昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(6)美人眼科医(2)

2015-08-01 02:25:23 | 小説・手術室から
 ・・・少しは待っている患者のことを考えたらどうだ・・・
 もう美人女医に会えるという期待はどこかえ飛んでしまっていた。
 そしてやっと秀三が検査室に呼び込まれる順番が回っていた。
 
 ここにも3人、患者が並んでいた。

 視力を測ると、先生が診察している部屋をカーテンで仕切った所で看護師さんに腕をまくられ、血圧計をセットされるとそのまままたしばらく待たされた。
 
 とつぜんカーテンがさっと切り裂かれるように開いて、先生が現れナイフのように冷たい手が伸びて彼の脈をとった。

 色白の肌に大きめの真紅の唇が真一文字に引き締められ切れ長の澄んだ目がじっと血圧計の目盛に注がれる。
「血圧が高いですね。上が135、下が92。下が高いですね」「・・・」
「今までもそうでしたか?」
 そう言いながら、カルテに<高血圧症>と記載している。
 今まで血圧が高いと言われたことはないし意識もなかった。
 もっともそんな検査を受けたこともないが、退職後またたく間に5キロも体重が増えたのが原因かもしれない。

「女性陣に囲まれたせいですかね・・・」
 彼はきれいな先生をからかってみたくなった。
「血圧は測る時や状況でも変りますけど・・・」
 先生はそれには直接答えないでさらりと受け流した。
 若干の質問をされた後、眼底検査をするために目薬を差し20分ほど待たされ再度診察を受けた。

「やはりこの血管の様子から見ますと血圧は高いですね」
 
 状況なんかのせいではないことを」証明するように秀三の目をじっと見つめながら言った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 先日日本人宇宙飛行士由井さんが乗り込んだISS(国際宇宙センター)が見れるかもしれないそうだ。