昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(20)退職後の秀三(7)

2015-08-26 02:55:15 | 小説・手術室から
 警官に誘導されて現れた若者は、髪はぼさぼさに乱れていて、痩せた身体を折り曲げるようにうなだれている。
 
「彼も手に怪我をしていて遅くなりました」
 男の右手に真っ白な包帯がまかれている。
「申し訳ありません・・・」
 太った気のよさそうな警官に促されて彼は殊勝に頭を下げた。

「横道から一旦停止しないで猛スピードで出てくるなんて、そりゃまずいよ!」
 
 責任は一方的に彼のほうにあると宣言するように、おっさんのような警官が言った。
「彼は地方から出てきてアパート暮らしで大学に通っているのですが、生活が苦しくてアルバイトをしているんです」
 警官は彼の顔を見ながら言った。
「今日も徹夜のアルバイトからの帰宅途中だったんですが、急いでいたんですかね・・・」
 非難されるべきは彼のほうだとしても、そのへんの事情を配慮してほしいと言うように警官は付け加えた。

 費用を請求するのにまずい相手だなと秀三は憂鬱になった。
 咲子も何も言わないで黙っている。
 気の毒なひとのためにボランティア活動をしている信条からすれば、やはりこの相手には強く要求できないと思っているのだ。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 中国、上海の株がまた大幅に下がった。
 
 東京市場でもついに1万8千円台を割り込んだ。

 中国当局が早速また利下げなどの追加緩和措置を採ったことで、その後の欧米株は上昇に転じた。
 しばらくは中国に振り回されることになりそうだが、収束に向かっているのだろうか?  
  



なるほど!と思う日々(340)世界の怖い現状

2015-08-25 02:08:59 | なるほどと思う日々
 ある討論会を聞いていて、「世界の現状」に慄いた。

 A: 日本はアメリカに付き従っているだけでいいのか? 例えば中国と事を構えた場合、決して日本を守ってくれない。中国の核弾道ミサイルはアメリカ本土を狙う能力を持っている。
 日本を守るために自国を犠牲にする愚は犯さないだろう。
 B: 日本が軍事的に真に自立するには核兵器を保有するしかないということだ。
 

 C: 日本が核兵器を保有しても中国にとっては<抑止力>にはならない。だって、日本から核ミサイルを撃ち込まれて、1億人、2億人人民が死んでも、トップさえ生きていれば平気な国なんだから。
 D; 効果的な核兵器を持つとしたら、ボタンを押したら地球が吹っ飛ぶような大きなやつを持つしかない。これなら恐ろしくてどこも日本に手を出せない。
 

 E: 日本の平和愛好家が日本の原発だけを問題にして中国などの原発を問題にしないのはおかしい。中国はどんどん増設している。いざとなれば死の灰は日本にも及ぶ。
 F: 日本の<人権派>政治家、学者、マスコミなどが原発問題だけでなく、中国の人権問題を取り上げないのはおかしい。ダブルスタンダードじゃないか。
 
 G: 日本の政治家はもっと積極的に中国の人権問題やダライ・ラマに会うとか、チベット、ウイグル問題などの民族問題にも踏み込んだ発言をするべきだ。

 H: 安倍首相は従来の日本の首相に比べれば中国では評価されているらしい。中国の為政者からすれば言うことを聞く政治家が評価されるが、中国の知識派からすればむしろ中国に批判的な政治家のほうが敬意を払われる。
 
 意外なのだが安倍さんが中国を変えるのでは、と一部では期待されている。
 
 I: たしかに中国の独裁政権を揺さぶるとしたら、民主主義の良さを浸透させるために、中国の中間層(知識層を含めて)を懐柔する戦略を立てるべきだ。(トロイの木馬戦術みたいな)
 

 J; ただ、民主主義も現在ジレンマに陥っているんだよね。高齢者が増えて福祉や健康に関する費用が軍事費を超えて国家財政に負担になっている。
 
 K: 福祉関連費用など財政問題を具体的に改善しようとすれば、高齢者の反発を買い選挙に通らないという民主主義のジレンマだ。現実に日本のみならず、アメリカやEUなど民主主義先進国の頭の痛い問題だ。

 <好奇心コーナー>
 

 昨日、中国の経済不安をきっかけに世界同時株安が生じた。日本株も今年最大の下げ幅だった。
 
 世界の経済・財政問題は解決の目途が立っていない。
 核兵器問題を含めて、解決するための人類の叡智は期待できるのか!



