スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

天龍の雑感⑦&結果という概念

2020-09-18 19:12:19 | NOAH
 の最後のところで天龍源一郎は,ジャンボ・鶴田は大局を見る人間ではなかったと言っています。ただし鶴田は,レスラーたちとはそれほど付き合わなかったのですが,日本テレビの全日本プロレス中継のプロデューサーであった原章や,実況を担当し,後に『マイクは死んでも離さない』を著した倉持隆夫アナウンサーなどとは親密に付き合っていたと証言しています。なので天龍は,それならもっと古くから全日本プロレスにいるレスラーたち,たとえば大熊元司などともっとコミュニケーションをとった方がいいのではないかと思っていたようです。
                                        
 ただし,鶴田が日本テレビの関係者と親密な付き合いをしていたのは,必ずしも鶴田がそうしたかったからではないかもしれません。全日本プロレスの創立は,馬場と日本テレビの関係によるものでした。ですから少なくとも馬場は,日本テレビの関係者に対しては配慮を示さなければならなかったわけです。ですから日本テレビの関係者から,鶴田と会食をしたいという要望があれば,馬場も無碍に断ることはできなかったでしょう。そしてもし馬場からそうした指示が鶴田に伝えられたとすれば,鶴田がそれに従わないということはあり得ないと思います。鶴田が日本テレビの関係者とは親密に付き合ったことの裏に,こうした事情があった可能性は否定できないと思います。
 この部分の事情がどういうものであったかは分かりませんが,いずれにせよ鶴田は,レスラーたちとは本音で付き合うということはなかったようです。その分だけ鶴田は孤独であったかもしれないと天龍は推測しています。これは確かにそうだったかもしれません。そもそも鶴田というのは,デビューしてそれほど間を置かずに,多くの先輩レスラーたちを押し退けてトップクラスのレスラーとして,馬場のパートナーを務めたわけです。ですから鶴田の中に,そうしたレスラーたちとは親密には付き合いにくいという気持ちがあったとしても不思議ではありません。若いうちにトップになってしまったために,鶴田は所属レスラーの間では友人を作りにくかったかもしれないのです。

 自然Naturaのうちに存在するもので,その本性essentiaがそれ自身の存在existentiaを含んでいるのは,神Deusあるいは神の属性attributumだけです。いい換えれば,自然のうちに存在するもののうち,その起成原因causa efficiensが自己原因causa suiであるものは,神とその属性だけです。それ以外のものはすべて,それ自身の存在がそれ自身の本性には含まれていません。すなわち,その本性とその存在とを同一視することができません。そしてそうしたものは,存在するために,それ自身の外部に起成原因を必要とすることになります。なぜなら,第一部公理三により,一定の原因が与えられなければ結果effectusが発生することは不可能だからです。何度もいっているように,スピノザの哲学における原因は一律に起成原因を意味するのですから,この公理Axiomaでいわれている原因も起成原因でなければなりません。つまり,どんなものであれ,それが存在するためには存在する起成原因を必要とするのです。このとき,何かが存在する起成原因というのは,それ自身のうちにあるesse in seか,そうでなければそれ自身の外部にあるかのどちらかです。もしもあるものがそのどちらにも存在する起成原因をもたないと仮定すれば,第一部公理三により,そのものは存在しない,ないしは存在し得ないといわなければなりません。
 このとき,存在する起成原因がそれ自身のうちにあるというのは,それ自身の本性とそれ自身の存在は同一であるという意味なのであって,要するにそれは自己原因です。この意味において,自己原因は起成原因の一種であるといえます。ですから自己原因というのは,起成原因の一種ではありますが,外部の結果を伴っていない原因を意味します。他面からいえば,自己原因であるものについては,その結果が何であるのかを問う必要はありません。あるいはそれを問うことはナンセンスであるといってもいいでしょう。
 一方,自己原因ではないものの起成原因は,それが存在するあるいは存在し得るのであれば,それ自身の外部にあるのです。そしてその原因がそれ自身の外部にあることによって,その外部のものが原因といわれ,それ自身は結果といわれるようになるのです。結果という概念notioは,ここで初めて必要になってくるのです。
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