真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

HPは hide20.web.fc2.com
ツイッターは HAYASHISYUNREI

「フサイン・マクマホン書簡」と欧米の支配

2024年01月21日 | 国際・政治

 前回取り上げた「バルフォア宣言」の日本語訳と、今回、資料として取り上げている「フサイン・マクマホン書簡」の日本語訳を読むと、まさに「大国のエゴイズム」に基づいて、イスラエルという国が建国されるに至ったことがわかります。
 そして、そういう過去を反省することなく、人道犯罪を続けるイスラエルを支援し、ハマスに連帯して、イスラエルに向かう船舶を攻撃したイエメン・フーシ派の拠点を爆撃しているのが、米英を中心とする欧米であることを見逃すことができません。「二枚舌外交」とか、「三枚舌外交」と揶揄されるようになった過去の過ちの上塗りしているように思うからです。 

 昨日、下記のようなニュースを目にしました。
【AFP=時事】昨年10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマス(Hamas)との軍事衝突が始まって以降、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)の男性数千人がイスラエル軍に拘束され、拷問に等しい状況に置かれている可能性がある。被占領パレスチナ地域の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)代表を務めるアジス・ソンガイ(Ajith Sunghay)氏が19日、明らかにした。
 このニュースでもわかるように、イスラエルのネタニヤフ政権やイスラエル軍は、「ハマス戦闘員」のみならず、パレスチナ人の人権を完全に無視しており、人間扱いしていないと思います。
 だから、国際社会の「法の支配」が機能していれば、即座に国連でイスラエル非難の決議をし、イスラエルを国際司法裁判所で裁き、厳しい経済制裁を科し、イスラエルの指導者や現地の指揮官に逮捕状を出していると思います。
 でも、残念ながら、世界中に軍事基地を置き、圧倒的な軍事力と経済力を持つアメリカの意向に逆らうことが難しいため、ガザの事態は改善されないのだと思います。
 だから、問題は、そういうことが分かっているのに、政府やメディアが対応しないこと、また、できないことではないかと思います。

 オサーマ・ビン・ラーディンは、「ジハード宣言」で、アラブ人が「シオニスト・十字軍連合」からの攻撃迫害を受け、塗炭の苦しみを味わっていると言っています。そして、最悪の攻撃は米軍による「二聖モスクの地(マッカとマディーナ)の占領である」と言うのです。これが「預言者ムハンマド没後、ムスリムが蒙った最大の攻撃である」と断言し、「全てのムスリムはこの諸悪の根源を除去するために立ち上がらねばならない」と言うのです。聖地を占領する米軍は十字軍にほかならず、彼らに対する攻撃は、ムスリムにとっては、「ジハード」に他ならなというわけです。

 また、9・11の後、 オサーマ・ビン・ラーディンは下記のようなことを言ったといいます。
アメリカが今、味わっていることは、われわれが数十年間にわたって味わってきたことに比べれば大したことではない。ウンマ(ムスリム共同体)は(オスマン帝国崩壊以来)80年以上にわたってこのような屈辱と不名誉を味わってきたのだ。息子達は殺され、血が流され、その聖域が攻撃されたが、誰も耳を貸さず、誰も注目しなかった。
 また、
数百万の無実の子供たちが殺されている。何の罪も犯してない子供たちがイラクで殺されているが、われわれは支配者から非難の声もファトワーも聞いてない。このところイスラエルの戦車が大挙してパレスチナを襲っている。ジェニーン・ラーマッラー、ラファハ、ベイト・ジャラーなどのイスラームの地においてである。誰かが声をあげ、行動にでたということも聞かない”
 とも言ったということです。
 
 ムスリムの人命軽視、人権無視、不当な差別、極端な搾取や収奪、そうした現実の隠蔽、巧みな情報操作、そして、ムスリムの聖地に臆面もなくつくられた米軍基地、それらが、ムスリムの「ジハード」を正当化する根拠になっていることを見逃してはならないと思います。
 だから、ビン・ラーディンの声明の内容やイスラエル建国以降の、パレスチナの人たちの思いを多少でも理解すれば、ネタニヤフ首相のように、ハマスをテロ組織と断じて、一方的に「ハマス殲滅」を宣言することが許されることではないことは明らかだ、と私は思います。
 
