たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

研究テーマの見つけ方 -研究テーマを決める上で気を付けるべきこと-

2015-10-14 23:27:29 | 自然科学の研究
 さて、今日は久しぶりに、腹くくって書く感じの記事です(笑)。お前がそれ書くんかい!という皆さんの心のツッコミを極限まで無視して書いていきます。この記事はアクセス数が良ければ、書き足していこうと思います。

 「研究テーマの見つけ方!」

 について、かなり普遍的に成り立つことだけを書いてみようと思います。えーっと、ちなみに僕は理系ですが、今回は文系の方もテーマを決めるときにも成り立ちそうなことを意識しながら書きます(書けてるかどうかは別)。
 卒業研究、卒業論文、修士論文、博士論文等の学位がかかってる研究テーマの設定の仕方についてはもちろんのこと、その先、ポスドクだろうが、助教だろうが、講師だろうが、准教授だろうが、教授だろうが、その後であろうが、どんな立場でどんな分野であっても、研究テーマを決めるときに、これは普遍的だろ!、と思うことだけを、重要度順に書きます。


 1.タイムリミットを意識する

 まず打算的な視点から。

 卒研だったら1年、修士だったら2年、博士だったら3年で、絶対にそれなりの結果を出さなきゃいけません。テーマを決めるときにまず考えるべきことは、「このくらいの時間、研究する時間があるな」ってことです。タイムリミットの設定は、人によるし、分野によるし、立場によるし、プロジェクトによります。でも、学位だったら上に書いたことで確定だし、それを学生に与える場合でもそうですよね?

 つまり、例えば、超すごい研究テーマをする(してる)んだから、ということを大義名分に、あなたは留年します!ということを正当化してはいけません。これは学生側の責任ではなく、完全に教員側の責任です。っていうかむしろ、研究指導をする教員は、教育としては、時間管理だけやってりゃ良いんじゃないかというくらい。あとは各学生が、自分で好きなように能力を身に着けて(そのときに指導教員から能力を盗んでもいいけど)、なんらかの結果を出して、それが学位に値するかを評価すればいいと思います。
 「それはやってもいいけど、卒業が延びるよ?」「そのテーマは時間がかかりすぎるわりに良い結果が期待できないと思うけど、やりたいならやれば?」と現実的な提案をするのが指導教員の役割だと思います。

 この時間内に、最悪でも、これくらいの結果が、これくらい(80パーセントくらい)以上の確率で出るから、タイムリミットには十分に間に合うはず、ということを設定するんだということが、イコール研究テーマを見つけ設定するということなのです。タイムリミットを自らの死にするのだとしてもね。

 かといって、研究は誰もやったことない、上手く行くかわからないことをやるわけですから、この時間で100パーセント絶対にこの結果がでる!、というのだと、研究になっていませんので、ご注意を。それは、研究ではなく作業です。
 まぁ、たとえ上手くいかない割合が20パーセントでも、現実としてタイムリミットまでに結果が出なければ、本人にとっては100パーセントになっちゃうから、この辺りが、研究テーマを決めるうえで、めちゃくちゃ難しいところだと思うんだけどね。

 2.一緒にやる人を決める

 これはあまり説明が不要かもしれませんが、一緒にやる場合は、一緒にやる人を決めましょう。一緒に研究したい人と楽しく研究してね。
 順番が大事ですが、研究する時間を決めた上で、一緒に研究する人を決めましょう。もしくは、一人でやる、ということを確定させましょう。

 これも時間がかなり大事で、極端な話、相手が一生かけてこれをやる、と思っているような人で、こちらが卒研の一年間だったら、上手く行くはずがありません。現実的なことで言うと、例えば、こちらが就職決まっている大学4年生で、共同でやる卒論のペアが、なんらかの理由で留年しようと思っている人だとします。そうだとすると、相手はもう一回卒論してもいいわけですから、あまり上手くいかないんじゃないかなぁということです。
 急いで付け足さなくちゃいけないけど、もちろん、相手が、こちらのことを考慮してくれるような相手だったら良いですけどね。

 これは大事なことですが、タイムリミットに余裕のある相手が、タイムリミットに一切余裕がないこちらに対して、合わせてくれそうか?、ということは、とってもとっても重要です。
 たとえ研究の途中でも、相手が、こちらのタイムリミットよりも、得られる業績の質を選択しようとした時点で、その人との共同研究は強制終了させるべきでしょう。特に学生の場合、1年無駄になるということは最低でも1年間の授業料分は無駄になるわけです。そんな、こちらのことを一切考えていない相手と研究をしていても良いことはありません。新しいことを今からでも始めたほうが満足する可能性が高いです。その相手が指導教員でないことを願うばかりです(笑)。

 3.その環境での最終出力方法から考える

 主に、理系の実験系の研究室だったら、自分が使える実験装置にあたるものを意識しましょう。そこからしかデータは出ません。どんなデータが得られうるのかを、まず考えましょう
 理論研や文系の研究室でも、ある程度、同じだと思います。ソフトウェアや言語、どういう(統計的な)解析or(論理的な)考察をするのか、どういう分野の文献を参考にしようするのか、、テーマのストーリーを決めるのは、そこからだと思います。理論研の場合は、計算時間を意識するという部分もあるかもしれません(って、それは1か笑)。

 現実的に、何を測るのか?、何を掃き出すのか?、ということを決定しないといけません。こういうときに、まだ、目的とか、こういう価値観が、こういう先行研究が、等ということはあまり意識しなくていいと思います。まず、論文として、もしくは発表として、「結果」にあたる部分として、成り立つかどうか?ということが、大事です。

