スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

原因と連結と秩序の同一&第一部定理一五備考

2019-05-18 19:07:18 | 哲学
 第二部定理七備考は,明らかにあらゆる属性attributumにおいて原因causaと結果effectusの秩序と連結の同一性を主張しています。そしてそれを肯定する論理として僕が示したものは,おそらくチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausがそのように考えた論理と同じだったと思います。そしてこの論理を軸として,チルンハウスはさらに前に進んでいったのだと僕は想定します。
                                   
 この論理が正しいとします。このとき,思惟Cogitatio以外のXという属性に,Aという様態modiが存在すると仮定しましょう。するとやはり思惟以外でXでもないYという属性があれば,というか第一部定義六からしてそういう属性が存在するということはスピノザは認めるので,Yという属性は存在するのですが,このYの属性にはXの属性のAという様態と同一の原因と結果の連結connexioと秩序ordoで発生するA´という様態が存在することになります。これは第二部定理七備考からやはりスピノザは同意しなければなりません。
 次に,無限知性intellectus infinitusのうちにはAの観念ideaもありますし,A´の観念も存在します。これは第二部定理七系によってスピノザは同意しなければなりません。このとき,Aの観念とA´の観念の原因と結果の連結と秩序は同一です。なぜならAとA´の原因と結果の連結と秩序は同一であり,第二部定理七によれば観念と観念されたものrerumの原因と結果の連結と秩序は同一なので,Aの原因と結果の連結と秩序はAの観念と原因と結果の連結と秩序と同一であり,A´の原因と結果の連結と秩序はA´の観念の原因と結果の連結と秩序と同一であることが帰結し,AとA´の原因と結果の連結と秩序が同一である以上,Aの観念とA´の原因と結果の連結と秩序も同一でなければならないことになるからです。つまりこれはA=BでA=CならB=Cでなければならないという単純な論理です。ですからスピノザはこれも認めなければならない筈です。
 そしてAの観念の原因もBの観念の原因も思惟の属性Cogitationis attributumです。これは第二部定理五によりスピノザは認めなければなりません。よってAの観念とA´の観念は,同一の原因から同一の連結と秩序で発生するのです。

 計算とか解析あるいは分析が,数学でないとまでスピノザが考えていたとは僕は思いません。ですが,それがスピノザの数学に対する関心の中心ではなかったのは事実だと思います。中心ではなかったというより,それが数学であると認めるにしても,それは数学の枝葉末節にすぎないと考えていたのも確かではないかと思われます。おそらくそれは,スピノザは数学者である前に哲学者であって,スピノザの哲学的関心と関連しての考え方であったと推測します。
 鼎談の中で上野はこのスピノザの哲学的関心を,実在論の問題と絡めた発言もしています。これもとても興味深いのですが,ここではそこには立ち入りません。それよりもその前提として,スピノザは絶対的にみられたある種の量,いい換えるなら形而上学的な量を相手にしようとしていたという発言の方を中心に考察します。これがスピノザの数学に対する関心の土台となっている哲学的関心と関連していると僕は考えるからです。
 この発言に関連した言及は,『エチカ』では第一部定理一五備考にあります。ここでは別の部分を示します。
 「我々が表象においてあるままの量に心を留める(これはしばしばそしてより容易に我々のするところだが)なら,量は有限で可分的で部分から成るものとして現れるであろう。これに反してもし知性においてあるままの量に心を留め,そしてこれを実体である限りにおいて考える(これはきわめて困難なことだが)なら,それは,我々がすでに十分示したように,無限で唯一で不可分なものとして現れるであろう」。
 つまりスピノザは,量を表象imaginatioとして,あるいは表象されるexprimunturものとして考えようとしていたのではなく,実体substantiaとして概念されるものとして考えようとしていたのです。ですから計算とか解析といった行為が,表象されたものを相手にするような行為であるとみなされる限りにおいては,関心の外だったのです。当然ながらそれは哲学的関心でもあるし,数学的関心でもあるということになるでしょう。
 そこで,量を実体として把握し得るような数学というのがスピノザには必要だったし,そういう数学に対しては多大な関心を寄せることができました。
コメント
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