『気分じゃないの(Not In The Mood)』の
『雨、雨、どっか行け
また今度にして』
の一節を聴いていると
『まだ降り止まぬ真夏の通り雨』
という『真夏の通り雨』の一節を思い出す。「通り雨でも降られてる時にその人が死んでしまったら、その人にとってその通り雨は(永遠に)降り止まない」という意味だとヒカルが語ってくれて心底凄いこと考えるなと思ったのだが、この歌が発表されたのが2016年の4月。『気分じゃないの(Not In The Mood)』記念日が2021年12月28日。5年半余りで、ヒカルの雨に対する雰囲気は随分変わった。
デビュー曲の『time will tell』からして
『雨だって
雲の上へ飛び出せば
Always blue sky』
と、雨への対処法を歌っているのだから歌詞のテーマは昔から終始一貫しているのだが、
・「雨を上回ろう」と若さ溢れる無敵感を出すデビュー当時
・降り止まない雨にただ立ち竦む復帰当時
・ちょっと無気力に雨を忌避する現在
という風に、それぞれに雨に対する対処法が随分と異なる。15歳の頃は、「うまくいかないことがあっても、それを超える力や発想があればうまくいく」という、自分が成長したりすることで乗り越えられる感覚を持っていた。若いよね。人間活動期前後は、母の死という自分にはどうにも出来なかった無力感や絶望の前に何もする気が起きなかったというか。大人になるってこういうことか。
今のヒカルはただ『どっか行け』と雨にお願いするだけで結局何もしない訳だが、『真夏の通り雨』と違って、落ち込んで無気力ではあるけれどそれはそこまで絶望ではない。この歌は、前にも触れたとおり、この一言で締め括られる。
『It's just one of then days』
「そんな日もあるさ」と。幾つかある日々の中でたまたま今日は雨の気分じゃなかったの、という、なんだろうな、穏やかな日常の中での落ち込みというか。内心はこの曲を今日中に仕上げないとという絶望的なプレッシャーだらけだった筈なのだが、心のどこかで「なんとかなる」という自信、或いは予感があったのかもしれない。確かに、歌詞は出来るときに出来る。それが、たまたま切羽詰まりきった12月28日だったというだけ。『真夏の通り雨』の頃には、ましてや『time will tell』の頃には考えもしなかった境地に今ヒカルは居る。ここまで生きてこられて、私は本当に運がいい。もっとここから好運を求めようぞっ。
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