三鷹通信(122)第26回みたか朝活

2015-08-24 04:11:57 | 三鷹通信
 昨日みたか朝活に参加しました。9時からの開始ですが、20分ほど遅刻。
 すでに満席15人ほど着席していた。申し込みなしで突然参加だったが偶然にもひと席空いていた。ラッキー!
 (この写真はちょっと古いものですが・・・)

 いつも参加して若い人たちから刺激を受けていますが、今日は新しい参加者も多く格別。
 下記に羅列します。
 
 *日本人は自立していない。甘い。あいまい。知識でロボット化されている。
  意志表現力が不足。言語力がない。
  ・・・たしかに・・・
  元大手の新聞社編集長のK氏はLOCO共感編集部を立ち上げた。
 
 まちの住民の視点で情報を発信、お店やまちを活性化するための編集部だ。
 編集長の他は女性ばかりという幸せな職場だ。

 *「自分で勉強して判断できる人間を作るんですね。固いコンクリートを突き破ってくる草花のように」自然との共生を訴えるTさん。

 その他にもいろいろ刺激的な情報が沢山提供され、最後は「好齢パートナーズ」主催者のH氏が絞めた。
 *今や700万人が認知症になる時代。ならないようにすることが肝心。
  面倒なことをさせることで脳が活性化する。
 *柏市のシニアにプチ就労。農家やレストラン、学習塾などに就労。その結果健康度、認知能力、活動量、血管年齢において改善。外へ出る数が向上。
 *福岡県では「70歳現役支援センター」を設置。プチ就労を提供。2年間で退職者5000人を登録、学習、就労マッチングを経て1800人が地元中小企業や子育て支援に就労した。
 *身近な所の成功例。「調布アイランドクラブ」
  
  伊豆諸島の鮮魚、野菜を調布飛行場からの定期便で調達、11時には調布のレストラン32店舗に配達。年間粗利益400万円。

 たまたま隣に座ったH氏はぼくと同郷の金沢出身とか。退職後、金沢の連中と共同でIT関連事業を立ち上げ中と意気軒高。
 「野町です」「ぼくは隣の弥生町」思わぬところでつながりました。
  世間は広いようで狭い。

 午後は麻雀会。パーティでエネルギッシュな女性幹事に刺激を受けました。
 (この写真は当日のものではありませんが・・・)

 <好奇心コーナー>
 

 その夜、三鷹市中央通りで「みたか阿波踊り」がにぎやかに繰り広げられていました。  
 


 刺激いっぱいの一日でした。

 

  


 

小説<手術室から>(19)退職後の秀三(6)

2015-08-23 04:04:58 | 小説・手術室から
「まったく、酔っ払いの休息所じゃないんだから・・・」
 
 気の強そうなおばさんは秀三と目が合うと言った。
「ここは盛り場に近いもんだからあんなのが多いんですよ。酔っぱらって泊まっていくつもりなんですよ」 
 白衣を着ているから看護婦さんなんだろう。まだぷんぷんしている。

 すでに息子は手術室に運び込まれ、その前で家内がひとりしょんぼりと座っていた。
「車に撥ねられたんじゃなくて自転車同士で出合い頭にぶつかったんですって」
 
「運が悪いと言うか、俊が顔面を強打したらしいの。相手は擦り傷ぐらいで今警察の事情聴取をうけているらしいけど・・・」
「それで怪我はどの程度なんだ」
「ほほ骨が陥没して、あごもやられているらしいわ。相手が横道から確認もしないですごい勢いで飛び出してきて俊を跳ね飛ばしたらしいの。俊は悪くないみたいだけど・・・。変な顔にならなければいいけど」
 いつも元気な彼女が憔悴しきった顔をしている。

 30歳過ぎても親の家に居候していた彼を、自立しなさいと口を酸っぱくして追い出したけれど、こんな有様ではますます嫁の来てがなくなると自責の念に駆られている顔つきだ。
 すると、エレベーターが開いて警官に誘導された若い男が近づいてきた。

 ─続く─

 <好奇心コナー>
 

 北朝鮮と韓国の高位級会談が行われるというニュースが飛び込んできた。
 
 金正恩は思っていたより大人になっていた。
 一方ではロシアの首相が択捉島を訪問したという
 
 安倍首相がプーチン大統領を呼ぼうとしているのに水をかける行為だ。

 外交は丁々発止のやりとりが行われ一筋縄ではいかないということだ。
     



小説<手術室から>(19)退職後の秀三(6)

2015-08-22 05:06:29 | 小説・手術室から
 ・・・東京郊外では有数のこんな大きな大学病院で対応できないなんて・・・
 まったく腹立たしくて文句を続けたかったが、息子の搬送先はもうH救急病院に決められているんだ。
 ストレッチャーに載って病院から出てきた息子は死んだなまずのように身動きひとつしていない状態で再び救急車に乗せられた。
 

