昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(22)息子の手術(1)

2015-08-28 05:00:29 | 小説・手術室から
「手術後の経過がよくないみたい」
 息子の俊が手術してから毎日病院へ顔を出していた咲子が、五日ほど経過したころ言った。
「そんなバカな! 手術はうまくいって1週間で退院できるって医者が言っていたじゃないか。何が問題なんだ」
 秀三は直ちに病院にかけつけると、俊に聞いてみた。
「おかしいんだ。なぜ手術跡がふさがらないんだろうなんて担当医自身が言っているんだぜ」
 

「医者がわからないなんて普通口走るか?」
 聞いてみると、実際に執刀したのはここの病院の医師ではなくて、有名大学付属病院から派遣された手術の専門医だった。
 後の処置はこの病院の若い医師が診ているのだ。
 ・・・おかしい・・・
 秀三は近くに友人の池田が住んでいるのを思い出した。
 ・・・彼の意見を聞いてみよう・・・

 早速電話したら、多忙な彼だが幸いにも彼は在宅していた。
「えっ? 俊くんが? 小学校のころウチヘ来たことがあるよね? すっかり変わってしまっただろうな・・・」
 彼はすぐやってきた。

 彼とは大学の教養課程の時、同じ下宿で2年間一緒に過ごした仲だ。
 秀三は経済学部だったが彼は医学部だった。
 池田は普段は笑みを浮かべていて、しゃべり方も優しく付き合いのいい男だったが、麻雀の時その性格が垣間見えたのを思い出した。
 容赦なく弱いものから取り立てる冷徹な面も持ち合わせていたことを。
 
 <笑顔と冷徹>
 医者として組織の中をうまく渡っていく才があることを当時から感じ取っていた。
 アメリカの大学病院での研修を終え、帰国後母校の附属病院、他の病院などで経験を積み現在はS医科大学付属病院の副院長である。
 

 秀三から経過を聞き終えると、彼は看護師に「主治医にお会いしたい」と立派な肩書のついた名刺を渡した。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 女子バレーをテレビ観戦した。
 高さを生かした攻撃力はもちろん、堅いディフェンスを誇るドミニカ共和国との対決に久しぶりで興奮した。
 第1セットを25-18で勝っている。
 ところが、第2セットで20-25で落とし、第3セットを30-32で落とした。
 流れが悪い。ロシア戦のようにこのままずるずると敗戦だなと思う。
 しかし、風呂に入って出てくると、エースの木村を古賀など若手に替えて踏ん張っている。
 25-15で対とし、第5セットも15-13で勝ち切った。
 
 ・・・日本チームに粘りがでてきた・・・
 心地よい結果だった。