦人ノ下腹諸臓器内ニ喰ヒ込ミシ場合ヲ考ヘンカ、思ヒ半バニ過ギルモノアラン。サレバ検黴ハ無効ノモノナランカ。今日マデノ文献ニ徴スルニ所謂検黴制度ヲ有スル公娼ト密淫売ヨリ受クル感染率ハ両者相伯仲(アイハクチュウ)シ、アタカモ検黴無用論ヲ証明セル如キ感アリ。サレバ小官ハ今此所ニ検黴ニツキ一考察ヲ与ヘ見ン。


 ・・・(4行略)
 
 然ルニ、1908年「ヘヒト」ハ其ノ売淫者ノ一小部分、即チ僅々(キンキン)5%、或ハ10%ニシカ及バザルガ如キ検黴ハ全ク無用ナリト唱ヘ出セリ。彼ノミナラズ今日ニテモ無用論ヲ唱ヘル者少シトセズ。彼等ハ登録娼婦数ハ売淫婦全体数ニ比シ全ク少数ナリト言ヘリ。数ノ判明セル、伯林、「ケルン」、巴里市等ニテハ、此レ等密淫者ハ公娼ノ7乃至(ナイシ)10倍ニ達セリト。恐ラク今日ノ日本内地ニテモ同様ナラン。然カモ今戦地ニテモ其レト類似セル現地密淫者ノ出没ヲ認メ得ルモ、大局ヨリ見
軍ハ其ノ統制下ニ置ク特殊慰安所ヲ設置スル故、此ノ検黴用論(ママ:検黴無用論)ハ全ク適用サレズ、且ツ最近ノ報告ニヨレバ「ニユルンベルヒ」及ビ「ボヘミヤ」ニテ、頻回ナル検黴ガ効ヲ挙ゲタリト言フ。而シテ検黴ガ有効ナリトテモ、其ノ当ヲ得ラズバ更ニ一歩進メル弊害ヲ生ム。即チ検黴効果ノ衛生的全幅的発揚ヲ望マバ其ノ後ニ来ル罹病者ノ隔離、治療コソ必須ノモノナレ。此レヲ伴ハザル検黴ハ全ク有名無実ノ甚ダシキモノナリ。小官ハ某地在勤中此ノ点痛切ニ感ゼシモノナリキ。此ノ頃マデハ軍ニハ此レニ対スル一定ノ方針無ク、唯出来得ル所ニテハ大都市ニアル地方人医院ニ治療ヲ依頼スルニ止マリ居レリ。其ノ後1年有半ハ過ギ小官モ該検査ヨリ遠ザカル事永キニ亘ルヲ以ツテ目下ノ状況ニハ詳(ツマビ)ラカナラザルモ、此ノ検黴ノ後ニ来ル治療ノ徹底無キトセンカ、ソモ検黴ハ何ノ為メゾ。宜シク軍ハ此ノ為メニモ一ツノ確タル統制ヲ必要トス。

 次ギニ有リ得ベカラザル事ナルガ検黴ノ弊害トシテ見逃セ得ザル一事アリ。即チソノ検査者ト営業者乃至被検査者間ノ情実問題ナリ。コノ有名ナル例トシテ欧州ニテハ「リール事件アリ。蓋(ケダ)シ闇ノ世界ノ背後ニ立ツ者ハ時ニ悔ル可カラザル権力ヲ有スル事アリ。少クトモ軍用特殊慰安所内ニテハ、カクノ如キ事実ハナシト思フモ、吾人ニハ之レヨリ教ヘラルゝル事ハ多々アリ。即チ検査、監督ノ位置ニアル者ノ個人的登楼或ヒハ接娼ノ如キハ一考ヲ要ス可キ問題ナリ。マシテ其ノ職権ヲ濫用シ其ノ間何事カ画策スル所アルハ遺憾千万ナリ。又単ニ好奇心ヲソソリ、其ノ道ニ全ク無定見ノ者、検査ヲ行フ如キハ言語道断ト言可シ。
更ニ娼婦ノ検査ト共ニ妓楼ノ検査モ必要トス。


