Wilhelm-Wilhelm Mk2

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FAE

2009-11-10 | Weblog
久しぶりの海外渡航がじわじわと迫ってきた。仕事の準備はまだまだだが、とりあえず手配すべきものは全てしたと思う・・・勿論「演奏会」も・・・。かなりアクロバットな日程なのだが、成功すれば得難い経験になるはずである。詳細は当日になってから。

FAEソナタ:4つの楽章からなるヴァイオリンとピアノのためのソナタだが、面白いことに複数の作曲家、ブラームス(3楽章)、シューマン(2,4楽章)、アルベルト・ディートリヒ(1楽章)によって作曲された作品である。「F-AーE」の音並びをテーマとしているためこの名称で呼ばれている。現在ではブラームス作曲の3楽章以外は殆ど演奏されない。シューマンは後に1,3楽章を作曲しなおし、自作のVnソナタとしたが、こちらも長年お蔵入りで殆ど演奏されない。先日図書館でデュメイのブラームスソナタ全曲録音(EMI)を借りたのだが、珍しいことにこの曲の全楽章がカップリングされていた。話がそれるが、デュメイはとにかく音色が素晴らしい(シルキートーンと呼ばれている)。音色だけなら全ての弦楽器奏者の中で最も好きかもしれない。ブラームスのソナタ集はお気に入りで、様々な奏者の録音を持っている(集めている)が、今回聴いたデュメイの初期録音は手持ちの録音の中でもかなり上位にくるものであった。ただしピアノ(ベロフ)がちょっと硬いのが難・・・決して悪いというわけではないが、好みとしてはもう少し暖かくて体積のある音色が私の好みだ。デュメイのブラームスといえば、DGから出ているピリスとの全曲録音が定番だが、このEMIの録音はデュメイの初期時代(1978年)の録音である。デュメイは所謂「コンクール上がり」ではないため、知名度がなかった当時の日本での発売は見送られてしまい、国内版として市販されるのに20年もかかったそうだ。こういった販売元の勝手な論理で埋もれてしまった名演奏がまだまだ欧州には沢山眠っているのだろう。
 話を「FAEソナタ」に戻すが、期待もせず聴いてみると吃驚するような名曲ではないか。デュメイの演奏が素晴らしいせいもあるが、久しぶりに未知の曲を聴いて感動できた。「隠れた名曲なぞない。名曲は隠れないものだ!」という意見に賛成している私であるが、もしかするとこれは本当に隠れた名曲かもしれないと思った。確かにブラームスの作曲したスケルツォが際だってはいるが、ブルッフを思わせるような陰翳で怪しい浪漫旋風で始まる1楽章・・これがかなり心に沁みた。この楽章を作曲した「アルベルト・ディートリヒ」とは一体何者か?調べてみたら、シューマンの弟子でブラームスの親友だったそうだ。宮廷楽長としてブラームスの作品の紹介に尽力し、また自身も多くの曲を遺している。交響曲やチェロ協奏曲の録音はありそうなので、機会があったら手に入れて聴いてみよう。(とびぬけた名曲である可能性は低いが、ブルッフのように私的なツボにはまるかもしれない)。

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