昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(15)退職後の秀三(2)

2015-08-18 03:50:52 | 小説・手術室から
 シニアSOHO普及サロン・MのH代表はスローガンづくりの名手だ。
「ただならぬシニアを目指せ!」と我々会員にはっぱをかけた。
 ITの新時代を先取りして、各種のパソコン教室活動が始まった。
 秀三たちは「パソコンはどうも?」というシニアが好きな囲碁に着目した。
 囲碁を楽しみながらパソコンになじんでもらえるのでは、と考えたのだ。

 たまたま、M市はIT関連専用ビルとして建設した産業プラザビルの1階にアイカフェを設置していた。
 
 彼らはそこのパソコンに世界最大級を誇る囲碁ネットと交渉して、無料でネット囲碁ができる仕掛けを作った。
 
 毎月何回かそこでネット囲碁を楽しむ講座も開いた。

 当時IT普及を重要な政策と位置づけた総理大臣も視察に見えるほどに活動は盛り上がった。
 
 ネットで日本各地、あるいは世界各地の囲碁愛好家と知り合い、いずれは顔の見える交流にまで拡げようというという「ただならぬ」構想にまで期待は広がった。
 しかしあくまでも想いだけで、身体を張って実現するまでには至らなかった。

 ・・・もっと積極的にやるべきだったか・・・
 そんなとりとめもない思いに浸っている秀三をからかうように電話が鳴った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 戦地から100通も子どもに手紙をくれる優しいお父さんが戦犯として死刑になった。
 子どもは父親が犯した罪を謝罪するためにイギリスに渡った。
 
「彼を死刑にしたのは裁判における私の証言だったのだ」
 相手はそう言ってくれた。
 それでも彼は父親の罪に対して許しを請うた。
 しかし相手は彼に伝えた。