 妻が同乗し、ピーポーピーポーと騒がしい音を振りまきだした。
 秀三は駐車場に戻り、姿を消した救急車を自分の車で追った。
 I道路に面したH救急病院と大きな看板を掲げた病院だということは彼も知っていた。
 この通りはよく利用するので記憶の片隅にあったが、それ以上の情報を持ち合わせていなかった。
 玄関先の駐車スペースに車を入れて、ドアを開けると酔っ払いが怒鳴っていた。

 
「具合が悪いから診てくれって言っているんだろう。早く医者に取り次げ!」
「あなたは昨日も来たじゃないですか。また今日は朝っぱらから酔っぱらっちゃって! 酔っ払いをいちいち診る余裕はうちにはありません! 今救急患者が運び込まれて大変なんですから!」
 白衣を着たおばさんが怒鳴っている。
「病院が病人を診れないなんて、ふざけやがって!」
 ここでも診療を拒否している。
 酔っ払いはふらつく足で扉を叩くように開けると出て行った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 北朝鮮が韓国に対して、軍事行動準備を完了したと最後通告した。
 
 傍観していて大丈夫なのだろうか?  
 
       




小説<手術室から>(18)退職後の秀三(5)

2015-08-21 05:37:44 | 小説・手術室から
 救急隊員と白衣を着た二人の男が救急センターの入り口で何か話していた。
「司ですが・・・」
 秀三が挨拶すると救急隊員が振り返った。     
「司さんのお父さんですか。実は息子さんは顔面を骨折されていて緊急に手術が必要らしいんです。ところがこちらには今対応すべきお医者さんがいないらしいんです・・・」
「そうなんですか?」
 秀三は隊員の言葉をさえぎって医者と思われる白衣の男を見て訊いた。

「今、別の救急患者にかかりっきりでお宅の息子さんに対応できる医師が他にいないんです。で、まことに恐れ入りますが別の対応できる病院へ移っていただきたいんですが・・・」
 
 背の高いほうの眼鏡の男がことさらに冷静な言葉づかいで言った。
「こんな大きな病院で対応できる医者がいないというんですか?あなたはどうなんですか?」
 秀三は二人の白衣の男を見比べて声を高めた。
 声が少し裏返っている。
「わたしは耳鼻科の人間で、彼は小児科でまことにもうしわけないんですが、おたくの息子さんに対応できないんです」
 となりの黙っている小柄な方を見てノッポのほうが言った。
「もちろん応急手当てをしておきましたからしばらくはもんだいありません。というわけで、今救急隊の方に近くの救急病院を当たってもらっていたところなんです」

「信じられない・・・」
 秀三はつぶやいた。
 ・・・しばらく大丈夫だと言うんなら、ほかの医師を呼び出したり、今手術中の医師が終わるのを待つとか方法はいろいろあるんじゃないの?・・・
 修三は納得できなかった。
「ここから10分あまりのH救急病院で受け入れていただける旨了解を取りましたのでそちらにご子息をお送りしたいのですが・・・」
 人の好さそうな救急隊員が割って入った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 ハゲブダイという魚は自分の吐き出した袋の中に自分を閉じ込め、鋭い鼻をもつウツボなどの天敵から身を守る。
 
 
   


小説<手術室から>(17)退職後の秀三(4)

2015-08-20 02:34:24 | 小説・手術室から
「おい! 俊が怪我をしたらしいよ」
「俊が? けが?」
 俊は最近家を出て駅の近くのアパートを借りて一人住まいを始めたばかりだった。
「救急車でK病院に運ばれたらしい・・・」
 朝早くから出かけて帰ってきて靴を脱ぎながらくたびれた声で反応していた妻の姿勢が一変した。
「救急車? どこを怪我したの?」
「自動車事故らしい。どこかはわからない。ともかくK病院へ行かなければ」

「自動車事故? 何言っているの。大変じゃない!」
 秀三の顔を直視すると詰問する口調になった。
「命には別条ないみたいだ・・・」
「そんな問題じゃないでしょう! 自動車に撥ねられたのならたいへんじゃない! 早く車出して!保険証は? 免許証は持った?」
 いつもの亭主を咎める口癖だ。
 ・・・保険証なんて俊が持っているだろう。もうウチの被保険者じゃないんだ・・・

「それでどこを怪我したの? どういう状態なの?」
 車に乗り込んでからも詰問が続いた。
「医者が説明するからって看護婦のやつ言わないんだ」
「あの子は自転車に乗っていたんでしょう? 車には気をつけなさいって言っていたのに・・・」
 10分ばかりで病院の救急センターに車をつけると、救急車が赤色灯を回したまま停まっていた。
 

 ─続く─