スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

女流王位戦&第一部定理八備考二

2019-05-11 18:54:44 | 将棋
 8日にとかちプラザで指された第30期女流王位戦五番勝負第二局。
 渡部愛女流王位の先手で里見香奈女流名人の角道オープン四間飛車。後手は玉を深く囲うとすぐに5筋の歩を突いて中飛車に。角道を止めたノーマル中飛車になりました。ずいぶんと挑発的な手順と感じましたが,先手がそれに乗る形ですぐに戦いに。銀と桂馬の交換で先手の駒得という分かれになりました。ただ飛車側ではなく玉側の桂馬との交換でしたから,後手もそこまで差をつけられたわけではないと思います。
                                        
 後手が9一に歩を受け,先手が歩を打った局面。9筋は後手から仕掛けたもので,角を取れずに受けなくてならないのでは何らかの誤算が生じていたものと推測されます。
 ここで後手は☖同金と取り☗同銀☖9九角成と進めました。ここに至っては仕方がなかったものと思います。先手は☗6四角と逃げることに成功。
 逃げましたが6四の歩を取ったので☖6六歩と打つ手が生じていて,この局面ですぐに打ってしまう方がよかったようです。ですが☖9八香成としました。先手は☗5三銀成。
 ここが最大のポイントで,☖5七歩と叩いておくのがよかったそうです。実戦は☖1二飛と逃げたため☗5五角と引く手が絶好になりました。
                                        
 後手は第2図から☖6六歩と打ちましたがこれは☗6九王と早逃げする手がありあまり効果的ではありません。ここは駒得の上に駒の働きも優っている先手が優勢になっています。
 渡部王位が勝って1勝1敗。第三局は29日です。

 第一部定理八の備考二には,次のような記述もみられます。
 「この定理はすべての人々にとって公理でありそして共通概念の中に数えられるであろう」。
 この定理Propositioといわれているのは第一部定理七のことです。つまり実体substantiaの本性naturaにその存在existentiaが属するということは,公理Axiomaであり共通概念notiones communesであるという性格を帯びるとスピノザはいっているのであり,ここでは公理と共通概念が明らかに等置されています。これは『デカルトの哲学原理Renati des Cartes principiorum philosophiae pars Ⅰ,et Ⅱ, more geometrico demonstratae』のマイエルLodewijk Meyerによる序文と同じ等置であり,それがマイエルだけの見解ではなく,スピノザの見解でもあるということの明白な証拠となり得るでしょう。
 『エチカ』で共通概念という語が使用されるなら,それは第二部定理三八において始めて論理的に証明されている共通概念と同じ意味を有していると解するのが妥当であると僕は考えます。この段階で共通概念という語が使用されているのは,いささか早すぎるように思いますが,少なくともこの備考Scholiumを記した段階で,スピノザが共通概念を発見していたことは間違いないと僕は思います。ただし,この備考がいつ書かれたかを特定するのはやや困難な面もあると思っています。
 シモン・ド・フリースSimon Josten de Vriesがスピノザに送った1663年2月24日付の書簡八には,現在の第一部定理一〇の備考に該当する部分に関する質問があります。これはこの時点では第八定理とされていますが,現在の第一部定理八もこの時点で完成していたのは間違いないとみていいでしょう。現在の第一部定理一から八までは一群と解するべきであり,定理一〇が完成していて定理八が後から加えられたとは考えにくいからです。同時に,現在の第一部定理一〇の備考に該当する部分もこのときには存在したのですから,『エチカ』には早い段階から備考が付せられていたというのも間違いないといえます。ですから現在の第一部定理八が完成した時点ですでに備考もあったという見方は可能で,その場合にはこの部分はスピノザが『デカルトの哲学原理』の発刊を決意する以前からあったということになるでしょう。
 ですが,僕はこの備考二の全体が,現状と同じ形でその時点から存在していたとは考えていません。
コメント
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