昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(19)退職後の秀三(6)

2015-08-23 04:04:58 | 小説・手術室から
「まったく、酔っ払いの休息所じゃないんだから・・・」
 
 気の強そうなおばさんは秀三と目が合うと言った。
「ここは盛り場に近いもんだからあんなのが多いんですよ。酔っぱらって泊まっていくつもりなんですよ」 
 白衣を着ているから看護婦さんなんだろう。まだぷんぷんしている。

 すでに息子は手術室に運び込まれ、その前で家内がひとりしょんぼりと座っていた。
「車に撥ねられたんじゃなくて自転車同士で出合い頭にぶつかったんですって」
 
「運が悪いと言うか、俊が顔面を強打したらしいの。相手は擦り傷ぐらいで今警察の事情聴取をうけているらしいけど・・・」
「それで怪我はどの程度なんだ」
「ほほ骨が陥没して、あごもやられているらしいわ。相手が横道から確認もしないですごい勢いで飛び出してきて俊を跳ね飛ばしたらしいの。俊は悪くないみたいだけど・・・。変な顔にならなければいいけど」
 いつも元気な彼女が憔悴しきった顔をしている。

 30歳過ぎても親の家に居候していた彼を、自立しなさいと口を酸っぱくして追い出したけれど、こんな有様ではますます嫁の来てがなくなると自責の念に駆られている顔つきだ。
 すると、エレベーターが開いて警官に誘導された若い男が近づいてきた。

 ─続く─

 <好奇心コナー>
 

 北朝鮮と韓国の高位級会談が行われるというニュースが飛び込んできた。
 
 金正恩は思っていたより大人になっていた。
 一方ではロシアの首相が択捉島を訪問したという
 
 安倍首相がプーチン大統領を呼ぼうとしているのに水をかける行為だ。

 外交は丁々発止のやりとりが行われ一筋縄ではいかないということだ。