スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

受動的な満足&椅子と机

2022-03-11 19:17:47 | 哲学
 第四部定理五二は,理性ratioから生じる自己満足acquiescentia in se ipsoが最高の満足であるといっています。また,第五部定理二七では,第三種の認識cognitio tertii generisから最高の精神mensの満足が生じるといわれています。理性から生じるのであれ第三種の認識から生じるのであれ,これはどちらも能動actioですから,自己愛philautiaではなく自己満足であるということになります。つまり,能動的な自己満足とというのは,人間にとっての最高の満足であることになります。
                                   
 では受動的な満足のうち最高の満足はどのような感情affectusであるのかといえば,それは受動的な自己満足すなわち自己愛であると僕は考えています。このことは以前に考察して示してありますから,なぜ僕がそのように考えているのかということについてはここでは繰り返しません。ただ,受動的な満足のうち最高の満足は自己愛であると僕がいうとき,気を付けておいてほしいことがあるのです。
 自己満足あるいは自己愛は,第三部諸感情の定義二五により,基本感情affectus primariiとしては喜びlaetitiaの一種です。したがって,受動的な満足のうち最高の満足は自己愛であるというとき,それは現実的に存在する人間にとって最高の受動的な喜びは自己愛であると解してもらっても構いません。ただそれが最高であるというとき,僕は価値的な側面からそのようにいうのではないのです。むしろ量的な面からいっているのです。つまり僕は,人間が受動的である限りによって最も大きな喜びを齎すのは自己愛であるといっているのであって,自己愛という感情が受動的な感情のうち最も肯定的に評価されるべき感情であるといっているのではありません。むしろこの側面からみれば,自己愛は最も否定的に評価されるべき感情になり得ます。なぜなら,スピノザの哲学における新たな道徳律は,能動と受動passioの比較なのですから,最も能動的な喜びは高く評価されなければならず,最も受動的な喜びは低く評価されなければならないことになるからです。
 第三部定理二六備考は,自己愛の一種である高慢superbiaを狂気といっています。それは高慢が最も大きな受動的な喜びとなり得るがためのことだと解するのも有力だといえるでしょう。

 9月2日,木曜日。妹を迎えに行きました。この日まで通所施設は休業でしたから,迎えに行ったのはグループホームです。このとき,グループホームに地域担当支援主任のSさんがいましたので,話を伺ったところ,8月24日に出勤していたのは73人だったとのことでした。この73人というのは,おそらく利用者だけでなく,職員も含めた数だったと思います。その73人は全員がPCR検査を受けました。妹もそのひとりに含まれていたわけです。検査の結果は73人全員が陰性であったとのことでした。
 その後,妹の前の担当者であったKさんに妹の部屋に通されました。そして,椅子と机があった方がいいのではないかと言われました。妹の部屋にはベッドとテーブルがありましたが,テーブルは床に置くタイプのものですから,妹は基本的に床に座って生活をしていました。新型コロナウイルスが流行してからは,妹は食事も部屋で摂取するようになりましたから,そのときも床に座ってテーブルの上に並べられたものを食べていたのです。このテーブルを撤去して,椅子とその椅子に合わせた高さの机を用意してはどうかというのが,Kさんの話の主旨でした。
 僕が住んでいる家が建ったのは僕が3歳のときで,そのとき,2階は洋室でしたが,1階は和室でした。リビングは1階ですから,僕も妹も基本的に和室で暮らしていたことになります。要するに畳の上に卓袱台を出して,その卓袱台を囲んで家族で食事をしていたのです。1階をリフォームしたのは祖母,の母が同居するようになってからで,そのときに1階も洋室にしました。ただリビングには掘り炬燵を設置しましたので,その掘り炬燵の上に,これは固定のテーブルを設置し,このテーブルを囲んで食事をするという習慣に変化は起こりませんでした。父も祖母も母も死にましたが,これは固定のものですから現在も使い続けています。つまり僕たちは椅子とテーブルという生活は送ったことはありません。その意味でいえば,グループホームの部屋での妹の生活は,僕たちが,あるいは妹が産まれてからずっと,家で送ってきた生活と同じ生活ではありました。ただKさんの意見も僕には分かるものでした。
コメント
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