トシの読書日記

読書備忘録

眺望のきかない不穏な空気

2015-07-14 17:03:19 | や行の作家



吉田知子「お供え」読了



ついこの間、4月に講談社文芸文庫から刊行された短編集です。表題作は何度も読んでいるんですが、他に6編の短編が収められています。「お供え」「艮(うしとら)」以外は初読でした。3年ほど前に出版された吉田知子選集 「Ⅰ Ⅱ Ⅲ」にも収録されていないものです。


相変わらず吉田知子の世界です。日常から、ある境目を経て非日常へと移行していく、この小説世界は吉田知子独特のもので、彼女しか書けないものです。


「祇樹院」「迷蕨」「門」等、一人で、または知人と一緒に山道を歩いたり、どこかの家へ入っていく話が多いんですが、途中で空間がゆがんでくるというか、ずれていく感じ。そして自分の力ではどうにも抗うことのできない状態にはまっていく。ここが読んでいて何ともいえない気持ちにさせられます。そしてそれが吉田知子の小説の真骨頂なんでしょう。


やっぱり吉田知子はすごい。感服しました。

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