 小官某地勤務中2ヶ所ノ妓楼ノ検査ヲ行ヒタルガ其ノ一ツハ新ニ軍用特殊慰安所トシテ建造セル、「バラック式家屋ニシテ各室ニ洗滌所(センジョウショ)ヲ有シ、切符発売所、出入口其ノ他ノ諸設備殆ンド理想ニ近ク、他ハ支那家屋ヲ利用セルモノニシテ其ノ室区分、洗滌所等ノ諸設意ノ如ク行カズ、果セル哉其ノ開設后両地ニテ罹患セリト称スル患者ハ極ク少数ナリトハ言ヘ、其ノ後者ニテ殆ンド占メラレアリシハ注目ニ値ス。斯クスル事ニヨリテ検黴ノ成績ハ統制下ニアル軍用妓楼ニ於テハ挙ゲ得ルモノナリ。
然レドモ其ノ成績ヲ過信シ、一般兵間ニ売淫ノ危険ヲ軽視サス可カラズ。


4、アルコール飲料
 ・・・(11行略)
 …軍隊ノ娯楽ヨリ「アルコール」ヲ遠ザケレバ、著シク花柳病ガ減少スルトハ英国ノ軍隊ノ統計ガ示セリ。…之ニヨレバ「アルコール」ニ因ル疾病ガ減少セバ、花柳病亦減少スルガ明白ナリ。又「ストツダート」ノ報告ニヨレバ、「マサツユセット州ニテハ禁酒令発布以来花柳病ノ数ハ低下セリト。「イクテマン」ノ報告ニヨレバ「レイニングラード」ノ花柳病伝染ノ25.0%ハ飲酒ノ結果ナリト。然ルニ一方米国ノ軍隊ニテ1900年以来酒保ニ於テ「アルコール飲料ヲ全ク厳禁シタル結果、士卒ハ止ムナク酒場ヤ、「カフェー」ニ行ク状態トナリ、却ツテ花柳病ノ増加ヲ見シト言フ、此ノ点細心熟慮セザレバ竜頭蛇尾ノ類トナル。何レニセヨ花柳病ノ伝播ニ「「アルコール」ハ重大ナル役割ヲ有スル事実ハ何人モ否(イナ)ムヲ得ズ。然カモ一旦花柳病ノ経過ニ及ボス「アルコール」ノ影響ヲ考へ見ルナラ、其ノ思ヒ半バニ過グルモノアラン。
小官ハ此ノ見地ヨリ、軍隊内ニテ最小限度ノ酒ノ消費セラレン事ヲ切望スルモノナリ。増シテ今日マデ軍隊内諸事故ノ大部分ガ所謂「酒ノ上カラ」ナル事実ハ此ノ確信ヲ益々強固ニスルモノナリ。

軍用特殊慰安所ハ享楽ノ場所ニ非ズシテ衛生的ナル共同便所ナル故
、軍ニ於テモ慰安所内ニテ酒類ノ禁止サレアルハ寧(ムシ)ロ当然ノ事ナリ。然レドモ小官慰安所監視中屡々酒類飲用ノ跡ヲ見シハ甚ダ遺憾トスル所ナリ。此ノ為メニモ営業者ノ監視、娼婦ノ監督、引イテハ之レ等ノ教育指導ヲ必要トスル。 

5、禁欲 

6、花柳病ノ認識
 凡(オヨ)ソ敵ヲ殲滅セント欲セバ敵ヲヨク知ラザル可カラズ。対花柳病戦ニ於テモ亦然リ。敵ノ兵力、毒力ニ無智ナル可カラズ。独リ軍隊内ニ於テノミナラズ娼婦ニ対シテモ充分ナル認識ヲ与フルヲ要ス。
「レツセル」ハ娼婦監督ノ改善ニ努メ、一法ヲ提案シ之レヲ売淫規律ト命名シ、之レヲ以ツテセバ娼婦ノ花柳病ヲ減少セシメ得ルトセリ。思フニ之レハ独リ娼婦ノ為メノミナラズ、彼女等ノ用益者達ニモ利スル所多大ナラン。即チ常ニ性交ノ冷静ナル目撃者ハ彼女等ヲ他ニシテハ決シテ求メ得ザルモノナリ。
此ノ意味ニ於テモ軍用慰安所ノ娼婦ハ常ニ監督指導スルヲ必要トス。
更ニ彼女等ノ用益者タル男子側ニ於テモ其レヨリモ一層ノ認識ヲ必要トス。俗ニ「カサ気ト色気無キ男ハ無シ」ト言ヒ、欧州諸国ニ於テモ16、7世紀頃ニハ黴毒タルヲ恥ジトセズ己ノ病気情事ニ就キ語ルヲ名誉ノ如ク心得居タリト。
慢性淋疾ノ如何ニ治療シ難キカ、一旦脳神経細胞中ニ喰ヒ入リシ「スピロヘータ」ノ如何ニ其ノ生命力ニ影響ヲ有スルカ、独リ個人ノ問題ノミナラズ、家庭、子孫、引イテハ民族ノ素質ノ低下ニマデ必ズ因果ヲ持ツモノナリ。思ヒヲ此所ニ致サバ吾々医学ヲ修メシ者ニ非ズトモ慄然タルモノアラン。
此ノ故ニ軍隊内ニ於ケル性教育ノ徹底ハ重且ツ大ナル問題ナリト言フヲ得ベシ。近時米国ノ軍隊ニ於テハ、コノ為メ宣伝ビラ、小冊子等ノ
配布、及ビ写真、殊ニ活動写真ニヨリ著効ヲ収メツゝアリト言フ。此ノ花柳病ニ対スル啓蒙運動コソ、一ツニ隊附衛生部員ニ課セラレタル重大ナ任務トモ言フヲ得ベシ。


