スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

リコー杯女流王座戦&不確実性

2019-11-15 19:15:41 | 将棋
 10月30日に高知市で指された第9期女流王座戦五番勝負第一局。その時点での対戦成績は里見香奈女流王座が7勝,西山朋佳女王が5勝。
 高知県知事による振駒で西山女王の先手。後手の里見王座がなかなか態度を明確にしませんでしたが,先手のノーマル三間飛車になりました。終盤の終りに一波乱あったようです。
                                        
 第1図は先手が馬を切って銀を取り,後手が取り返した局面。ここは先手が勝勢で,☗3三銀と打てばよかったようです。
 実戦は☗8二飛と打ちました。2段目に飛車を打っておくのは先手にとってプラスですが,打つなら☗7二飛の方がよかったようです。
 先手は☖6二桂と受けられるのを気にしていたようですが,それは☗3三金で勝てるとのこと。ただその方が実戦よりは難解で,逆転の余地があったかもしれません。
 このほかに☖4三銀と受ける手があります。これは単に金を守るだけでなく,3二の地点にも利かせる手。これに対して☗3三銀から清算すると,3二の地点が受かっているので,☖1七角☗3七玉☖4五桂☗同歩☖2八角打から8二の飛車を抜く順が生じます。後手にその手段があると先手は手を変える必要があるように思え,後手としてはその方が有力だったのではないでしょうか。これは先手が8二に飛車を打ったために生じる順なので,これを避けるべく7二に打った方がよかったということになります。
 実戦は☗8二飛に☖6二香だったので☗3三銀☖同桂☗同桂右成☖同金☗同桂成と進みました。
                                        
 第2図は後手玉が必至,先手玉は詰まないので先手の勝ちです。
 西山女王が先勝。第二局は昨日でした。

 ここまでの説明から分かってもらえると思いますが,僕は『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の矛盾が,その修正の影響を受けたものであるということについて全面的に否定するものではありません。むしろそのような可能性があることを認めます。一方,僕はそれとは異なった見解opinioを示すわけですが,その見解が正しいということを主張するものでもありません。ただ一点だけ,そのような見解を示すことに意味があるとすれば,この見解を説明することによって,スピノザの哲学を理解するための一助にはなるであろうということです。つまり,この矛盾が単に『知性改善論』が修正された影響であるというなら,それは哲学を理解するためには何の役にも立たないでしょう。ですが僕の見解は,たとえそれが『知性改善論』の矛盾に関しては誤りerrorではあったとしても,哲学そのものを理解するのには役立つでしょう。
 真の観念idea veraをひとつの概念notioとして考えてみます。するとこれには反対の概念が存在することになります。なぜなら,第一部公理六により,観念をその外来的特徴denominatio extrinsecaからみたとき,観念されたものideatumと一致する観念のことを真の観念というのですから,これをひとつの概念と解するなら,観念されたものと一致しない観念については,真の観念の反対概念であることになるからです。もちろん,もしも観念が一般的に,観念されたものと一致するということであれば,そうした反対概念は単に概念としては解せるとしても,概念としての真の観念が存在すると解した場合には,反対概念として意味がないことになります。ですが実際には観念されたものと一致しない観念というものもあります。それはスピノザの哲学では誤った観念idea falsaといわれます。よって真の観念と誤った観念は反対概念であることになります。
 確実性certitudoについても,これと同じようにそれをひとつの概念として解する場合に,その反対概念があるとしてみましょう。ここではそれを不確実性ということにします。僕の見解は,この意味での不確実性が,『知性改善論』の七八節に持ち込まれているのというものです。スピノザはここでは疑惑dubitatioについて語ろうとしているのですが,それを不確実性とみているのではないでしょうか。
コメント
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