昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(19)退職後の秀三(6)

2015-08-22 05:06:29 | 小説・手術室から
 ・・・東京郊外では有数のこんな大きな大学病院で対応できないなんて・・・
 まったく腹立たしくて文句を続けたかったが、息子の搬送先はもうH救急病院に決められているんだ。
 ストレッチャーに載って病院から出てきた息子は死んだなまずのように身動きひとつしていない状態で再び救急車に乗せられた。
 

 妻が同乗し、ピーポーピーポーと騒がしい音を振りまきだした。
 秀三は駐車場に戻り、姿を消した救急車を自分の車で追った。
 I道路に面したH救急病院と大きな看板を掲げた病院だということは彼も知っていた。
 この通りはよく利用するので記憶の片隅にあったが、それ以上の情報を持ち合わせていなかった。
 玄関先の駐車スペースに車を入れて、ドアを開けると酔っ払いが怒鳴っていた。

 
「具合が悪いから診てくれって言っているんだろう。早く医者に取り次げ!」
「あなたは昨日も来たじゃないですか。また今日は朝っぱらから酔っぱらっちゃって! 酔っ払いをいちいち診る余裕はうちにはありません! 今救急患者が運び込まれて大変なんですから!」
 白衣を着たおばさんが怒鳴っている。
「病院が病人を診れないなんて、ふざけやがって!」
 ここでも診療を拒否している。
 酔っ払いはふらつく足で扉を叩くように開けると出て行った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 北朝鮮が韓国に対して、軍事行動準備を完了したと最後通告した。
 
 傍観していて大丈夫なのだろうか?