7、狭義ノ予防法 

8、患者ノ取扱
 一旦花柳病ニ罹リシナラバ可及的早ク早期治療ノ徹底ヲ遂行セザル可カラズ。小官在南京中、兵站病院外来患者治療時、屡々患者或ヒハ隊附衛生下士官ヨリ花柳病薬ヲ当方ノ治療ニ使用セシ量以外ニ余分ニ請求スル傾キアリ。此ノ原因ヲ探索セシムニ、一ツハ彼等ガ自己ノ疾病ヲ隊附軍医ニ知ラルルヲ恐レ、一ツハ軍医中ニモ自己監督ノ隊内ニテ斯クノ如キ薬物ノ消費セラルルヲ好マズ、引イテハ患者自身ガ自費ニテ薬物ヲ購入スルカ、或ヒハ前記ノ如キ傾向トナリテ現ハレタルモノナリキ。花柳病ノ治療ノ決定ハ常ニ困難ナル問題タリ
。…  

 此ノ際問題トナルハ所謂「花柳病士卒ノ特典」ト言フ事ナリ。則チ彼等ハ花柳病患者トシテ収容セラレ、一戦闘期間生命ノ安全ヲ保証セラル。
実ニイマイマシキ限リナリ。彼等ノ戦友ノ平素真面目ニシテ花柳病ノ汚レニ染マザル者ハ身ヲ弾丸雨飛ノ中ニ曝(サラ)セル間、彼等ハ「サルバルサン」ヤ「プロタルゴール」ヲ友トシ、安逸ナル病院生活ヲ為シ居レリ。然カモ彼等ノ病院内ニ於ケル起居動作ハ決シテ良好ナラズ。

・・・(以下4行略)

9、結言
 ・・・(4行略)
 小官ハ左記諸条目ヲ以テ結言ト為ス。即チ
1、軍隊内ニ於ケル花柳病ニ関スル教育  
   花柳病ノ何物タルカヲ認識スルコト必須ナリ。
2、個人的予防法ノ励行
3、局所的精密ナル身体検査  
   月例身体検査時特ニ注意スルヲ要ス。
4、アルコール飲料ノ制限  
   即チ
此レニ代ルモノトシテ、ヨリ高尚ナル娯楽施設ヲ必要トス。音楽、活動写
   真、図書或ヒハ運動ガ良イ。
   思フニ、16ミリ「トーキー」ニヨル映画位、少シク研究セバ、前線近クニテ行ニ
   左程困難ナラズ。娼楼ニ非ラザル軍用娯楽所ノ設立モ希望ス。斯クシテ兵員
   自ラ禁欲ヲ意トセザルノ良風ヲ成ス可キナリ。
5、検黴ハ的確ニシテ厳正ナル可シ  
   更ニ娼家、楼主ノ監督ヲ必要トス。罹患娼婦ノ治療、隔離ハ必ズ行フ可シ。此
   ノ為メ兵站地区内ニ於テハ特殊病院ヲ必要トシ、彼女等ニモ後送治療ノ可能
   ナル如ク全機関ヲ統一シタシ。
6、娼婦ノ質的向上及ビ選擇  
   同時ニ私娼ヘノ警戒ト伝染源ノ徹底的追及モ必要ナラン。
7、防疫軍紀ノ厳守
   前記各項ノ目的達成ハ実ニ軍紀ノ振作、防疫軍紀ノ高揚ニアリ。花柳病対策
   モ広義ノ防疫作業タル可ク、将来、兵站司令部ハ此ノ為メ更ニ自己ノ医療能
   力ヲ増進セシムルカ、或ヒハ他ノ有力ナル衛生、防疫機関ニ作業ノ一部ヲ譲
   渡ス可キナリ。
8、前記各方面ノ諸因子ノ全体的、統計的研究ハ対将来、対社会ノ問題トシテ重
  要ナル役割ヲ演ズルモノナリ。

