浦沢直樹さんがホストを勤めて、漫画家を招待して制作の様子をオンエアする番組「漫勉」ですが、昨日はなんと、あの諸星大二郎先生でした。
実は、わたくし…若い頃、諸星先生の絵に似てると言われ、不遜にも不満を覚えていたことがありました。絵を見ておわかりの方も多いと思いますが、諸星先生の絵は、アカデミックな絵画教育を受けたものではありません。
若い頃の自分の絵は、まあお世辞にも上手いとは言えず(今でも下手くそですが)、それを自覚していなかったから、そんなこと感じたのでしょうな。
今では光栄だったなと思っています。
それでありながら、高橋留美子、浦沢直樹らから「漫画家の中の漫画家」として、尊敬を集めるのは、その博覧強記な知識に裏付けられた豊かなストーリー性にありましょう。
「千と千尋の神隠し」に登場するカオナシも、実は諸星大二郎先生のオマージュです。
正しく言うと、パプアニューギニアの精霊の姿。
手元に資料がないため、ハッキリしたことは言えませんが、たしか「オンゴロの仮面」だったかな。
そこを「オレが先だ」と言わないのが、諸星先生の奥ゆかしさですね。
もちろん、原型がパプアニューギニアの精霊なんで、著作権外のものではありますが。
ご本人の姿を見るのは初めて。
思った通り、おっさんの妖精みたいな飄々とした方でした。
面白かったのが、原稿の下絵とペン入れです。
番組で浦沢さんが指摘していたように、下絵とペン入れの違いがほとんどありません。
多くの場合、下絵というのは勢いで描いたものなので、実は一番良い線だったりすることが多く、そこにペンを入れてしまうと、その勢いが失われることも少なくありません。
また下絵のごちゃごちゃした情報が味だったりして、そこに消しゴムを入れると、その味が一気に失われることも多いのですが、諸星作品にそれはない。
言い方はよくないですが、諸星作品には“一番良い線”というものがなく、多くの線が重なって、 初めてあの画風になるようですね。
ご自分でもわかっているようで、「私、下手ですから」とご謙遜。さすがですね。
ペン入れに使うのは、細い線が描けるという丸ペン。
これが下絵とペン入れの違いをなくすポイントなようです。
と、ここまで見ていたところ、妻が私に丸ペンの使用を勧めます。
そんなもの持ってないよ、と申したところ、ごそごそと自分が使っていた丸ペンを貸してくれました。
描いてみたところ…おおおお。
今のアチャールくんのペン入れに使っていれば良かった。
それにしても、何で絵描きの私より道具のこと、知ってるんだ(笑)!
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