 「ハマス憲章」の九条は、ハマスの目標を「虚偽を失墜させ、真理を優越せしめ、郷土を回復し、モスクの上からイスラム国家の樹立を宣言する呼びかけをなさしめ、人びとと物事のすべてを正しい位置に戻すこと」と規定しています。

「エレクトロニック・インティファーダ(THE ELECTRONIC INTIFADA)]というサイトに、先日下記のようにありました。

白人至上主義のバイデン政権は、イスラエルにジェノサイドを犯すことを白紙委任している。現在のアメリカの中東政策は、トランプのときと同じように、パレスチナ人の存在そのものの否定である。
BIDEN'S WHITE SUPREMACY GIVES ISRAEL CARTE BLANCHE TO COMMIT GENOCIDE
Current US Middle East policy, like Donald Trump’s, is a denial of the very existence of the Palestinian people.”
 私は、これが、イスラエルの猛烈な攻撃を受ける、ハマスを含むパレスチナ人の正直な気持ちだろうと思います。 そして、アラブの人々が、そうしたパレスチナ人に連帯して、犠牲を覚悟で抵抗するに至っているのだと思います。
 犠牲者を増やさないために、南アフリカ共和国が集団殺害の疑いでイスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことを支持し、イスラエルに「即時停戦」の判決が下るようにしてほしいと思います。
 下記は、「君はパレスチナをしっているか」奈良本英佑(ほるぷ出版)から「3 大国のエゴイズム」の「イギリスのおかしな約束」と「フサイン・マクマホン書簡」を抜萃しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                    イギリスのおかしな約束

 「バルフォア宣言」は連合国側の内部に大変な波風を立てることになった。これは、イギリス政府が他の相手に対して約束していたことと矛盾するからである。イギリスは、アラブのナショナリストに対して、アラビア半島、メソポタミア、シリア・パレスチナを含むアラブ国家の独立を支援することを約束していた。他方、フランスやロシアに対しては、これらの地域を分割してお互いに分け合うこと、パレスチナだけは別個に切り離して国際管理の下におくことを約束していた。
 「アラビアのロレンス」の本や映画を見た人は、アラブへの約束については知っているだろう。「アラブの反乱」を起こしたマッカのシャリーフ(守護職)フサインと、イギリスの高官、マクマホンの間に交わされた「フサイン・マクマホン書簡」は有名だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                    フサイン・マクマホン書簡

 この書簡は、1915年7月から1916年1月にかけてやりとりされた。このなかで、イギリス政府は、フサインがオスマン帝国に対して反乱を起こすことの見返りに、アラブのナショナリストが要求するほぼ全領域での「アラブ人の独立を承認し、支持する用意がある」ことを伝えていた。ただし、マクマホンは「同盟国フランスの利益をそこなわないために」、ごく一部の地域を独立アラブ国家の領土から除外したい、といっている。だが、このくだりを普通に解釈すれば、除外される地域がパレスチナよりもっと北よりの地中海沿岸地域であることは明らかだ。しかも、マクマホンの手紙には「パレスチナ」「シオニスト」「ユダヤ人」などという言葉や、これらを意味する表現は全く見られない。  
 このアラブ・ナショナリズム運動は、今世紀のはじめに起こった非常に若い運動である。それは、オスマン帝国による上からの近代化、その結果としてトルコ人による支配が強まったことに対する反発として生まれた。その中心的な担い手になったのは、シリア・パレスチナ地方の新しい地主階級だった。
 このオスマン帝国が第一次世界大戦に参戦すると、アラブ・ナショナリストに対する締めつけが強まり、一方、かれらの反発も激しさを増した。
 これに目をつけたイギリスが、アラブ・ナショナリストを味方につけ、オスマン帝国を分裂させようと持ち出したのが、前に述べた書簡でのアラブへの約束だった。ロレンス大佐はこのような工作のためにイギリスが送り込んだ軍人のひとりだったのだ。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« バルフォア宣言と欧米の支配 | トップ | 「サイクス・ピコ協定」と欧... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国際・政治」カテゴリの最新記事