スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

カーンの雑感④&シュラーの失敗

2020-09-01 19:01:11 | NOAH
 で示したように,キラー・カーンは馬場には可愛がってもらったと感じています。初対面のときに次のようなエピソードがあったそうです。
 およびでいったように,カーンは吉村道明の付き人をしていました。まだデビュー前でしたが,付き人として巡業にも同行したそうです。初対面はこの巡業中でした。馬場はその時点でカーンが新潟の出身であるということは知っていました。それで新潟のどこの出身であるかを聞かれたそうです。カーンの出身地は現在では燕市になっていますが,吉田町というところでした。馬場は三条市の出身で,吉田町は三条市の隣の隣です。新潟県は大きな県ですから,これは近所といってもいいでしょう。馬場はそれで頑張れよと言った後,カーンに上半身だけ裸になるように命じました。カーンが言われた通りにすると,馬場は我慢しろと言って,いきなりカーンの胸に7,8発のチョップを入れたそうです。もちろんとても痛かったそうですが,まだデビュー前のカーンからすれば,日本プロレスのエースである馬場は雲上人でしたから,同時にとても嬉しかったそうです。このときの痛さと嬉しさは,今でもはっきりと覚えているとカーンは語っています。カーンが可愛がってもらったといっていることの意味のうちには,このようなことも含まれていることになります。
 この当時の巡業ではホテルではなく旅館に宿泊しました。試合後は大広間で飲酒込みで全選手が食事をしたそうです。カーンは歌が好きでしたから,この当時はよく歌うことを命じられました。カラオケはない時代のことですから,自分でイントロまで入れて歌ったそうです。歌い終わると吉村や馬場は,割り箸にお札を挟んでチップをくれたそうです。この当時のカーンの給料は,税引きで28000円でした。これが当時の物価からしてどれほどのものであったかは分かりません。また,この当時は500円札は確実にありましたし,100円札もまだ存在しました。なのでそのチップのお札がいくらだったかは分かりません。それでもカーンはとても嬉しかったと言っていますから,大きな収入ではあったのでしょう。

 どのようにしてシュラーGeorg Hermann Schullerが当該の書簡を抜き取ったのかということについては,ふたつの可能性があったということにしておいて,これに関する探究は終了とします。そして最後に,書簡四十五書簡四十六が掲載されたことについても考えておきましょう。
                                        
 『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』を主題としてのライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizとスピノザの間の書簡,そして確かにふたりの間にそうしたやり取りがあったということを確定させる書簡七十書簡七十二は,遺稿集Opera Posthumaの編集作業に入る以前の段階で,シュラーによって抜き取られていました。よってこれらの書簡が存在するということは,シュラー以外の編集者には知られることがなかったのです。これは逆にいえば,書簡四十五と書簡四十六は,シュラー以外の編集者にも存在が知られることになったので,遺稿集に掲載されたということになります。つまりそれは,この二通の書簡については,シュラーが抜き取らなかった,ここでの物語に照合させるいい方をすれば,シュラーが抜き取り忘れてしまったということを意味します。もちろんライプニッツからシュラーに伝えられた指令は,ライプニッツとスピノザの間に書簡のやり取りがあったということを秘匿するということであり,それはその内容がどういうものであるかということとは関係ありませんでした。ですからこの2通の書簡を抜き取り漏らしてしまったことにシュラーが気付いたとき,シュラーは自分が失敗したと思ったことでしょう。ですがライプニッツの意向を知っていたのは編集者の中ではシュラーだけであったので,自分が抜き取り忘れたのに気付いたとき,それを掲載しないようにほかの編集者に伝えることが躊躇われたことは容易に推定できます。なぜならシュラーはその前に,この2通以外の書簡についてはほかの編集者が知らないうちに抜き取っておいたのですから,下手にそのようなことを言い出せば,極秘のうちに遂行したことが露見しかねないからです。
 この2通を抜き取り忘れたことは,シュラーにとって失敗だったといえば失敗だったのでしょうが,致し方ない面もあったと僕は思います。そしてこのことは,ここで僕が作った物語を強化するように思えます。
コメント
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