昨日の第44期棋王戦挑戦者決定戦変則二番勝負第一局。対戦成績は敗者組の佐藤天彦名人が7勝,勝者組の広瀬章人八段が3勝。
振駒で広瀬八段の先手。佐藤名人が変わった序盤戦術を採用しました。
印象的な将棋の⑥-1の第2図とか⑧-1の第1図から後手が飛車先を伸ばしていくと第1図のような形になる可能性があります。ですから後手の思想としては2手目☖6二銀と重なる部分もあったのではないかと思えます。
第1図から後手は☖5四歩と突きました。おそらく先手は後手がどこかの歩を突いてくるのを待っていたのでしょう。☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩に☗5四飛でその歩を掠め取りました。
後手は承知の上なのでどう進めるか興味深いところでしたが,☖4二銀☗3八銀☖5三銀右☗5六飛☖4四歩☗2六飛☖4三銀と雁木に構えました。2手目☖6二銀は銀冠を目指すのですが,この将棋の指し方はこのように雁木に組む狙いであったということでしょう。ですがここから先手がうまく咎めました。
☗4六歩☖5二金☗4七銀☖3四歩☗5六銀と玉の囲いを後回しにして銀を進出させるのがその手段。そこで後手は☗4五歩を防ぐために☖3三桂と跳ねたのですが先手は☗5五銀と中央に進出しました。
この銀の威力が強く,後手は自ら動いていくことが難しくなりました。第2図まで進めてから先手は悠々と駒組に入り,適宜に攻めて圧倒しています。
第2図は後手が5筋の歩を取らせたがために生じています。☖5四歩のところで☖6四歩ならまた違った将棋になるのですが,その場合は二枚銀の雁木に組むのは難しくなるのかもしれません。
広瀬八段が勝って挑戦者に。第一局は来年の2月2日です。
与えられた本性essentiaによって徳virtusのあり方は異なるといいましたが,この点についてはまず以下のことに注意してください。
第四部定理三二は,人間は受動passioに属している限りでは本性naturaの上で一致しないといっています。睡眠欲にしろ食欲にしろ,自然の秩序ordo naturaeが現実的に存在する人間に要求する欲望cupiditasです。いい換えれば現実的に存在する人間からすれば必然的にnecessario与えられている欲望です。ですから食欲という欲望をもたない人間とか,睡眠欲という欲望をもたない人間が現実的に存在することはありません。ただしこのことは,人間の本性に一般的に与えられている事柄であるとはいえ,各々の人間の現実的本性actualis essentiaに一致した欲望であるわけではありません。与えられた欲望である限りそれは受動であり,この点で食欲の場合も睡眠欲の場合も第四部定理三二に適合すると僕は考えます。
なぜそう考えるかといえば,たとえばAというものがあったとして,このAに対してXという人間は食欲を感じるけれどもYという人間は食欲を感じないという場合があるからです。つまり食欲は一般的に現実的に存在するすべての人間に与えられている欲望ではあるのですが,だからといって個々の食欲が現実的に存在するすべての人間で一致するというものではありません。これは現実的に存在する各々の人間が何を欲望しまた何を欲望しないのかということで一致することはないということの一例であるといえます。第三部定理五七は,各々の人間の各々の感情affectus,欲望は感情のひとつですからここではあえて各々の欲望といいますが,それはある人間の現実的本性と別の人間の現実的本性が異なっている分だけ異なっているということを示しています。Xという人間とYという人間の現実的本性が完全に一致することはありません。ですから与えられた欲望である食欲でも睡眠欲でも,そのXとYの現実的本性が異なっている分だけ,Xの食欲とYの食欲は異なるし,Xの睡眠欲とYの睡眠欲は異なるのです。
睡眠欲についても説明すれば,同じ時間だけ眠ったとしても,Xはなお睡眠欲を感じ,Yはそれを感じないという場合があり得ます。つまり個々の睡眠欲は諸個人によって異なります。
振駒で広瀬八段の先手。佐藤名人が変わった序盤戦術を採用しました。
印象的な将棋の⑥-1の第2図とか⑧-1の第1図から後手が飛車先を伸ばしていくと第1図のような形になる可能性があります。ですから後手の思想としては2手目☖6二銀と重なる部分もあったのではないかと思えます。
第1図から後手は☖5四歩と突きました。おそらく先手は後手がどこかの歩を突いてくるのを待っていたのでしょう。☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩に☗5四飛でその歩を掠め取りました。
後手は承知の上なのでどう進めるか興味深いところでしたが,☖4二銀☗3八銀☖5三銀右☗5六飛☖4四歩☗2六飛☖4三銀と雁木に構えました。2手目☖6二銀は銀冠を目指すのですが,この将棋の指し方はこのように雁木に組む狙いであったということでしょう。ですがここから先手がうまく咎めました。
☗4六歩☖5二金☗4七銀☖3四歩☗5六銀と玉の囲いを後回しにして銀を進出させるのがその手段。そこで後手は☗4五歩を防ぐために☖3三桂と跳ねたのですが先手は☗5五銀と中央に進出しました。
この銀の威力が強く,後手は自ら動いていくことが難しくなりました。第2図まで進めてから先手は悠々と駒組に入り,適宜に攻めて圧倒しています。
第2図は後手が5筋の歩を取らせたがために生じています。☖5四歩のところで☖6四歩ならまた違った将棋になるのですが,その場合は二枚銀の雁木に組むのは難しくなるのかもしれません。
広瀬八段が勝って挑戦者に。第一局は来年の2月2日です。
与えられた本性essentiaによって徳virtusのあり方は異なるといいましたが,この点についてはまず以下のことに注意してください。
第四部定理三二は,人間は受動passioに属している限りでは本性naturaの上で一致しないといっています。睡眠欲にしろ食欲にしろ,自然の秩序ordo naturaeが現実的に存在する人間に要求する欲望cupiditasです。いい換えれば現実的に存在する人間からすれば必然的にnecessario与えられている欲望です。ですから食欲という欲望をもたない人間とか,睡眠欲という欲望をもたない人間が現実的に存在することはありません。ただしこのことは,人間の本性に一般的に与えられている事柄であるとはいえ,各々の人間の現実的本性actualis essentiaに一致した欲望であるわけではありません。与えられた欲望である限りそれは受動であり,この点で食欲の場合も睡眠欲の場合も第四部定理三二に適合すると僕は考えます。
なぜそう考えるかといえば,たとえばAというものがあったとして,このAに対してXという人間は食欲を感じるけれどもYという人間は食欲を感じないという場合があるからです。つまり食欲は一般的に現実的に存在するすべての人間に与えられている欲望ではあるのですが,だからといって個々の食欲が現実的に存在するすべての人間で一致するというものではありません。これは現実的に存在する各々の人間が何を欲望しまた何を欲望しないのかということで一致することはないということの一例であるといえます。第三部定理五七は,各々の人間の各々の感情affectus,欲望は感情のひとつですからここではあえて各々の欲望といいますが,それはある人間の現実的本性と別の人間の現実的本性が異なっている分だけ異なっているということを示しています。Xという人間とYという人間の現実的本性が完全に一致することはありません。ですから与えられた欲望である食欲でも睡眠欲でも,そのXとYの現実的本性が異なっている分だけ,Xの食欲とYの食欲は異なるし,Xの睡眠欲とYの睡眠欲は異なるのです。
睡眠欲についても説明すれば,同じ時間だけ眠ったとしても,Xはなお睡眠欲を感じ,Yはそれを感じないという場合があり得ます。つまり個々の睡眠欲は諸個人によって異なります。