PIMCOのディレクターのポール・マカリー氏がPIMCOのサイトにおもしろい論説を書いている。そこで、画像のような図を示して、次のように述べている。
(以下引用)
任意の国について単純な命題から始めましょう。
家計部門の金融収支+
企業部門の金融収支+
政府部門の金融収支+
海外部門の金融収支=0
ここで複式簿記の登場です。それによれば、4つの部門のうちの1つが赤字ないし黒字を出すには、残りの3部門のうち1つ以上が逆の動きを示していなければなりません。もちろん、この命題は、何ひとつ因果関係を語っているわけではありません。また、出発点での世界の負債および資産の残高の構成や持続可能性について語っているわけでもありません。これは、あくまで資金フローに関する変えようのない数式です。
先進国の家計および企業部門は現在、3年前とは打って変わって、大幅な黒字を計上しています。逆に、先進国の政府部門は大幅な赤字です。一方、エマージング諸国は依然として先進国に対して大幅な黒字となっています。このグラフは、米国の状況を示したものです。
したがって、先進国の財政緊縮が景気循環の上で世界の総需要の重しとはならず、逆に浮揚する役割を果たすと主張するには、次の前提がなければならないはずです。(1)先進国の家計部門と企業部門が黒字を減らす。(2)エマージング諸国が先進国に対する黒字を減らす。
(中略)
(したがってむしろ)不換紙幣の国における足元の財政赤字は、忌むべきものではなく祝福すべきものです。リスク資産の冴えないパフォーマンスを呪っているとすれば、責めを負わせるべきは、不換紙幣の国の財政赤字に対する不安ではありません。むしろ、景気循環の中で財政赤字をどうにかしようとする緊縮派の不安を責めるべきなのです。
(以上引用終わり)
ちょっと長くなったが、要するに、米国(先進国)の政府部門の赤字は、民間部門の債権(財産)となり、また新興国の黒字の源泉ともなっているので、悪いものではない。緊縮財政など考えるのがむしろよくないことだ、という主張である。これは基軸通貨ドルが世界全体の通貨であるという立場に立っているから言えることであり、ちょうど日本が国内で財政赤字と民間の黒字が均衡しているから問題ないという某氏などの理屈と同じことを国際版で述べていると言える。
これに対しては賛否両論あるだろうが、私は前から書いているように、この政府赤字と民間黒字とを対比して考える立場には一理あると思っている。したがって日本についてはあまり心配していないし、実は米国についても、あまり心配はしていない。ただ、もしドルが基軸通貨でなくなれば話は別である。国内で閉じている日本の問題に対し、米国の国債は世界に開いているため、ドル不安が生じることとなるはずだ。
ということで、この後数年のうちに起きるだろうことは、やはり、ドルの基軸通貨としての位置が揺らぐとしたらどうなるという「不安心理」が市場をかき乱してドル安を招くという現象になると思っている。実際にはドル基軸体制は1世紀ぐらいをかけてゆっくりと衰退するだろうが、まだまだ10年のオーダーくらいでは変化しそうにもないので、その心理が収まればまたドルはもとに戻っていくだろう。
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アメリカ=ドル、ドル=基軸通貨なれば右項はゼロで成り立つと思います。なので、その前提さえ崩れないようにすることが大事でしょう。
将来的に赤字は解消していかなくてはなりませんが、数字はあくまで数字に過ぎないと考えています。
この解釈は間違っています。あくまで恒等式に過ぎないのですから。
>この命題は、何ひとつ因果関係を語っているわけではありません。また、出発点での世界の負債および資産の残高の構成や持続可能性について語っているわけでもありません。これは、あくまで資金フローに関する変えようのない数式です。
とある通りです。
ハライテwww わ、ワライジニするwwwww
最後はその新興国が赤字に転落してアメリカに還流するか、あるいは武力で取り込むかwww。来た! 戦争を暗示していたんだ!
