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即席ではなく

「放射能のことはあまり考えないようにしてるんだ」
旅の最中、岩手の温泉につかっている時に隣にいたおばさんがつぶやいた。
福島にほど近い宮城県角田市にお住まいだという。
「小学生の孫は学校のプールに入れなくて。この暑いのにね~」

仙台の実家へ今回も下道で帰省した。
静岡→甲府→秩父→熊谷→栃木→福島→仙台と、細かな裏道をつなぐルート。
福島からは三春町を通って飯館村の横の三ケタ国道を北上。
普通に歩いてたり犬の散歩してたり外で遊んでいたりする子供もいる。ぱっと見、普通に穏やかな農村風景。
郡山市の街中を経由した。今まで知らなかったけど、県庁所在地の福島市より郡山市の方が大きな感じがする。
都会的なにぎわい、行き交う車の多さと闊歩するおしゃれな人達。
何も知らないでよそから来た人は、福島で何が起きたか、今何がどうなっているか全く気がつかないのでは。

国道4号など大きな幹線は大型店舗や飲食店などお店が多いのは便利だが
県道や三ケタ国道など裏ルートの何がいいかというと、窓外に見える風景がいい。
一面に広がる青々とした田んぼ。出穂した稲穂が風にそよぐ。
森の中を抜けると木洩れ日と木の香のシャワー。道の横を流れる渓流は日常では見ない川底まで透明な川。

前回5月は、渋滞と通行止めを考慮して沿岸ルートの走行は避けていたけれど
今回は仙台に入ってから沿岸の道をゆく。実家から数キロ東の場所。
いつもは一面田んぼのエリアが見渡す限り雑草畑。伸びた草の中に見え隠れするガレキ、船。
コンクリートだけになっているところは、よく見れば津波で流された住宅の土台。この辺は新しい住宅地だろう。
前回ゴールデンウィークに来た時は、あまりにもありえない惨状そのまんまな風景に愕然としたけれど
その時に比べればガレキの撤去はかなり進んでいた。
「やっぱりずいぶん復旧作業は進んでるんだね~」と言ってる最中、
突然視界に入ってきた広大ながれき置き場に思わず息をのむ。

石巻の国道45号沿いは、どこの地方都市でもかわりばえしない同じチェーン店が軒並み並び
普通に電気を照らして普通に営業している光景にちょっとほっとする。
しかし、川の横の道を通って一瞬背筋が凍りつく。川の水位が道路の高さとあまり変わらない。
これって堤防が一部でも決壊したらヤバくない?今日満月だからか?それもあるけどやっぱり地盤沈下でしょう。
少しずつ日が暮れていく。石巻にある有名なケーキ屋さんに行ってみよう~と、裏道にそれてみる。
こうこうと明るい45号から一転、夕闇に沈む灯ひとつない廃墟にしばし呆然。
住宅地であっただろうこの場所にも水が来ていて道の先へ進めない。

石巻の先の女川に着いた頃にはとっぷり日が暮れていた。独身時代に何度か遊びに行った女川。
記憶にある光景が様変わりしている姿を目の当たりにすると胸の奥がじくじく焼けるようだ。
マリンパル女川の建物の横も一面水たまり。よく見ると藻が育って魚が泳いでいる。
「被災地には絶対に見に行かない」と言い張ったという父の気持ちが少し分かる。
景色=ランドスケープが人の心に与える影響はどれほど大きいか。

仙台の駅前、街中は東北中枢ならではの都会の賑わい。
実家の近所にオープンしたアンパンマンミュージアムには大行列。
「被災地との温度差」とはよく耳にする言葉だけど、実際5ヶ月前に大震災が起きたなんて信じられないくらい。
「被災地を見る」って、どうなんだろうな・・・
実際見に行っておきながらも何となく腑に落ちないものを感じないわけではなかったが
でもその代弁して下さるような方の記事を見つけたので、↓にリンク貼らせて頂きます。
「インスタント(即席)でない情報理解や行動のスタンスって、これからの時代のスタイルだと思う」
そのご意見に同意。


被災地の状況は想像の域を遥かに越えている。
~被災地支援だけでなく被災地理解にも時間をかける大切さ。
http://d.hatena.ne.jp/akiranakajima/20110822

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