スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

女流王位戦&働く力と思惟する力

2019-05-30 18:55:08 | 将棋
 旧伊藤伝右衛門邸で指された昨日の第30期女流王位戦五番勝負第三局。
 里見香奈女流名人の先手でノーマル三間飛車。渡部愛女流王位はエルモ囲いから急戦を仕掛けました。先手に苦労が多い展開ではありましたが適切に対応した結果,後手の仕掛けがやや無理だったという進展に。
                                        
 先手が4六の銀で3五の歩を取った局面。この手は予定変更で,攻めというより玉を3六に逃げ出せるようにした受けの手です。
 ここから☖1六歩☗1二歩と進みましたが,後の展開からするとこれは後手にとっては損だったようです。ただしこう進めたのには狙いがありました。それは☖1七歩成☗同香で先手の香車を吊り上げることです。
 継続手は☖1九飛なのですが,ここで打つと☗2九金☖1八角☗同金☖同飛成☗3六玉☖3八龍と進めたときに☗1六角の王手龍取りがあります。後手はこの局面でそれに気付いたので☖5三王と逃げたのですが,この手は負けを早めました。☖1六歩と打って阻止する方が優ったようです。
 手番を得た先手は☗5六馬と香車を取りました。後手からはこの香車を5七に,さらに桂馬を4八に捨てて3九に角を打つ狙いもあり,それを阻止した一手です。
 こうされると☖1九飛と攻めていくほかありません。これは☗2九金☖1八角☗同金☖同飛成☗3六玉☖3八龍まで一直線。そこで先手は☗4五桂打☖6二王と追ってから☗1六角と打ちました。
                                        
 今度は王手龍取りにこそなっていないものの後手は龍を逃げるほかありません。先手が手番を得たことにより大勢が決しました。
 里見名人が勝って2勝1敗。第四局は来月13日です。

 スピノザの哲学では,延長の属性Extensionis attributumが神Deusの本性essentiaを構成します。これをデカルトRené Descartesの哲学と比較していうなら,神と別の実体substantiaであった物体的実体substantia corporeaが,スピノザの場合は神と同じ意味になったということです。これはスピノザが無限infinitumとしての量という概念conceptusを導入するがゆえに可能になった変更であるという一面があります。よってこのことと,無限としての量という概念を導入するために必要であった幾何学をスピノザが数学であると考えていたということの間にも関連性があることになります。
 第二部定理七系でスピノザは,神の働く力agendi potentiaと神の思惟する力cogitandi potentiaの同等性を主張しています。ですから神が延長の属性としてみられる限りでの働く力は,神が延長の属性を観念の対象ideatumとして思惟する力と同等であるとみなければなりません。そしてこのことは逆の方向でも成立しなければなりません。つまり神がある属性を対象として思惟する力は,神がその属性としてみられる限りで働く力と同等でなければならないのです。よって,神の無限知性intellectus infinitusのうちにある属性の様態modiであるXの観念ideaが存在する場合は,その属性の様態としてXが神の無限知性の外に形相的にformaliter存在するといわなければなりません。これを一般的にいえば,神の無限知性のうちにある観念があるなら,その観念されたものideatumが無限知性を離れて形相的に存在しなければならないということになります。
 次に,第二部定理一一系では,人間の精神mens humanaは神の無限知性の一部であるといわれます。ただしこのことは人間の精神だけに妥当するわけではありません。おおよそ知性なるもの,すなわち個々の観念の集積体が有限なものとしてあるなら,それは神の無限知性の一部です。よってある人間の知性のうちにXの十全な観念idea adaequataがあるなら,第二部定理七系の意味から,それは神の無限知性のうちにあるXの十全な観念と同一です。したがってXは人間の知性を離れて形相的に存在することになります。
 定義Definitioに虚構が含まれていても構わないのは,定義されたものが十全に認識されるのに資するためでした。よってその定義によって定義されるものが十全に認識されるのなら,その定義されたものは知性の外に形相的にあることになります。
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