                             昭和14年6月26日 以上
 
資料2------------------------------
                   上海より上海へ
一路平安

付録資料1  陣中日誌  昭和13年10月23日~昭和14年6月30日
昭和13年
11月4日(金)
 近時シバシバ私物注射薬(最モ多キハサルバルサン剤)ヲ持チ来リ、注射ヲ希望スル者アリ。彼ラハ何ラ軍医ノ診断ヲカツテ求メシニアラデ、
秘密治療ヲ為シツツアル者、及ビ単ナル好奇心ニヨル者ナリ。彼ラノ言ヨリオシテ兵間ニ相当ノ罹患者アリテ、彼ラハ其ノ上官ニ発覚セラルルヲ恐レテ、カクノ如キ挙ニ出ズルモノナリト。
 試ミテ或ハ隊員中ヨリ希望者5名ノ採血ヲナシ村田氏反応ニヨリタルニ、2名陽性ヲ示シ、内1名ハ最強陽性ナリキ。


12月6日(火)
 東部隊残置小部隊モ殆ド漢口ヘ前進ヲ完了セリ。コノ時ニアタリ患者中ヨリ薬剤コトニ花柳病薬ヲ余分ニ請求スル者多シ。1患者ノミナラズ、隊附衛生部員ヨリモコノ請求アリ。コノ原因ヲ案ズルニ、彼等ノ原隊ニハ軍医ノ配属アルニモカカハラズ、トカク、部隊内ニ於テ花柳病治療薬剤ノ消費サレルヲ好マズ、軍医自身モ患者ニ私物薬剤ノ購入ヲ暗ニ希望セルノ風アリ。カクシテ花柳病治療ノ最大目標点タル初治ノ完全ニ一ツノ暗影ヲ投ジツツアルハ寒心ス可キコトナリ。哉ニ唯ニ一軍医ノ「面子」ノ為メノミナランヤ。


昭和14年
6月30日(金)
 本日午后、吉村部隊講堂ニ於ケル九江軍医分団ノ研究会ニ出席シ「花柳病ノ対策」ニツキ35分間ニ渉リテ口述ヲ為セリ。
 娼婦、検梅、アルコール飲料、患者ノ取扱ヒ等ヲ東西ノ文献及ビ自己ノ経験ヨリ論ジ、軍ハ慰安所施設ノ改善ヲ必要トスルヲ述ベタリ。


資料3------------------------------ 
 資料の位置づけ
 「父の資料は(1)慰安婦(2)慰安所(日本軍が1938年2月に開設したものと民営のもの両方)の写真10点とレポート一篇である。これらは日中戦争の中で起こった南京事件(1937年)の傍証となる歴史資料である。
1937年12月13日の南京陥落の折の捕虜虐殺と婦女暴行という日本軍の行動が国際問題となった。写真に写っているのはその対策として、日本国内の主に北九州地区で急遽支度金千円を払って集められた女性(朝鮮人80名、日本人20名)である。
 ・・・(以下略)

 一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略、または追加したりしています。また、ところどころに空行を挿入しています。青字が書名や抜粋部分です。赤字は特に記憶したい部分です。「・・・」は段落全体の省略を「……」は、文の一部省略を示します。 

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116 コメント

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はじめまして。当方は慰安婦についてリサーチをし... (chuka)
2012-04-08 07:05:04
はじめまして。当方は慰安婦についてリサーチをしているものなり。

“慰安所は享楽の場ではなく共同便所”とは。この人は医者として失格だ。医学的には排泄は人間にとって生理上必要不可欠だが、射精を排泄と同等に見るのは全く不適切だ。排泄が止まれば人間は死に至る。射精は手淫で可能だし、射精しなくても人間は死なない。

