Wilhelm-Wilhelm Mk2

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偽の女庭師(にせのおんなにわし)

2009-01-06 | Weblog
 東京アンサンブルという団体の公演を観てきました。チケットは妻のご好意によるものです。この団体、実はもう何度も聴きにいっています。狙いは例の通りバスのI氏なのですが、NZ在住のI氏が帰国して出演する演奏会を追うと、だいたいハイレベルな小中編成アンサンブルとなるわけで(紀尾井とか水戸室内とか)、この東京アンサンブルも、選りすぐりの猛者を集めた高水準な小編成アンサンブルです。主催しているのは、コンマスの服部氏で、私は一度学生時代にソロを聴きに行ったことがあるのですが、その迸るパッションに圧倒された思い出があります(名前をしっかり覚えてるから相当の印象だったのだろう)。最近は指揮の方面でも活躍しているそうで、今年はウィーン国立オペラに出場するそうです。ウィーン育ちということで、ちょっと日本人離れした濃いオーラを放出しています。ただね、ちょっと風貌がねえ・・・もう少し、さっぱりならないだろうか?
 このアンサンブルは、いつも変わった曲目を取り上げるのですが、今回はモーツァルトが18歳の時に作曲したという「偽の女庭師(なんとかならんのかこの邦訳)」のセミコンサート上演でした。古い時代のオペラは、歌の場面だけでなく台詞の場面も沢山あるのだけど、今回の公演では台詞の場面は全てカットし、替わりに落語家・古今亭志ん輔が面白おかしくアドリブまじりで状況を説明するという「オペ落語」スタイルでした。
 筋はよくある痴話コメディなんだけで、つけられたモーツァルトの音楽はさすがの一言でした。後期のオペラのような印象に残るアリアはないけど、どの曲にも工夫と斬新さが感じられ、聴いていて全く退屈しない。18歳でこれかよ!さすが天才です。歌手は総じて女性陣のほうが上手かった。ヒロイン(偽の女庭師)を歌ったウィーンから来たソプラノの方が、ニコールキッドマンそっくりの美人さんでした。やはり白人は骨格から違いますね。なにあの小顔・・・。若い紳士を演じたメゾソプラノのオーストリア人女性(背が非常に高い)が、志ん輔のアドリブ?に煽られて「バカヤロー」と連呼するシーンは喝采を浴びてました。やはり喜歌劇なんだから会場が沸かないとね。そういう意味で落語家を話し手に起用したアイデアは大成功だったと思います。男性ではヒロインの下男を演じたバリトンの方が非常に美声で聞き惚れました。伴奏ですが、残念ながら会場が音楽専用のホールではなかったため、弦楽器は生音が立ってしまい、美音に酔うという感じではなかったのですが、I氏の暖かく柔らかくかつパンチのある低音を聴くことで、日頃無意識に溜め込んでいた無駄な固定観念(音楽だけに限らず)が洗い落とされ、フレッシュな心を取り戻せました(謎)。低音っていいですね(謎)。
 ステージは歌手とオケを分けるために、巨大な紐暖簾で前後に区切られていました。歌手が紐暖簾を前後に自由に通り抜けることで、外と内、表と裏の表現がなされ、さらにこの暖簾が背景映写のためのスクリーンにもなるというなかなか面白い演出でしたが、オケをじっくり観たかった私としては、少々邪魔だったかな。演出はウィーンで勉強しているという若い女性でした。カーテンコールの際にステージに出てきましたが、小柄でなかなか綺麗な方でした。昨年末の我々の公演の演出をしてくれた人もミュンヘンで勉強している(仕事をしている)女性でしたが、これって歌舞伎の演出を外人の女性がやるようなもので、言語だけに限らず文化背景等で色々と苦労なさってると思うのですが、是非是非頑張っていただきたいと思います。

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