ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

東京物語

2016年01月09日 | 文学

 小津の映画とは関係ありません。
 奥田英朗の連作短編集のタイトルです。

 1978年4月4日、著者がモデルだと思われる主人公、田村久雄は、18歳でふるさと、名古屋を後にして東京に出てきます。
 この日一日を描いた短編から、1989年11月10日、ベルリンの壁崩壊の日、30歳を目前にした一日を切り取って見せた短編まで、主に1980年代の青春物語が、連作短編の形で紡ぎだされていきます。

 ユーモア小説というジャンルに入るのでしょうが、失われた時を追慕する郷愁が感じられ、人情小説の趣きを呈しています。
 11月10日、男ばかりで集まり、翌日結婚する仲間の前祝いを開いている中、青春が終り、人生が始まる、などと小癪なことをつぶやきつつ、青春の終わりを迎えた男たちがテレビでベルリンの歓喜の様子を見守るラストシーンは極めて暗示的です。

 私は1969年生まれ。

 1970年代の終りから80年代の終わりにかけて、時代を奮闘する若者の物語に、深い感銘を受けました。

東京物語 (集英社文庫)
奥田 英朗
集英社


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