医者として軍の性病コントロールに効果がないのを知っていながら、素人を半島からつれてこいなどというのは犯罪ものだ。

貴重な資料公開に感謝。
返信する
chuka様 (syasya61)
2012-04-08 21:39:29
chuka様
 投稿ありがとうございました。私の方もまだしばらく、「慰安婦」関連のアップを続ける予定です。いつまでも、引き摺らないできちんと対処し、1日もはやく決着させるべきだと思っています。
返信する
軍医の医学論文からblog作成者が何を言わんとした... ()
2012-04-11 20:17:22
軍医の医学論文からblog作成者が何を言わんとしたいのか全く見えません。
日本人慰安婦は汚らしいというレイシスト的なことを言いたいのでしょうか?
軍医が衛生的管理をするのは当時は極めて職務に忠実だったとも言え、ある意味市民レイプに走った赤軍やベトナム戦争時の韓国軍より人道的とも言えます。
あと個別の案件を元に全体を語るのは無理があります。
返信する
 投稿恐れ入りますが、 (syasya61)
2012-04-11 21:40:25
 投稿恐れ入りますが、

>軍医の医学論文からblog作成者が何を言わんとしたいのか全く見えません。

 については、最初に書きましたように、正しく「慰安婦」の当時の実態や考え方を知ることが目的です。この資料で、文字通り「従軍慰安婦」であったことが分かります。

>日本人慰安婦は汚らしいというレイシスト的なことを言いたいのでしょうか?

 とんでもありません。これも、抜粋文の前に書きましたように、植民地差別の事実を知らなければならないということです。「日本内地から海外に慰安婦を送る場合にのみ、国際条約に沿うかたちで、こような制限を加えた」ため、「日本人女性の貞操を守るために、朝鮮人少女を身代わりにした」と指摘する論が出てくる事実です。「支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件」を読めば分かります。

>ある意味市民レイプに走った赤軍やベトナム戦争時の韓国軍より人道的とも言えます。

 という主張で、過去の日本の「性奴隷制」と指摘されている「従軍慰安婦」の問題が、不問に付されることはないと言わざるを得ません。個人的な犯罪ではないからです。
返信する
>(第一段落) ()
2012-04-11 22:18:03
>(第一段落)
まず慰安婦と従軍慰安婦の言葉の定義をすべきでしょう。軍の管理については否定する人はいません。、

>「日本人女性の貞操を守るために、朝鮮人少女を身代わりにした」と指摘する論があります。

内地女性が性病なき21歳以上の娼婦に限るとしたことからいきなり朝鮮女性云々は論理飛躍もいいところです。朝鮮女性の多くが業者を介在して行われたことが多かったなどの社会背景があり、また朝鮮総督府が悪質業者の取り締まりを指示したことなどの資料も見つかっています。

>赤軍やベトナム戦争時代の韓国軍はまさに強制性がありこちらの方が性犯罪性が強いです。強姦は有史以来犯罪ですから。日本軍が性奴隷とする根拠はなんですか?自ら志願した場合これは当時はこれは性商売です。もちろん親に売られたとか業者が商売を偽ったなどの個別のケースはあるとは思いますが、国家や軍がこれら少女をだますよう甘言したという証拠は出ていません。

返信する
従軍慰安婦は軍による公娼制の法的準用として考え... (chuka)
2012-04-13 15:44:06
従軍慰安婦は軍による公娼制の法的準用として考えられるべきであるというのが私の意見である。

その特徴は公娼制に準じて軍が慰安婦の鑑札を与えるということ、慰安婦と業者との前借金返済契約の存在が挙げられる。
家長制下の女性は人権が制約され、女性の個人契約は法的に認められていなかった。
外地では警察にかわって憲兵が慰安婦の身元確保に働いたと考えられる。慰安婦契約は、家長による身元保証が書類上不可欠であった。
憲兵介入はこのプロセスをスムーズにする為だと私は考える。

鑑札を得るためには書類手続きが必要だが、廃業に関しては公娼制では、娼妓の意思を口頭で示すだけでよいとされていた。それにそった戦前の判例についての論文がネットに記載されていた。
彼女達の意思に反して身柄を拘束し、強姦、暴行を行ったのは明らかに軍側の違法行為である。

ビルマのミッチナで米軍に保護された20人の朝鮮人慰安婦達は全員が前借金に縛られていた。また彼女達全員が意味がわからないまま日本語の書類に署名したと報告していることからも明らかなように、日本軍は法的体裁をつくろうことを重視していたと考えられる。

慰安所のように不特定多数を相手にする乱交の場が性病拡散センターになるのはいわば時間の問題である。性病予防の目的で慰安所設立というのは、医学的視点から考えると全く意味をなさない。

