トシの読書日記

読書備忘録

透明な気持ち

2008-01-21 15:37:55 | な行の作家
長嶋有「いろんな気持ちがほんとうの気持ち「読了

これもエッセイです。エッセイというのは、おしなべて「なんだかなぁ」というものが多いのだが、これはよかった。この作家の持ってる感覚、好きです。ちょっと皮肉っぽいんだけど、あったかい。でもそんなあったかさをおくびにも出さないような、そんな感じ。
しょーもない、瑣末な話が最初続いてて、それはそれで面白いんだけど、ずっとこんなんかよって思ってたら、違ってたのでほっとしました(笑)

「好きな作家はたくさんいる」の章でのサリンジャー論が出色でした。小説ってこうやって読むと面白いんだなぁと教えられました。ていうか、僕は長嶋さんのように賢くないんでこんなふうに読めないんですがねぇ(とため息をつく)

パンクの自意識のパンク

2008-01-21 15:22:33 | ま行の作家
町田康「テースト・オブ・苦虫」読了

ヨミウリウィークリーという週刊誌(?)に連載していたのをまとめたエッセイ。
やっぱり町田康はエッセイじゃなく小説ですね。つまんなくはないんですがね。ていうか、情けない話ばっかりで笑わせるんだけど、味が薄まってしまってる感じ。
しかし、定価1700円って!「ブ」でも900円で躊躇したのに(笑)買って面白かったけど、ちょっと損した気分です。

久々の「ブ」

2008-01-21 15:12:25 | Weblog
久しぶりに仕事を夕方で切り上げ、ブックオフへ。
友人に小川洋子の「夜明けの縁にさ迷う人々」が面白かったと聞いたので、単行本を本屋で買う前にもしかして「ブ」にないかと思って行ってみた。

で、ありませんでした(笑)
でも、いろいろ面白そうな本を見つけ、収穫はありました。

以下、購入本

町田康「テースト・オブ・苦虫」
町田康「告白」
桜庭一樹「青年のための読書クラブ」
奥田英朗「ララピポ」
山田太一「異人たちとの夏」
富岡多恵子「波うつ土地」
関川夏央「中年シングル生活」

最後の「中年・・・」はダブりであった。ていうか3冊目でした(笑)



雨の匂いのする男

2008-01-21 14:54:11 | さ行の作家
桜庭一樹「私の男」読了

こんなにぞくぞくしながら小説を読んだのは久しぶりのことです。
また、読み終わったあとこんなにすぐ読み返したくなったのもしばらくなかった。

それくらい面白い小説でした。面白いというか、すごいというか、ヤバい感じ?

2008年から1993年に物語は遡る形で進行する。ここがまず面白い。

養女、花と養父、淳悟の濃くてそしてある意味醜いつながりが延々と続く。

登場人物の心理を描くのに説明的すぎるきらいがあったり、会話の部分も稚拙なところがあったり、直木賞選考委員の北方謙三氏の言うように物語の整合性に問題があったりと、いろいろまずいところはあります。けれどもしかし、それを補って余りある迫力!読む者をぐいぐい引き込むのではなく、逆にこっちにどーんとぶつかってくる感じ。読了後、しばし茫然としました。
そしてはっと我に返ってまたすぐさま逆から読み返しました。物語がどんどん過去へ戻っていくので、今度は時代の流れに沿って読んでみようと思ったのでした。
逆から読んでみて普通に読んだのとはまた違う感じ方もできて、よりいっそう深く読むことができました。そしてラスト、第1章のクライマックスへとつながるのです。

おりしも、読んでいる最中に直木賞の発表があり、同作品が第138回直木賞受賞の報を聞き、さもありなんと納得した次第。

まだ今年にはいったばかりだというのに、すごい小説に当たりっぱなしです。
「私の男」は、今年のベスト3に間違いなく入ると思います(多分)。