 4.明日、何をどう進捗するかを決める

 ある研究において、常に、次何をするべきか?、がわかる状態である人は、修士号に値します。
 こんなもの測定しよう!、この式とこの式を自己無撞着に解いたらどうなるかな?、これについてアンケートとろう等、とにかく、小さなことでも、これをとことん調べるぞ!、と思ったら、とにかく明日やることを探しましょう。それを毎日積み重ねられたら、いつの間にか研究は終わっています。

 明日何をするか?ということがわかっていないのに、申請書だけは立派に書いても仕方ありません(そんな申請書は通らないと思いますが、、だいたいの審査はテキトーだから通っちゃうこともあるんだろうなぁ)。
 科研費を申請する場合は、あとはカネさえあれば、一気にがっつりと進捗しますよ?、というところを見せないといけないと思います。よーするに、ここでも時間ということはあるのですが、通ったらこれをやるからー、という姿勢ではなく、今のこの時点で、ここまでもうやっちゃってます!というところを、見せたほうが良いと思います(これは研究に限らず、投資してもらう時の基本)。

 明日、あの人と話そう!、でも構いません。とにかく今できることを考えろ!、ってやつです。

 5.そのテーマの最終目標を設定する

 明日やることが常に決まっている状態で、最終目標を模索しましょう。この最終目標は大きければ大きいほど良いです。別にタイムリミットまでに達成される必要はありませんが、とにかく、このテーマはこれを目指しているんだ!ということを考えなくちゃいけません。
 なぜなら、それこそが、あなたのオリジナリティーであり、ここがあるからこそ、研究の方向性があなた色に染まっていくからです。

 だって、どーせ、指導教員や上の人やボスの下でやってるんでしょ?私はそのボスだ!という人も、そのさらに先の目標を考えないといけませんよね??
 例えば、教育社会学でスクールカーストについてテーマを遂行していたとする。スクールカーストの実態とメカニズムを調べることで、何を明らかにしたいのか?、を考える。例えば「人間は平等なのか、不平等なのか」を明らかにしたいと思ったとしよう。だとしたら、さらにそれを生命体のシステムとして考えたいのか、それとも人間の性質としてそうなのかを考えたいのか、それともそれを利用して「いじめをなくす」、さらには「世界中から紛争をなくす」ということが最終目標なのか、それはあなたの個性次第で、いかようにも方向性を定めることができる。

 そういった考察をきちんとし尽くせば、俺は、現在どんなクソみたいな研究テーマであっても、すべての研究テーマには価値があると思います。もしくは、やる人が変われば。

 6.無限に金持ちだったら、自分は何を研究するかを考える

 さて、ここからは、完全に打算ではない部分です。まぁ、テーマ見つけなくちゃ!と思って、ここまで来るのに、めちゃくちゃ早くて5日間はかかると思いますが。
 テーマが決まった!と思ったら、これを考えてください。「無限に金持ちで、今までやってきたことも所属も一切関係ないのだとしたら、自分は何を研究するだろうか?」

 それは、人によっては、今さっき決めた研究テーマかもしれませんし、全然違う分野かもしれませんし、「俺はAKBを研究したい!」と思うオタクさんもいらっしゃるかもしれません(笑)。それは全然いいのですが、大事なのは、今さっき決めたテーマと本当にやりたいこととが、どれくらい乖離しているか?、ということを認識することです。
 これをするかしないかで、方向性がまた変わってきますし、さらに次テーマを決めるときにも、参考になります。

 現実的なことは結構なことで、それはそれで大事ですが、大切な時間を使って研究するわけですから、本当に研究したいことという価値観を大切にしてください。
 研究者は、とにかく俺はこれやりたいんだから、そのために必要な分だけ、カネくれ!という態度で良いと思います。この分野ではこれが必要だから、とか、JSTにこういう領域があるから、とか、そういうことは一切考えずに、とにかく、自分がやりたいのはこれ!、と思うことも必要です。それが実現されなくてもね。

 こう思って、決まりかけたテーマがグラついたら、また初めから考えましょう。決めたから!っと突っ走って、1~数年を無駄にするよりはマシです。

 7.人生であと何回テーマを決めるかを考える

 研究テーマ決めるのって、多い人でも人生で100回以下なんじゃないかなぁと思います。
 研究テーマを決めた瞬間に、どの(レベルの)ジャーナルに載るのか?、ノーベル賞がとれるか?、などは、ほとんど決まっていると言っても、過言ではないと思います。
 もちろん、方向性とかあるので、それだけじゃないですが、それくらい大切なことです。

 あまりにもくだらないことをしなくてはいけない状況の場合、エフォートは最低限でいいと思います。
 よーするに、最後は、エフォートを決めるということでもあるんですが、、他のテーマもいつからでも設定できるし、研究以外にも面白いことはたくさんあります。特に4年生や修士で卒業する人は、旅行に行ったり、友達としゃべることだって、人生において価値あることです。ただし、研究ってことは最後かもしれないから、だからこそ、もう一回テーマの設定そのものを考え直す、っていうことも良いと思います。

 どんな立場であれ、人生でそんなに多い機会じゃない、研究テーマを見つける、という時間帯を尊く思いながら、大切に決めて、楽しく研究してほしいと思います。


 ということで、順番に7つ挙げてみました。
 うーん、やっぱり、テーマ見つけるのって、改めて、大変ね。それは、卒研だから、とか、予算とらなくちゃいけないから、とか、そういうことじゃなくて、本質的に、難しいことだと思います。

 でも、研究って、たぶん、現代で、裕福な人が一番したい行為です。だから、それを幸せに思えたら、勝ちゲーかもね。
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