日本軍全員に梅毒の血液検査を実施し、感染者を隔離することによってさらなる感染拡大は防げたはずだ。
当時の梅毒は今日のエイズに匹敵するわけだが、公娼私娼が隆盛を極めた日本では国民病化していた。

またコンドーム使用の軍規化によって性病全般の感染は100%とはいかないがそれに近いくらい防げたと予測されるが、軍はそれをしていない。

当時としてもいささか時代遅れの局部の視診触診による強制的梅毒検査を“健康管理”と誤解している人がいるのには驚きだ。

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アメリカ軍による北ビルマのミチナ慰安所の慰安婦... (ともーず)
2012-04-13 16:06:02
アメリカ軍による北ビルマのミチナ慰安所の慰安婦からの聞き取り報告

捕虜にした朝鮮人従軍慰安婦について米軍が聞き取り調査をした記録が、戦争情報局関係資料、心理戦チーム報告書 No.49、ビルマ(1944年10月1日)に記載されている。

[募集]

1942年(昭和17年)5月、日本人の業者が朝鮮半島に赴き、東南アジアにおける「軍慰安業務」のためとして女性を募集した。高収入、家族の借金返済のための好機、軽労働等の宣伝に応じて多くの女子が慰安婦業務に応募し、200~300円の前払い報酬を受領した。

[日常生活]

(原告の文玉珠も生活していた)ビルマのミートキーナにおいては、通常二階建ての大きな建物に住んでおり、一人一部屋を与えられていた。食事は経営者が用意したものであった。食事や生活用品はそれほど切り詰められていたわけでもなく、彼女らは金を多くもっていたので、欲しいものを買うことができた。兵士からの贈り物に加えて、衣類、靴、タバコ、化粧品を買うことができた。ビルマにいる間、彼女らは(日本軍)将兵と共にスポーツをして楽しんだり、ピクニックや娯楽、夕食会に参加した。彼女らは蓄音機(レコード・プレーヤー)を持っており、町に買い物に出ることを許されていた。

毎日新聞 1992年5月22日の記事

第二次世界大戦中『従軍慰安婦』として強制連行されたミャンマー(旧ビルマ)で預けた軍事貯金の支払いを求めていた韓国・大邸市在住の文(ムン)玉珠(オクス)さん(68歳)が11日、山口県下関市の下関郵便局を訪れ、預けた貯金の原簿があったことが分かった。(中略) 当時「日本人として貯金した個人のお金だから直ちに返して」と訴えている。(中略)原簿によると43年6月から45年9月まで12回の貯金の記録があり、残高は26,145円となっている。

※当時の貨幣価値
・日本の国家年間予算 24億円
・戦艦大和 1億2000万円
・総理大臣月給 800円(東条英機)
・陸軍大将月給 550円
・大卒初任給 約100円
・一般日本兵月給 15~25円
・慰安婦の月収 1000円~2000円(アメリカ軍の調書)
・元慰安婦、文玉珠の2年3ヶ月の郵便貯金 26145円

…26145円(現在の貨幣価値で約1億円)を約2年で貯金した売春婦

参考サイト



http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_2/jog106.html
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ミチナ資料とその下の左翼かぶれのchukaなる人の主... (Unknown)
2012-04-13 16:55:50
ミチナ資料とその下の左翼かぶれのchukaなる人の主張を見るとからくりがよくわかる。

慰安業に募集→強制連行

前払いで金を受け取っていた→借金で縛られていた

衛生管理→国家犯罪


資料の
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ミチナ資料とその下の左翼かぶれのchukaなる人の主... (Unknown)
2012-04-13 16:57:00
ミチナ資料とその下の左翼かぶれのchukaなる人の主張を見るとからくりがよくわかる。

慰安業に募集→強制連行

前払いで金を受け取っていた→借金で縛られていた

衛生管理→国家犯罪


資料の解釈の歪曲です
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 「従軍慰安婦」の問題では、「強制連行はなかっ... (syasya61)
2012-04-13 22:41:09
 「従軍慰安婦」の問題では、「強制連行はなかった」を繰り返し、強制連行だけが問題であるかのような主張をする人たちがありますが、

>彼女達の意思に反して身柄を拘束し、強姦、暴行を行った

 これが、多くの証言であきらかであり、国連人権委員会小委員会で、日本軍の「慰安所」は「強かん所」とよばれるべきであると特別報告者マクドゥ-ガルが報告しています。「レイプセンター」であるというわけです。
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