昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

言葉(25)ずるい政治

2015-08-04 03:19:28 | 言葉
 「法的安定性は関係ない」と発言した磯崎首相補佐官が参考人招致で謝罪。
  軽いというかテキトーと言うべきか。
 これからも国会での議論はこのことをベースに上滑りして行くのだろうか?

 そこで作家村上春樹が元文化庁長官、京都大学名誉教授、心理学の河合隼雄と対談した内容を思い出した。
  <村上> ・・・湾岸戦争のときにぼくはアメリカにいたんでですけど、あれはずいぶんきつかったです。結局日本人の世界の理屈と、日本以外の世界の理屈は、まったく絡み合っていないというのがひしひしとわかるんですね。・・・自衛隊は軍隊ですよね。それが現実にそこに存在するのに、平和憲法でわれわれは戦争放棄しているから兵隊は送れないんだと、これはまったくの自己矛盾で、そんなのどう転んだって説明できないんですよ・・・。
 そうするとぼくらの世代が60年代の末に闘った大義、英語で言うと「コーズ」は、いったいなんだったのか、それは結局内なる偽善性を追求するだけのことではなかったのか、どんどんさかのぼって、自分の存在そのものが問われてくるんですね。・・・

 <河合> 日本は、まあ、いえば、非常にずるい方法をやっているのですね。だから、世界中がもっとずるくなったらいいんじゃないかという気がしているのです。ずるさの加減はどうなのかとか、ずるくなることの弊害はないのかとかもっと追究して、ずるさを洗練しなければいかんのですね。・・・ぼくがずるさと言っているのはもう少し違う言い方をすると、人間の思想とか、政治的立場とか、そういうものを論理的整合性だけで守ろうとするのはもう終わりだというのがぼくの考え方なのです。人間はすごく矛盾しているんだから、いかなる矛盾を自分が抱えているのかということを基礎に据えて物を言っていく、それは外見的に見るとやっぱりずるいわけですね。 
 
    
 <好奇心コーナー>
 
 
 田辺聖子: 
 私はあんまり仕事が大変だったから、話し相手が欲しいなと思ってたのね。当時は母と二人暮らしだったんですが、母だと話し相手になるどころか、逆に、私がふんふんと聞いてあげていると、愚痴やら何やらずっと言っている。こんなおばはんの相手やってられへんわと思ってた。・・・で、ある日「あたしはあたしでちゃんと考えてる」と筋道立てて言ったら、もうタイヘン。向こうは自分に非があるのをはっきりさせられて、猛然と怒っちゃったのね。もともとが遠慮のない関係なんだから、筋道を持ち込まずに、何となく誤魔化して物事を進めないといけない。(文芸春秋2007.1)