トシの読書日記

読書備忘録

ふるえる心を受け止める

2008-01-31 20:36:07 | あ行の作家
小川洋子「アンネ・フランクの記憶」読了


ずっと前にこのブログで「アンネ・フランクの記憶」、ファンならずとも読まねばならない1冊であろう・・・とかなんとかえらそうなこと言ってずっと読んでなかったので、いわば義務感にかられて手に取った次第。

小川洋子がアンネ・フランクにまつわるもろもろのことを取材するため、ヨーロッパ各地を訪ねたルポルタージュ。

自分は「アンネの日記」を読んだ記憶がなく、内容もあちこちで聞きかじったくらいの知識しかないので、読んでいくうちにいろんな発見があり、なかなか興味深かった。
作家小川洋子の原点を知る上では必須といってもいいくらいの本なのだが、当の小川洋子の記述があまりにも感傷的にすぎるきらいがあり、ちょっと鼻白んだ箇所もままありました。

しかし、ナチスの犠牲になって早世したユダヤ人の少女の日記いうことだけでは片付けられない重い重いテーマをこの日記は含んでいることを忘れてはならない。

自分が生きるということ、自分が生き延びるためにナチスに密告してしまう人たち。いや、密告せざるを得なかった人たち。その人たちの心情を考えると語るべき言葉もない。後にそのことで考え苦しんだあげく、自殺した人もいたそうです。

「生きる」ことの意味、「生きていくこと」の意味を真正面から見つめた渾身のルポであると思います。

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