スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

女流王位戦&第三部定理六証明

2024-05-24 19:06:22 | 将棋
 飯塚市で指された昨日の第35期女流王位戦五番勝負第三局。
 福間香奈女流王位の先手で5筋位取り中飛車。後手の加藤桃子女流四段が超速銀で対応し,6筋で銀が向かい合ってから駒組。先手が銀冠,後手が左美濃になりました。
 この将棋は後手が8筋を突破しにいったときに先手が7九に角を打って受け,この角の威力で先手が1筋の突破に成功。後手はこれで悲観してしまったようです。確かにすでに後手が苦しくなっていたと思いますが,諦めなければならない局面ではなかったようにも思えました。
                                        
 ここで後手は☖3三同桂と取りました。
 ここから先手が☗5四歩☖同歩☗3四歩☖同金☗6五歩☖5三銀☗5五歩☖同歩☗5四歩☖同銀と攻めたのは流れるような手順。後手としてもいいなりになるほかありませんでした。
                                        
 ここまで進んでしまうと☗5七角と出て☗7五角を狙う手が厳しい上,☗9七角も狙いとして残って先手が勝勢です。第1図で☖3三同銀と取ると☗2三成香とされますが,そこで☖4二玉としておけば,実戦のように先手が一方的に攻めて勝つのは難しく,どこかで受けに回る必要が生じそうなので,苦しいとはいえ後手もまだ戦えたのではないでしょうか。
 3連勝で福間女流王位が防衛第23期,26期,27期,28期,30期,31期,32期,33期,34期に続く六連覇で通算10期目の女流王位です。

 國分は,現実的に存在する個物res singularisにはコナトゥスconatusがあるということを,スピノザは十分に説明していないと解しています。それは,これらの事柄を論証するにあたってスピノザがなしている論証Demonstratioに,いくらかの不備がある,誤りerrorという意味での不備ではなく,説明不足という意味での不備が含まれていると解しているということでしょう。そこで,実際にスピノザがどのような訴訟過程をもってこれらを証明しているのかということを,改めて確認しておきましょう。
 第三部定理六の証明Demonstratioは以下のようになっています。
 まず,個物はDeusの本性を一定の仕方で表現するexprimere様態modiです。これは第一部定理二五系に訴求することができます。
 次に,神の本性と神のpotentiaは同じです。これは第一部定理三四に訴求することができます。よって,神の本性を一定の仕方で表現するということと,神の力を一定の仕方で表現するということは同じです。このことから,個物にはある力があるということが理解できます。これにより,第三部定理六の証明に必要なのは,スピノザがコナトゥスを力とみなしていることだと分かります。
 さらにスピノザは,現実的に存在するある個物の存在を除去するようなものは,その個物の中には含まれていないといいます。これは第三部定理四に訴求することができます。そして最後に,現実的に存在する個物は,自己の存在を除去しようとする者に対しては対抗するといい,これを第三部定理五に訴求します。ここまでの訴求とは異なり,このことを第三部定理五に訴求できるのかということについては,僕は疑問を有します。第三部定理五は,たとえばAがBを滅ぼし得る限りにおいて,AとBが相反する本性を有するのであって,この限りにおいてAとBは同じ事物の本性を構成することができないといっているように解せるのであって,BがAに対抗するということがこのことからいえるようには思われないからです。
 第三部定理四は,現実的に存在する個物は,それ自身によってではなく,ほかのものによって滅ぼされるといっていて,ここには確かに,たとえばAを滅ぼすような本性はAのうちにはないということが含まれているといえると思います。
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