スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

怜子①&デカルトの数学

2019-05-28 18:55:05 | 歌・小説
 「あほう鳥」が収録されている「愛していると云ってくれ」というアルバムには「怜子」という楽曲も収録されています。この楽曲の中にも「あほう鳥」と同様に,僕が好きなフレーズが入っているので,口ずさんでしまうケースがあります。
                                   
 この楽曲は歌詞に則して説明していくよりも,事前に楽曲の背景を知っておいた方が分かりやすいので,まずはそれを説明していきましょう。楽曲の主題となるのは情念なのですが,これは別れに関わる感情といよりも,羨望とか嫉妬という語で表される感情に近いです。
 歌い手のほかにふたりの人物が登場します。ひとりはタイトルにもなっている,怜子という女です。歌い手とこの女は友人です。それもかなり親密な関係にあり,その親密な関係がかなり長く続いていると解せるようになっています。
 歌い手は男であるとも女であるとも解せますが,たぶん女です。これは女の一人称が「私」であることからの推測です。この女は怜子のことを「おまえ」と呼びます。歌い手が男であったとすれば,女友達である怜子のことを「おまえ」と呼んでいることになり,そのような呼び方をする男が一人称に「私」を用いるのは不自然だと僕には思えます。なので僕の解釈では歌い手は女です。女が仲良しの友人である女のことを「おまえ」と呼ぶというのも,実は僕には不自然に感じられるのですが,そういうこともおそらくあるのでしょう。なのでここはそれくらい歌い手と怜子は仲が良いと解しておきます。
 もうひとり,男が登場します。この男も歌い手とは古くからの知り合いだと思われます。少なくとも歌い手はこの男の女性遍歴を知っているのは間違いありません。
 男のことを女は「あいつ」と呼びます。これも歌い手と男との関係性の手掛かりかもしれません。ですが,怜子のことを「おまえ」と呼ぶ歌い手なら,男との関係性に関わらず「あいつ」と呼んでもおかしくないように僕には思えます。なので僕はここからは歌い手と男との関係を探ることはしません。

 スピノザによる円の定義Definitioは,虚偽falsitasではなく真理veritasですが,虚構を含んでいるということ自体はスピノザ自身が認めています。では円を対象として数学を学ぶとき,物体corpusとして存在する円はその対象となり得るのでしょうか。スピノザの定義は知性intellectusが円を概念するconcipereのに資する定義ですから,円の観念ideaを数学の対象とすることは可能です。ですがこの仕方で概念された円の起成原因causa efficiensは,知性の外に現実的に存在する円の起成原因を含んでいるわけではありません。ですから当然のようにそれを対象とした数学は成立するのかという疑問が生じてきます。この疑問の答えがyesであるのかnoであるのかということとは関係なく,そもそもこのような疑問を許してしまうという時点で,スピノザの哲学は数学者たちを当惑させる要素を含んでいるのではないかと僕はかねがね思っていたのです。
 綜合的方法と分析的方法の両方を用いることによって,普遍数学を導入したのはデカルトRené Descartesです。デカルトにとってそれらの方法は,方法として普遍的であり,したがって単に数学にだけ導入されるべきものではなく,形而上学にも導入されるべき方法でした。このとき,デカルトは形而上学は知性の外にあるものを対象とするものなので,そうしたものの存在existentiaを証明する必要があると考えていました。それが成功しているかどうかは別に,デカルトはこれを神Deusの存在論的証明から証明していったのです。これに対して数学にその必要はないとデカルトは考えていました。デカルトにとっての数学の対象は知性のうちにある観念であって,数学の対象となるべき事物の存在は,そのものの本性essentiaのうちに含まれていたからです。デカルトは数学に代数学を導入していますが,デカルトにとってそれは,幾何学は代数学に還元することができるという意味をもっていたようです。代数というのは当然ながら知性のうちにのみ存在します。幾何学の対象については必ずしもそのようにはいえないと僕は考えますが,デカルトにとってはそれは代数学に還元できるのですから,幾何学の対象も知性の外に存在するというようには解する必要がありませんでした。つまりこの種の疑問はスピノザに特有ではありません。
コメント
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