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何気なく谷崎の「人魚の嘆き、魔術師」(中公文庫)を購入して読んだが、谷崎お得意の美文調には圧倒されるものの(人魚の描写など)若い頃の作品であることもあり、ストーリーの展開としてはそれほど印象に残るものはない。ただ、表紙(写真)も飾っているが、単行本の発刊時に掲載されたという挿絵装画が素晴らしい。描いたのは水島爾保布(におう)という人ということ。大正時代の日本画家、挿絵画家、小説家、漫画家であったらしい。あまりもの美しさにテキストよりも絵のほうにばかりに神経がいってしまった。画集でもあればいつか手にとってじっくりと見てみたい。私はこういった頽廃美というか、世紀末的を感じさせる芸術は結構(かなり)好きである。