真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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皇民化政策と創氏改名の法令・通牒

2010年07月11日 | 国際・政治
 創氏改名の問題は、ただ単に朝鮮人の名前を日本式に変えるという名前の日本化の問題としてだけではなく、それが同時に朝鮮の家族制度を日本化する「皇民化政策」の一つとしてとらえなければならないと思う。新たに「氏」を創る「創氏」によって、朝鮮の家族制度における3大鉄則といわれるもの、すなわち「姓不変」(人の姓は一生変わらない)、「同姓不婚」(同族の者同士は婚姻しない)、「異姓不養」(同族でない者は養子にしない)などは、通用しない社会に変えられることとなった。そして、「内地社会と同じ氏を持ち、古来より伝統の氏の理念に生き、天皇中心の家庭建設に邁進する朝鮮、そこに内鮮一体は無言の裡に成就する」(南総督)と日本の家族制度が持ちこまれたのである。命をかけた反対や抗議も頷ける。「創氏改名」宮田節子・金英達・梁泰昊(明石書店)からの抜粋である。
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                 第1部 研究・創氏改名
 第1章 創氏改名の時代
 「皇国臣民」とは?
 さて冒頭でも述べたが、日中戦争を直接の契機として、朝鮮では「内鮮一体」が唱えられた。「内鮮一体」とは提唱者であった南総督自身の定義によれば、「半島人ヲシテ忠良ナル皇国臣民タラシメル」という一語につきる。そして朝鮮人を「皇国臣民タラシメル」ためのすべての政策が、一般に皇民化政策と呼ばれている。


 ・・・ 

 このように学生時代から筋金入りの皇道主義者であった塩原(学務局長塩原時三郎)によって造語された「皇国臣民」とは、具体的にどのような人間像を意味するのだろうか。
 塩原が会長だった朝鮮教育会が描く「皇国臣民」とは、次のような人間像である。


 「天皇を中心とし奉り、天皇に絶対従順する道である。絶対従順とは我を捨て私を去り、ひたすら天皇に奉仕することである。この忠の道を行ずることが我等国民の唯一の生きる道であり、あらゆる力の源泉である。されば天皇の御ために身命を捧げることは、所謂自己犠牲ではなく、小我を捨てて大いなる御陵威に生き、国民としての真生命を発揚する所以である」

 つまりは己を無にして、天皇のために「笑って殉ずる人間」ということであろう。
 それはとりもなおさず、日本軍兵士の理想像でもあった。すなわち皇軍建軍の基礎は「天壌と共に窮りなき我国運を身命を捧げて扶養し奉る心こそ、取りも直さず我が皇国兵役の根本義」であるからである(朝鮮軍事普及協会編纂『朝鮮徴兵準備読本』1942年)。
 「皇国臣民」とは、同時に「天皇親率の神兵」たるにふさわしい「皇軍兵士」ということであった。


 皇民化政策の構造

 朝鮮人を「皇国臣民」化するために、皇民化政策が展開された。
 まず精神教化のために、神社参拝が強制され、一つの面に一つの神社を設置する計画が進められた。
 37年10月には、塩原が作ったとされる「皇国臣民の誓詞」が制定された。これには児童用と大人用があり、その本質を明確に表している児童用は

一、私共ハ大日本帝国ノ臣民デアリマス。
二、私共ハ心ヲ合セテ、天皇陛下ニ忠義ヲ尽シマス。
三、私共ハ忍苦鍛錬シテ、立派ナ強イ国民トナリマス。

というものであった。学校では毎朝朝礼でこれを斉唱し、官公署や職場でも”国民儀礼”として、斉唱が義務づけられた。

 さらに毎朝の宮城礼拝、国旗掲揚、君が代の普及、志願兵制度の実施、教育令の改正、創氏改名等々が行われた。
 これらはすべて朝鮮人を、より完全な皇国臣民にするために行われたものである。しかしこれらの政策は、単に羅列的、並行的ではなく、政策相互に緊密な関連を持ち、しかもその柱となる政策があった。 
 38年2月に公布された陸軍特別志願兵令と同じ年の3月に改正された第3次朝鮮教育令と40年2月から実施された創氏改名は、三本の柱ともいうべきものであった。

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                   第3部 資料・創氏改名
1 法令・通牒
(1)制令第19号
「朝鮮民事令中改正の件」
 昭和14年11月10日
                                   朝鮮総督 南 次郎
朝鮮民事令中左ノ通改正ス
第11条第1項中「但シ」ノ下ニ「氏」ヲ、「認知、」ノ下ニ「裁判上ノ離縁、婿養子縁組
 ノ場合ニ於テ婚姻又ハ縁組カ無効ナルトキ又ハ取消サレタルトキニ於ケル縁組
 又ハ婚姻ノ取消」ヲ加ヘ同条ニ左ノ1項ヲ加フ
 氏ハ戸主(法定代理人アルトキハ法定代理人)之ヲ定ム
第11条ノ2ヲ第11条ノ3トシ以下第11条ノ8迄順次1条宛繰下グ
第11条ノ2 
朝鮮人ノ養子縁組ニ在リテ養子ハ養親ト姓ヲ同シクスルコトヲ要セス
 但シ死後養子ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
 婿養子縁組ハ養子縁組ノ届出ト同時ニ婚姻ノ届出ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ生
 ス
 
婿養子ハ妻ノ家ニ入ル
 婿養子離縁又ハ縁組ノ取消ニ因リテ其ノ家ヲ去ルモ家女ノ直系卑属ハ其ノ家ヲ
 去ルコトナク胎児生レタルトキハ其ノ家ニ入ル
第11条ノ9ヲ第11条ノ10トシ同条中「第11条ノ3及第11条ノ4」ヲ「第11条ノ4及第11条ノ5」ニ改ム
  附則
本令施行ノ期日ハ朝鮮総督之ヲ定ム
朝鮮人戸主(法定代理人アルトキハ法定代理人)ハ本令施行後6月以内ニ新ニ氏ヲ定メ之ヲ府尹又ハ邑面長ニ届出ヅルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル届出ヲ為サザルトキ本令施行ノ際ニオケル戸主ノ姓ヲ以テ氏トス但シ一家ヲ創立シタルニ非ザル女戸主ナルトキ又ハ戸主
相続人分明ナラザルトキハ前男戸主ノ姓ヲ以テ氏トス


2)制令第20号
 「朝鮮人ノ氏名ニ関スル件」
  昭和14年11月10日 
                                    朝鮮総督 南 次郎
第1条 御歴代御諱又ハ御名ハ之ヲ氏又ハ名ニ用フルコトヲ得ズ
 自己ノ姓以外ノ姓ハ氏トシテ之ヲ用フルコトヲ得ズ
 但シ一家創立ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第2条 氏名ハ之ヲ変更スルコトヲ得ズ但シ正当ノ事由アル場合ニ於テ朝鮮総督
 ノ定ムル所ニ依リ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限
 ニ在ラズ


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