基本的にはこういう見方で行けそうな気がしています。部分的な誤りがあったらまたご指摘ください。
通りさん、
「源泉」という書き方は因果的な表現で問題があったかもしれませんね。ただ、基本はマカリーの主張は伝えていると思います。本文から引用すると、
1 デフレによる不況のリスクを増大させることなく、民間部門を建て直すには、先進国の政府が巨額の財政赤字を出し続けるか、エマージング諸国が黒字を減らすかどちらかしかありません。
2 財政赤字があるため、民間部門では貯蓄意欲が高まり、バランスシートでレバレッジ解消を進めています。思い出していただきたいのですが、政府部門の負債は民間部門の資産なのです!
3 先進国が直面しているのは、循環的な総需要の不足であり、構造変化による逆風が吹く中で、流動性の罠と倹約のパラドックスの産物です。財政緊縮ありきの主張は、このデフレのカクテルを濃くするだけです。
これらの主張はクルーグマン等とも共通するいわゆる積極財政論者のもので、もちろん反論はあるでしょうが、ひとつの見方ではあると思います。以上について要約が間違っていたらさらにご教示ください。
ブギャさん、
どこがおかしいのか説明がないと、対応の方法がありません。よろしくお願い致します。m(_ _)m
たけしさん、
予測は「8月16日か」のエントリーに書いた通りです。中旬あたりまで円高、後やや円安、その先超円高、ということで今は見ています。
てか来週なんか、、構えてしまいますw
一方でこんな意見もあるようで。
個人的には緊縮財政したはいいが
かえって不況になって税収が減って
元も子もなくなった日本の経験を踏まえると
失業率改善>>>財政再建だと考えている
のでこの意見には賛同できかねないんですが。
一方で今失業している人たちはスキルとか
人脈がなくて失業しているのでばら撒きやって雇用を維持していても止めたらあっというまに失業者の群れに変わってしまうので
そのままばら撒き続けていいのかというと
答えに詰まる状態です。
結局のところ失業者が何らかの形で新しい産業につくことができることがない限り今回の
不況は終わらない、そのように感じています。
そういった言葉上の表面的なものではありません。恒等式を見て何かを言う(まして三橋某の誰かの借金は誰かの資産の国際版、のように)こと自体が論理的な誤りであるということです。クルーグマンの提言も、このようなものをベースとしているわけではありません。
voice氏のような方が出てくるようになって一気に質の下がったブログを多数存じております。某氏を指すであろう三橋某などはその典型ですが、くれぐれもご注意下さい。
ヤマハさん!遠くからずっと見てますね^^
おもしろい掲示板の紹介ありがとうございます。
アメリカもデフレ模様になってきて、政府の借金問題に対する経済学者の態度が様々になってきました。国債に対する懸念が大きくなるということについては私も賛成です。また、アメリカが回復するまでにはかなりの年数が必要になると思います。これは間違いないです。前から書いている1930年代からのサイクルを見れば今回の危機はとても大きなものですから。
通りさん
おっしゃるように「恒等式を見て何かを言うこと自体が論理的な誤り」だとすれば、マカリーの論説自体、通りさんから見れば誤りだということになると思うのですが、そういう理解でいいのでしょうか。私は経済学を基本からやったことがなくて、米国の論者も、クルーグマン、ケネスロゴフ、その他よくマスコミに出てくる人をちょっと読む程度なんでそのあたりよくわかっていません。マカリーが誤りということならそういう風にご指摘ください。
なお、掲示板での投稿者間での相互批判は必要なことですが、あくまでも論理的にやりたいですね。
voiceさん、
掲示板での投稿者間の相互批判は必要なことですが、あくまでも論理的にやりたいものですね。
その点さえ押さえていただければ、トレードについてのお話は楽しくうかがっていますし、別に立ち去る必要はないと思います。^^
なるほど。「ミスリードさせる」部分があるということですか。とにかく一度ちゃんと基本書を読んでみたいと思います。今後も気になる点があったらお書きください。
voiceさん
いいトレードが続きますよう。上海では美味しいものを食べてきて下さい。なお、コメント自体はやや品位にかける表現がありましたので、表から消去しました。ご了解ください。