昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(10)村上晶先生(2)

2015-08-09 04:28:56 | 小説・手術室から
「昨日手術されたKさん2番へどうぞ!」
 力強い女性の声がスピーカーを通して響いた。
 ・・・2番? 村上晶先生だ・・・
 やはり女の先生だった。
 秀三は張りつめた気持ちがちょっと萎えるような気がした。
 だがすぐ、「手術をした」という言葉の持つ力強さで不安が少しカバーされたような気になった。
 そして2番札がそれを補った。
 ・・・女性とはいえ評価が高いんだ・・・

 しばらくして秀三が呼び込まれた。
「失礼します・・・」
 ドアを開け恐る恐る入った。
「どうぞ・・・」
 前の患者のカルテを書きつけている先生がくぐもった声で応えた。

 左手半開きになったカーテンの奥に暗いスペースが見える。
 
 手前からだけの照明に小柄な白衣姿の先生が浮かんで見えた。
 ・・・思ったより広い部屋を占有しているんだ・・・
 少し緊張して先生の前に座った。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 高田みづえが31年ぶりでNHKの舞台に立ってデビュー曲の<硝子坂>を歌った。
 
 その頃と全然変わらない。
 
「おかみさんがんばってきてください」
 若島津に嫁いで松ケ根部屋のおかみさんになった彼女は今でも瑞々しさを失っていなかった。